40話 募集するパーティメンバー
エレベーターに乗り最上階のペントハウスについた。最上階全フロア分あるペントハウスは広すぎた。三十人くらいは一緒に住めそうである。
中に入り進むと15階からの眺めが一望できる広いリビングに着いた。リビングにはすでにソファーやテーブルなどの家具が備え付けられていた。
「社長。広すぎません?」
「久しぶりに来たのだけど……広すぎるわね。まあ先々の”もし”を考えればいいかもしれないわね」
「プリシラ。本当にここにするの?」
「………ポンコがいるからここにする」
部屋よりもポンコが優先なプリシラ。快適に住めるのならどこでもいいがすでにポンコという優先事項が出来てしまっているためここに決定した。
「考えないといけないことが増えた気がしますが、住んでから何が必要かもわかってくるでしょうし今考えなくてもいいでしょ~。ささー皆さんソファーに座ってください。パーティメンバー募集の件の打ち合わせをしましょ~」
今日はマンションの下見とパーティメンバー募集についての打ち合わせが主な用件だった。今は秘書の樹里が担当のため打ち合わせをするために仕切っている。
「ここでするんですか?」
「いつでも住めるようにしてあったみたいですので大丈夫ですよ。電気もつきますし水も出ますから」
それぞれがソファーに座り打ち合わせを始めていく。まずはプリシラの要望を聞かなければいけない。
「………前衛を一人か二人、後衛は二人欲しい」
「ふむふむ。前衛後衛ともにどんなジョブがいいですかね? 前衛でプリシラさんと同じタイプはいらないとして……」
「………前衛は長物を使うジョブが一人欲しい。剣士はいらない。後衛は出来ればジョブに関わらず幅広く見たい」
「長物ですね~。後衛は幅広くと……剣士が要らないってのは合わないからですか?」
「………もういるから」
「え? もうパーティメンバーの一人が決まってるんですか?」
「それ私も聞いてないんだけど」
三人が驚くがプリシラとしてはすでに決定事項だった。お互いに何を言ってるんだろうという感じですり合わせを行おうとするとプリシラは遥を指差した。
「………一人は遥」
「え? 聞いてないんだけど……」
「………入ってくれないの?」
「良いのでは? 一条さんはジョブも剣王ですし、自衛隊の仕事も一緒にこなせるでしょう」
プリシラの中では遥はすでにパーティメンバーだった。だが遥は一切そのことを聞いていなかった。選んでくれることは光栄だが自分ではプリシラのパーティメンバーなど務まるはずがないと思っていた。
「……私じゃ実力が足りないわ」
「………大丈夫。元々パーティメンバーは育てるつもりでいた。だから遥も育てることになる」
「それだったら私も募集に応募するうちの一人として扱ってくれない? 私より優秀な剣士系のジョブについている人が来るかもしれないから」
「………遥にはもう投資してるから決定」
「う………」
プリシラから10億円はするであろう刀を貰っている遥。さらには風魔法のオーブもすでに使用していた。なのですでにやらざるを得ない状況が出来上がっていた。
プリシラはダンジョンで刀を遥に渡すと言った時からパーティメンバーに入れるつもりだった。剣王のジョブについているものなどなかなか見つかりはしないと思っていたからだ。目の前の遥をパーティーメンバーにしてしまえば探す手間も省けると言うものだ。
さらに遥は巨乳である。毎日揉ませてもらうという約束をしているため是が非でもパーティメンバーにしたかった。
「……一応私もパーティメンバー選考の中に入れておいてちょうだい。良い人がいたら刀は返すから」
「………わかった」
「刀が気になるところですが次にいきましょう。次は”もし”の話になってくるんですがプリシラさんは今回の募集でパーティメンバーを決めてしまうつもりでしょうか?」
「………試す期間は必要だと思う」
「もし採用した方がプリシラさんの求めるものに満たなかった場合なんですが、その時は別の方を募集することになると思うんです。ですが、採用した方はプリシラさんの情報を持っているわけです。なので私たちとしては外に出したくないんですよ」
「………確かに私だけの技術も教えるつもりだから出したくはない」
(別に出しちゃっていいけどね~)
(いいの?)
