異門の扉より。
9スケ
第零世界・「あっちとこっちを結ぶ門」
────時は1997年の初夏。場所はアメリカのとある研究所での出来事である。
その研究所はとある森の中に建てられており、周りを草木で囲まれている。
そこは森へ入って1時間かければ着くぐらいの場所にあり、外観はどこか1997年にしては、窓も円形であり近未来な印象を受ける。
事件はこの中で起きる……これはその事件の録画テープの映像である。
───そこに映る空間は薄暗く、度々
その部屋には5人から8人程度の白い防護服のような物に身を包む人物が、クリップボードに何かを記入しながらたたずんでいた。
そして時刻は10時17分、鉛筆のカリカリという記入音を掻き分けるように、一人の男がトランシーバーに向かって低い声で話しかけた。
「こちら、第二実験棟……これから超機密実験、『
男はコトンとクリップボードをその場にあった台のようなものの上に置くとさらに続けた。
「この実験の趣旨の説明……現在から少なく見積もり約3000年後にこの我らが星、地球は太陽へと飲み込まれ壊滅するという研究結果が学会により、秘密裏に発表された。」
男はそっと白いゴム手袋をした手を台の上にある引くタイプのレバーの上に添える。
「人類はいずれ地球を失う。その前に我々は第二の住処、逃げ場所を探らなくてはならない。」
男の声はノイズ音混じりに部屋に響く。その度に男は喋るのを中断しては再開するを繰り返している。
「そのために一刻も早く平行世界との交信が必要不可欠なのである。そして今、ついに『
男はレバーを持つ手の力を入れ、握りしめた。
「我らが子孫のため、人類の未来のために、今からカウントダウンをする。」
男と、それ以外の防護服の人物達の目線の先には、高さ10メートルもある巨大な『門』があった。
その門には様々な機械が取り付けられ、形は四角である。
それはまるで、芸術作品にあるロダンの『地獄の門』を思わせる風貌であった。
男はその門を片目にトランシーバーへ話続ける。
『FIVE…FOUR…THREE…TWO…ONE…OPEN…!!!』
───男は思い切り手前へレバーを引いた。
引いた際のガチャリという機械音は、シーンと静かな部屋の中に反響するように響き渡った。
すると、この音が止むと同時に、目の前の門から異様な音が発されているのを、この場の全員が感じ取った。
「ォォォォォォォォォォォォォォオォオォオォオ……」
その音はまるで人のうめき声のようである。
そしてその声と共に扉は少しづつ開いてゆく。開く度にギギギという軋むような音がこの空間内に鳴り響く。
そしてその扉の間が人1人通れるかという隙間の大きさになった頃、青白い一筋の光が空間を照らすと同時に、生ぬるい風が漂ってきた。
その光は隙間が大きくなると共にさらに眩く輝いてゆく。その眩しさと言ったら、太陽を直視するよりも遥かに眩く、目が痛くなるほどである。
トランシーバーを持つ男は、目を手で覆いながら話した。
「扉が開き、これでもかと私たちに光を注いでいる。この光の中に進めるのかどうか、只今から実行する。」
そう言うと男は扉の近くにいた一人の防護服の人物へ、中へ入るよう命令を下した。
このトランシーバーの男はかなり重役なのか、防護服の人物はしっかりと命令を聞き入れ、その扉へ靴のコトコトという音を鳴らしながら脚を動かした。
そしていざ隙間の目の前へ来ると、この防護服もトランシーバー越しに話し始めた。
今度は青年のように高い声である。
「……只今から、光の中への干渉を始める。」
そういうと、前へ開いた右手を、何かを掴むように光の中へ伸ばし始めた。
完全に伸ばし切るまでは、まだ何も起こらなかった。
その伸ばす腕が、そう完全に伸びきったその時である。
パァァァアっと目の前いっぱいに、先程の光よりも眩い発光が起きた。
そして手を入れた防護服の男は、その発光と共に、声も発さず、スゥっと一気に光の中へ吸い込まれるように消えてしまったのだ。
それを見たと同時に、カチャリカチャリと全防護服の人物達は腰から拳銃を取りだし、扉の方へ銃口を向けた。
最初にトランシーバーで話していた男は銃を向けながら話始める。
「……途端に入っていった彼の生命反応が途絶えた。ひとまず扉を閉じた方がいいかもしれない。」
そういうと銃をその台に置き、その手でまたレバーを操作しようとした瞬間。
突如、ボヴゥンという破裂音が部屋全体に響く。
「な、なんだ!?」
男はその音の出た方向、つまり門の方に目をやると、重く分厚い左右どちらの扉も完全に、それも一気に開かれていた。
そして異様な光景に驚くのもつかの間、次は風を切るような音とともに、その光の中からは、『謎の霊体』が50体も、100体も、それ以上の数が飛び出すように出てきた。
その霊体の姿は、確かに『人型』であり、色は白っぽく透けている。
個体差はあるが、顔に当たる部分はそのまんま人の顔であり、眼は塗りつぶされたかのように『無い』のである。
白いローブのようなものを身につけているその霊体はまさに人々が想像する『幽霊』のイメージそのままである。
その霊体は防護服の人物達を掴むと、引きずるように門の光の中へと連れて行ってしまった。
霊体が出てきてから全ての防護服が連れていかれるまで、その間わずか二分のことである。
しかし、彼ら防護服達も最後に足掻いた。
連れていかれる際、最初にトランシーバーで話していた男は最後に、台の上にある『ガラス張りの赤いボタン』を殴るように押したのだ。
彼の最後の言葉は、大爆音の中、録音機に記録されていた。
「我々、人類には早すぎた領域だったのか……クソッタレ野郎がァァァァ!」
その赤いボタンが押されると、ブッバォンという爆発音と同時に、時刻……10時34分、研究所は跡形もなく、『
そして、この研究所内の職員の中に生存者は誰一人としていなかった。
───この事件、後の1999年に行われた調査で解ったことが三つあった。
一つ目、
二つ目、研究所は存在以外、大統領にも、ましてや世界政府にも何をしているのかというのは解っておらず、それが隠蔽なのかも不明であったこと。
三つ目、ボタンを押した男は、『
───この事件は通称『
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