第4話 『神器』を持つ伯爵

ヒルコとラミアは無駄に巨大な黒い屋敷の前で立っていた。




屋敷から使用人達が現れ、二人を屋敷の中へ招き入れた。




赤色の絨毯が敷かれた長い廊下を延々と歩く。さすがに二人が辟易してきた頃、目の前にようやく扉が現れた。




「ようこそラミア様。美しい貴女を首を長くしてお待ちしていました」




扉を開くと男の声が響いた。




大広間の中心で、男が両手を上げていた。男の背後には巨大な十字の板が立っていた。その後に大勢の人間が控えていた。




「私はアレン・ウルフ・ガイア。こうしてお話をするのは初めてですね」




アレンは頭を下げた。




「ええ。そうですね。初めましてラミアと申します」




「おぉ。声も素敵だ」




アレンはラミアを絶賛する。




彼は黒い動物の毛皮で作られたコートを身にまとっていた。




寒がりなのかな? そんなことを考えながらラミアがしげしげとコートを見つめた。




「これが気になりますか? この服こそがガイアに伝わる『神器』です」




誇らしげにアレンが毛皮を撫でた。




「二百年前、当時のガイア家当主が獣の神『フェンリル』様から頂いた『真神の毛皮』です。肉体を強靭なものに変化させる力があります」




「美しい毛皮ですね」




「ありがとうございます。ちなみに、それはラミア様の奴隷ですか?」




「はい。ヒルコと言います」




アレンがヒルコに視線を向けた。じろじろと舐めるようにヒルコを上から下まで観察してくる。




「これは素晴らしい奴隷だ!」




パチパチとアレンが手を叩いた。




「ありがとうございます。それよりも、この度はパーティーにお招きありがとうございます」




「いえいえ。パーティーと言っても、ガイア領地内のささやかなものです。正直言って、王族のラミア様を誘うのは失礼かとも思ったのですが、ラミア様を一目見た時から貴女に心を奪われてしまい、貴女に合いたい一心でパーティーに誘わせていただきました」




「いえ、そう言っていただけると嬉しそうです」




「パーティーを始めましょう。さぁ、こちらに」




そう言ってアレンはラミアとヒルコを先導する。




二人は十字架の後へと案内された。




十字架には真っ黒い何かが張り付けられていた。




それを見て、ラミアは息を呑む。




「さて、それではパーティーを始めましょう! 乾杯!」




真っ黒に焼かれた人の死体の前で、アレンが叫んだ。


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