(ちょっと考えがあるんだよね。私たちの世界と同じだったらなんだけどね。今は話に集中してね~)
(わかった)
脳内でララベルが声を出してきた。何か考えがあるようで技術を放出することはやぶさかではないようだ。樹里が話を続ける。
「その方は引き続きサポートメンバーとして活躍してもらおうと思います」
「ああ、自衛隊にもそういうメンバーはいます。私も昔はそういうサポートメンバーでしたから」
「………要はダメだった場合でも探索のサポートをする役をしてもらうわけね」
「ですです。トップの探索隊は人数多いですからね。1軍2軍みたいな感じにしていってもいいですしね~」
ダンジョンに潜る際はソロで潜ることはまずない。少なくともパーティでの5人、多いと20人以上にもなる。高ランクのダンジョンほど大人数で潜ることが多い。人数が少ないと対処できる場面に限りがあるからだ。そして何よりも高ランクのダンジョンは魔物も強く、数も多いためどうしても人数が必要になってくるので増える傾向にある。
「………あまりそういうのは考えていなかったけど備えはあっても良いと思う。その辺りは任せる」
「わかりました。大雑把ですけどここで絞りすぎても良くないと思うのでこれくらいにしましょう。他には何かありますか?」
「………レベルは問わないのとスキルの全レベルがわかるようにして欲しい。あとは女性だけ」
人類が開発したステータスプレートではスキルレベルも見ることができる。だがこれは使用できるスキルの平均レベルが表示されている。スキルはツリー構造のようになっておりレベルが上がると新しいスキルを使えるようになる。例えば『聖拳術』というスキルがステータスプレートではLV5と表示されていても、『聖拳術』の中には複数のスキルがある。それぞれレベルがありステータスプレートに表示されるのはそれらスキルレベルの平均が表示される。覚えたスキルはレベル1からだ。下位ジョブだと覚えるスキルが少ない場合が大半である。
なので自己申告でないと詳しいスキルレベルはわからない。プリシラは個々のスキルレベルを重視している。
「スキルレベルを全部と……女性限定は元々そのつもりだったんですけどレベルは問わずですか?」
「………私の世界では優秀なジョブだったのにこちらでは優秀じゃないとされているジョブがある。それをこぼしたくはないのと同じかどうかの確認をしたい」
「なるほど。となると後衛が難しそうかな……例えばどんなジョブですか?」
「………闇魔道士といった闇属性の魔法使い」
「確かに良いジョブとはされてないわね」
地球では闇属性の魔法は不遇とされている。攻撃スキルもあれば敵にデバフをかけるスキルもある。ゲームであればデバッファーとしてかなり使い道はあるのだが地球にできたダンジョンではデバフがほとんどかからない仕様だった。
稀にかかることはあっても稀なので役に立たない。攻撃も別に居なければいけないというほどでもない。スキルが攻撃とデバフで半々なので攻撃に特化しようにも他の魔法系ジョブのほうが幅が広く攻撃力も高い。闇魔法でなければいけないという場面も少ないため不遇ジョブとされている。活躍している者もいるが世界的に見れば数は少なかった。活躍している者は情報を明かしていないため大半の闇属性のジョブは日陰暮らしである。
だがララベルからすれば使い方が悪いだけらしく検証が必要だった。
「ふむふむ。確かにそれは私たちにはわかりませんね。闇属性ジョブの方は出来るだけ残すことにしましょう。他にも何か特筆すべき点がある方は残しましょう。最初の選考は我が社独自のジョブランクに基づいて書類選考を行いますが、プリシラさんにも確認してもらいますね」
「………わかった」
「では………このくらいですかね~。私もあまり探索者界隈は詳しくないので詳しい者と話して追加で何かあれば一条さんに渡したスマホに連絡します」
「わかりました」
「社長もいいですか?」
「ええ。私も探索者界隈は詳しくないからね。社会勉強のプログラムに関してはまだ決まっておりませんので決まり次第ご連絡させていただきます」
その後マンションを後にした。正式に入居するのは三日後になった。その間に何度かスマートフォンを通してのメッセージのやり取りはあったが特に問題はなく募集をかけることとなった。
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