ゾンビだらけの世界で街づくり~今日から市長よろしくね~
春宮ハルミヤ
第1章 街がないなら作ればいい
エピソード1
西暦20XX年、世界は超大国の超化学兵器によって、それはそれは恐ろしいことになっていた。
その超化学兵器から出てくるガスを吸うと、体はどす黒く変色し、血液は緑色になった。その者の意識は次第になくなり、気づいたときにはうめき声をあげて人という人に襲い掛かるだけのモノになる。
人々はこれをゾンビと呼んだ。
ゾンビは生き物全てに襲い掛かってくる。人はもちろん、犬や猫、鳥にカエルに魚にまで襲っていった。
しかもこのゾンビの恐ろしいところは人以外は襲われると死んでしまうウイルスを傷口から感染させてくる。人以外はこれによって全滅してしまった。
じゃあ、人はどうなったか…安心してほしい。
全員、ゾンビになってしまったのだ。ゾンビのウイルスは人に入ると人の体をゾンビに作り変えてしまう。
世界はもう滅亡してしまった…はずだった。
生き残りがたった一人だけいたのだ。そう、それはあなた!
さあ、この世界を生き抜き、自分だけのパラダイスを作りましょう!
これはそんな滅亡した世界で生き残ろうとする人のお話。
街の明かりはもう何年も前に消えてしまい、建物は錆びてしまったり、植物で覆われたものしか見当たらない。
街の中に見えるのはゾンビ、ゾンビ、ゾンビであった。生き物はもうおらず、ただ小さなうめき声をあげて彷徨っている。
ゾンビは生き物以外には興味がなく、建物を触ることもなく、食事や睡眠も必要がないため、ただただ動き回っているだけなのである。いつか生き物に会えるその時まで。
そんな街から離れた荒野のど真ん中にそれはあった。
研究施設のような見た目であり、人は絶滅したはずなのにアンテナや防衛装置が動いていた。その中にはゾンビはおらず、電気も付いていた。
そんな施設の中の奥、さらに奥の奥にそれはあった。
2mくらいのカプセルがあり、その中には薄緑に光る液体が満たされており、液体とは別の物があった。なんとそれは人であった。
カプセルには様々なコードがつながっており、それぞれが複雑そうな機械につながっている。その中にはモニターにつながっているものもあり、モニターにはこのように映し出されていた。
―カプセル開放まであと10秒―9、8、7、6、5、4、3、2、1、カプセル開放
プシューという音と白い煙がカプセルから出ると、カプセルの中の液体は排水されていき、ブオーという音がなって濡れた胴体を乾かしていく。そして、カプセルの蓋が開いて、その人は目を覚ますのであった。
―暖かい。
長い夢を見ていたような気持であった。目を覚ますと何かプラスチックのケースのような所で寝ていたようだ。体に力が入りにくいが、ぐっと力を入れてケースの中から体を起こした。そこは研究施設のような場所であった。誰も人はいない。しかし、機械やモニターは動いており、誰かがいたような施設に感じられた。
「誰かいないか~!」
声を出して辺りを見回してみるが、何も反応がない。
ブーンというような機械の動く音だけである。
重い体をカプセルの中から出して、モニターの近くへ行った。モニターにはアルファベットや数字の羅列、よくわからないグラフやパラメーターがあった。意味が分からないので、見るのをやめて違う機械を見る。いろいろなボタンが付いた機械もあるが、ボタンに記されている文字が読めないため、やはり触るのをやめた。
うろうろ部屋を見回っていると赤い大きなボタンがあった。
そこには「押すな!押すなよ!絶対に押すなよ!」と書いてあった。
赤くて手のひらほどの大きなボタンだ。押しやすそうにボタンにはカバーが付いていた。カバーはひっぱると簡単に外れた。僕は文字は読めないので、気になったからこれを押した。
すると、パーオ、パオパオティロリロリーンと大きなサイレンがなったと思うと、モニターに映像が映った。映像には禿げた頭に白い毛が2本付いた白衣の男性が映し出された。
