妹の部屋の片付けを手伝う俺

 「はぁ…」

美咲がタンスの引き出しを開けた途端、何故かため息をついた。


それは、布団に寝っ転がっている俺にも聴こえる大きさだ。

気になるし、訊いてみよう。


「美咲、どうかしたのか?」


「新しい下着が欲しいんだけど、引き出しに入らないなと思って」


「どれどれ…」

興味を持った俺は、開きっぱなしになっている引き出しの中を見る。


…ブラが綺麗に収納されている。これ、結構あるじゃん。


「たくさんあるじゃねーか。新しいの買う必要ないだろ?」


「そうなんだけど…。可愛いデザインのが多くて、つい欲しくなっちゃう」


「ふ~ん」

女子の下着のデザインは、男の俺が見ても魅力的だからな。気持ちはわかる。


俺の場合は、エロ目線だけど。


「お兄ちゃんは、下着について悩んだことないの?」


「まったくない。色違いの下着10着ぐらいでローテだ」

気にするのは、トランクスやボクサーパンツといった種類だけだ。


色とかデザインは、全然気にしない。穿ければOKぐらいの感覚だな。


「そっか…。お兄ちゃんがそうなのか、男の人がそうなのかはわからないね」


「ああ」

男同士で下着について話し合うなんて、考えただけで空しくなる。


「…穿かない下着を整理したいから、一旦全部出して良いかな?」


「別に構わないぞ」


「ありがとう、お兄ちゃん」

美咲は早速、引き出しの下着を取り出す。


俺は邪魔しないよう、布団の上でタブレットを観ますか。



 休憩するためにタブレットから目を離したが、美咲の奴、やっぱり大量の下着を持っているようだ。


ブラとパンツを1セットにしてあるが、そのセット数が半端ない。


あまりの多さに、部屋の至る所に置いてある。

そのせいで、美咲の部屋のどこを観ても下着が目に入るな…。


「う~ん、これはどうしよう? 最近穿いてないし…」

美咲はブツブツ言いながら、下着の取捨選択をしている。


俺みたいに大雑把になれば苦労しないと思うが、それを言っても無駄な気がする。

下着にこだわるのも、乙女心のような気がするし。


「…ねぇ、お兄ちゃんはこの下着とこっちの下着、どっちを残したほうが良いと思う?」


「そんなの、俺に訊かないでくれよ!」

訊かれるなんて予想外だぞ。


「だって…、悩むんだもん」


下着とはいえ訊かれた以上、兄としてしっかりアドバイスしないと。


「悩むぐらいなら残しておけ。そのほうが後悔しないだろ」

悩むって事は、穿く可能性がある。残したほうが無難だ。


「それだと…、処分できる下着がちょっとだけになっちゃう…」


「それで良いんだよ。整理整頓なんて、こまめにやれば良いんだ」


片付けは面倒だから一気にやりたくなるが、物を捨てることに関してはそれが最善とは限らない。時間を置くのも、選択肢の一つだ。


「わかった。絶対穿かないと思う下着だけ処分するね」


「そうしておけ」


こうして再び、美咲は下着を片付け始める。

俺も休憩を終え、タブレット操作に戻ろうかな。



 「ふぅ。やっと終わったよ」

美咲の一言により、操作中のタブレットを中断させる俺。


さっきまで至る所にあった下着がなくなっている。引き出しの中に戻ったようだ。

3セットだけ出しっぱなしだが、これらは処分する下着だな。


「お兄ちゃんのおかげで、片付けが捗ったよ。本当にありがとう」


「気にしなくて良い」


何とか兄のメンツを保てたかな?

罰が決まってから、兄らしいことを何一つしてなかったし…。


これからも、美咲のためにやれることは積極的にやっていこう。

そう思う俺であった。

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