プリシラレポート ―異世界のエルフ王女は地球ライフを満喫しながらダンジョンを攻略する―

タイニー・O・T

第一章 籠の中の鳥

第1話 プロローグ

 多種族国家プリミエール王国と人族国家ワンド王国の戦争。二国の戦争は終戦間近の状況にまでなっていた。


 結果はプリミエール王国の勝利と言える。だが、ワンド王国は最後の抵抗と言わんばかりに戦力を集中させて抵抗している。場所は落ちれば死が待っていると言われる大きな地割れがあり底が見えない場所だ。ワンド王国軍はそんな場所に布陣しまさに背水の陣での抵抗だった。


 プリミエール王国としてはこれ以上犠牲を出したくないため使者を送り講和を求めた。しかし、使者を送ってもワンド王国は聞く耳を持たなかった。


 やむを得ずプリミエール王国は継戦を選択した。


 率いるのはプリミエール王国第二王女プリシラ・プリミエール。生まれつき非常に高い聖力と高い魔力を併せ持って生まれた。


 身長は155センチ程度で肩にかからないくらいの青みがかった銀髪をし右目が赤で左目が青のオッドアイのエルフの少女。戦闘面でも才能を遺憾なく発揮し小さき武神と言われ大陸最強とまで言われるまでになった。


 その戦闘スタイルはガントレットを装備しての殴る蹴るといった格闘家スタイル。後天的に生まれ持ったジョブに変化があったが『聖拳王』という拳を使って戦うジョブだったからだ。



 プリシラ・プリミエール

 年齢:24歳

 性別:女

 種族:エルフ

 ジョブ:聖魔拳王

 レベル:495

 SP:7000/7000

 MP:6200/6200

 力:S

 体力:A

 敏捷:SSS

 器用:S

 魔力:SS

 聖力:SSS

 運:C


 スキル:聖拳術LV10 身体強化LV10 全属性魔法LV10 結界魔法LV10 飛行魔法LV10 言語理解



 幼少の頃より言われるがままに厳しい訓練と魔物討伐やダンジョン攻略などに数多く実戦投入され続けた結果小さき武神と言われるようになった。そのせいかあまり喋らず表情も変わらない無機質な女性に育った。


 今回の戦争でも最前線に立ち続けて数々の武功を上げている。武功を立てるうちに味方からの嫉妬もあったが、あまりの武功の多さにほとんどの者が嫉妬を通り越して諦めになるほどだった。


 そんな彼女を筆頭にプリミエール王国軍は地割れ付近に布陣するワンド王国軍に軍を進めた。


 先頭に立ち戦っているのは専用装備を着た第二王女プリシラ・プリミエール。今回の戦いでも武功を挙げるだろうと味方からは言われていた。だが今回は苦戦していた。プリシラだけでなくプリミエール王国軍全体が苦戦していた。


 何故ならワンド王国軍の兵士のほぼ全てが死兵。決死の覚悟で戦っているのだ。その気迫と覚悟を持った戦いに苦戦を強いられた。


 しかし、数でも練度でも上回るプリミエール王国軍。後のことを考えずに戦うワンド王国を徐々に押していった。結果だけ見ればプリミエール王国軍の圧勝だった。


 戦いが終わり戦場は落ち着いていく。最前線で戦っていた者は疲労困憊だったが後詰めの部隊と合流していった。


 プリシラは地割れ付近にまで進軍していたため、疲労困憊の状態でSPもMPもほぼ使い切りまさに満身創痍だった。だが、周りのワンド王国軍はすべて息絶えており友軍を待っている状態だ。


 自分の元へと友軍の騎兵が近づいてくるのを見つけ一安心していた。


「殿下! ご無事ですか!?」


「………あまり無事ではないけど生きている」


「まったく…一人で突出するからです」


 一人の将校が馬から降りて座り込んでいるプリシラの元へと歩いてくる。少し太っているとも言える恰幅の良い体をした人族の将校。前線には出ずに後方で指揮を取るような位の指揮官だ。戦いも終わりプリシラを探しに来ていた。


 その将校はプリシラの予想外の行動に出る。


「ファイヤージャベリン!」


「!?」


 あろうことかその将校は魔法でプリシラを攻撃してきた。満身創痍のプリシラは動かない体を何とか動かし攻撃を避けた。だが、地割れで出来た崖のすぐ近くで落ちそうになりそうだった。


「………何を?」


「あなたは武功を上げすぎたのですよ。このままでは我らの武功が何一つなくなってしまう」


「………武功が欲しいのなら譲る」


「そうもいかないのですよ。あなたにはここで死んでもらう。次代の王にならぬようにね」


「………王位に興味はない」


「フフフ。文句はご自身に言ってください。死んだ証拠としてこの額当てだけ頂きますよ」


(これだから男は…!)


 人族の将校は満身創痍で動くこともままならないプリシラから無理矢理額当てを取っていった。額当てはプリミエール王国軍最高指揮官の証だ。額当てを取られたプリシラは人族の将校を睨むくらいしか出来なかった。


「この地割れに落ちれば今のあなたでは助からんでしょうなぁ」


「……………」


 プリシラの背後には幅50メートルはあろう地割れの崖。底は見えず見ただけで落ちれば助からないと悟るだろう。


 プリシラと人族の将校は知らないがワンド王国ではこの崖に落ちれば命はないと言われており、調査に行った者もいたが誰一人として帰ってきていない。


「この場を見られては面倒だ。誰かが来る前にお別れです。殿下。どうかお元気でお過ごしください。ファイヤージャベリン!」


 人族の将校はプリシラに嫌味を言って魔法を放った。プリシラはこんな男に殺されるくらいなら自分で地割れに飛び込む選択をした。最後の力を振り絞り自ら地割れへ身を投じた。


 底の見えない地割れに落下するプリシラは目を瞑り最愛の母親のことを思った。プリシラにとっては母親だけが辛い訓練や魔物討伐の間に会う時間を作ってくれて褒めてくれた。母親といる時間だけが癒しだった。


(……お母様…………最後に会いたかった………)


 そしてプリシラは意識を手放した。


 意識を手放す直前ほんの一瞬。プリシラは浮遊感を感じた。

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