「あ、あ、あ、テステス。うん。あ、あ、あ。よし。聞こえるかね。この映像はえ~西暦20XY年1月に撮ったものである。君はある病気にかかってここの病院に来た。手術は成功し、病気は治ったが術後の様子が悪かったのでそのカプセルで休養しておった。しかしだ。つい1月前に超大国が超化学兵器を使ったせいで世界はゾンビだらけ。この施設も廃棄が決まった。だが、君を連れていく余裕がないので、施設は稼働させたまま、君を置いていくことにした。本当に申し訳ない。それで、もし目が覚めた時にどうしたらよいかわからないだろうから。あ、記憶ないでしょ?それが術後の副作用みたいなんだよね。ていうことで君を助けるためにAIを用意しておいた。詳しいことはAIに聞くように。ちなみにAIは君のカプセルのとなりにある柱の様な機械だ。では検討を祈る!ちなみにこのボタンは記憶がなくなった人間が一番押しやすい雰囲気のボタンランキング第1位のための仕様であり、押しても何の問題もないことをここに証明しておく。」
モニターに映し出された動画は消えて、元の画面に戻っていた。
動画で言われた通り、カプセルの横にある柱のような機械のところへ向かう。
柱の機械にはさっきの機械にあったような赤いボタンがあった。
迷わずそれを押した。
ピーポーパーゴゴゴゴゴゴ、という音が鳴った後、柱の機械が起動し始めた。
―起動シークエンス、システムオールグリーン。AIりんぐでぃんどん@オペ子始動します。Helloあなた。こちらオペ子。元気にしてたかしら。
「え、え、え?」
突然、柱の機械から声をかけられたので返事に困ってしまう。
「あなたは今日からここで生きていかないといけませんです。頑張って生きていきましょう。わかりましたか?Do you understand?」
「わ、わかりました。」
「OK。では、まず最初にすることを教えますです。問題です。ここで生きていくのに必要なものは次の内どれ?1.食料。2.水。3.服。10秒以内に答えなさい。」
「え、え、え~と、2番?」
「ブッブ~正解は全部でした。ということで、1~3番を手に入れる方法を伝えます。頭にインプットしてくださいです。いや、しなさい。」
「あ、はい!」
「1、食料は後ろにある緑の扉の部屋に入ると手に入りますです。2、水は後ろの青の扉の部屋に入ると手に入りますです。3、服は1と2を手に入れたら私がプレゼントします。わかりましたですか?わかりましたですよね?」
「わかりました。」
「では取ってきましょう!それまでは私は省エネモードにいます。」
柱は言い終えると電源が消えたように静かになった。
言われた通り、緑の扉の部屋に入った。
中には透明なケースに様々な食べ物が入ったものが陳列してあった。
肉、魚、野菜、果物と様々な物があった。試しに林檎の入ったケースに触ると、ケースの蓋が開いて林檎を取り出すことができた。空になったケースはそのまま床に埋まり、なくなってしまった。
林檎を一かじりすると、甘酸っぱい味が口の中に広がった。
うまい、うまい、うまい。気づいたら芯だけになっていた。
―芯はどうしよう?と辺りを見ているとゴミはこちらへと書いた箱があった。
中を覗き込むと何もない闇があった。ポイと芯を投げ入れるとオーン!という叫び声が聞こえた。驚いてその部屋を後にした。
次に隣にあった青の部屋に入った。水、ジュースのような物に、酒、ワインやウイスキーのような物があった。水らしき瓶を取って飲んでみた。
ゴクッ。水であった。
空になった瓶をどうしようかと周りを見るとやはりさっきと同じ、ゴミはこちらへと書いた箱があった。瓶を入れるとオーン!という叫び声が聞こえたので、部屋を急いで出ていった。
1,2が終わったので柱に戻って、赤いボタンを押した。
「Helloあなた。1、2はどうだった?おしかった?うんうん。では次は服ですね。柱の下に取り出し口あるからのぞいてみてです。」
取り出し口のようなところがあり、そこを開けると白い服が入っていた。
言われた通り、その服に着替えた。
「OK、いい感じ。じゃあ、次の話ですね。まず今どうなっているか知っているですか?」
「わからん」
「では、どうなっているのかこれを見てです。」
するとモニターに映像が映った。
街中にゾンビが徘徊する様子が映し出される。ゾンビの姿は見るに堪えない状態であった。内臓が飛び出たものまでいる。
「見た?これが今の世界。あなたはこの世界で唯一生き残った人間なのです。さあ、頑張って生き残ろう」
「え、どういうこと?」
「だ~か~ら~もう人間は絶滅したのです。だから生き残ろうねって話!」
「どうやって?それはこれから教えるよ。頑張っていこうね!」
―は~ははは。乾いた笑いしか出てこない。でも、きっとこれが現実。
あなたは生き残れるのか。そして幸せに生きれるのか。
次回に続く
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