第26話 あらすじ
王家は長年、ティタンを魔獣の毒から救った恩人を探していた。
だが、なかなか見つからず、そのなかでシェスタ国から国交について話が出る。
「税を安くする代わりにユーリ王女との婚約をしてほしい」
というものだ。
勿論拒んだが、それなら輸出を制限すると脅され、渋々了承してしまう。
勿論素直に応じていくつもりはない。
あちらの粗を探し、婚約解消の手筈を整えていった。
弱みを握って、それを盾に婚約解消する予定だった。
だが、ここで少し順番が狂う。
ティタンがミューズを学校で見つけ、あろうことか皆の前で求婚してしまう。
急ぎ弱みを突き、輸出そのままで婚約を無くすことには成功したが、ユーリ王女が人づてでその事を知り、怒りを露わにした。
ユーリ王女からの嫌がらせで、ミューズとティタンは公の場で近づくことは出来ず、外交もほとぼりが冷めるまで行くことが出来なくなった。
これは仕方ないとし、水面下でミューズとの婚約が進められていく。
婚約の場を整えている最中、今度はミロッソ公爵家のマリアテーゼがミューズを辞退させようと動いたのだ。
「あなたはティタン様に相応しくない」
そう言って虐めてきた。
ティタンの代わりに外交関係の仕事をミロッソ公爵が受け持つようになった為、王家とのやり取りが増えたのだが、そのやり取りはマリアテーゼとティタンの婚約の為だと勘違いしたようだ。
心身ともに弱ったミューズは他国にて静養に入る。
そのミューズを心配し、付き添いの為にティタンも他国へと渡った。
慰めているうちにティタンが間違いを犯して、今に至る、というのが世間に公表しているあらましだ。
「その話の流れでは、ティタン様が悪者となってしまうではないですか」
事実とは全く異なる内容が所々に見られる。
「ミューズと、そしてスフォリア家の名誉を守るためという事でそう提案された。ティタン様には申し訳ないとは思っているのですが……」
「兄上が言ったのならば仕方ありません。それに俺の事は気になさらずに。どうせ元から悪い評判しかないのですから」
ミューズの名誉が守れたならばそれでいい。
「それよりも兄は他に何か言っていなかったですか? 見返りなくスフォリア家の名誉を守るとは言わないと思うのですが」
何か意図があるはずだと懸念する。
「言っていました。逆らう事は出来ず、条件を飲むしか出来ませんでしたが」
「王太子様に何を言われたのですか?」
自分のせいで何を要求されたのかと怖くなる。
「レナンを王太子妃にするというものです」
「え?」
ミューズは信じられないと言った顔だ。
「だってお姉様はスフォリア公爵家の跡継ぎとなる人ですよね、それが何故?」
「こちらには、婿としてティタン様を差し出すと言われたよ、そうすれば存続は出来るだろうって。有無を言わさぬ口ぶりだった」
反対しても聞いてはくれそうになかった。
「ミューズの名誉を落とさせない代わりにに、ティタン様がしていた外交の仕事をレナンが引き継ぐようにと言われた。王城へ行ってから、ここにもだいぶ戻ってきていない」
文は来るが本人は今忙しく、来られないそうだ。
「私を助ける為にお姉様が犠牲になるなんて……」
「いやそれが、思いのほか大事にされているみたいで。エリック様はレナンに惚れたと言っていたよ、文でも始終口説かれていると書かれていたし」
熱意のある言葉にレナンも絆されているようで、悲観的な事は書かれていない。
ティタンは何となく兄の思惑がわかった。
外交でヘマをして制限のあるティタンよりも、同情を受けているミューズの姉の方が他国に受けやすい。
そして王太子妃にまでするということは、本当にエリックの好みだったのだろう。
「ちなみにレナン様は王太子妃に興味のある人でしたか?」
「そんな畏れ多い、そんなことを望む子ではありません」
やはりとティタンはため息をつく。
逃げようとしたレナンに増々執着しただろう、気に入ったものはどこまでも追いかけるタイプの兄だ。
「すまない、ミューズ。兄上がこんな事をしてたとは思わなかった」
「私も、まさかお姉様が召し上げられるなんて」
青い顔をし、震えている。
「明日城に行けば会えるからそんなに心配しなくていいよ。僕達も行くから一緒に顔を見に行こう」
ディエスにそう言われ、ティタンも驚く。
「まさかディエス様達も呼ばれているのですか?」
自分達だけで行くものかと思っていたが、義理の両親も一緒とは。
「そうなのです。婚家として一緒に来るように言われてまして。全員そろっての顔合わせをしてないからと」
「そうでしたか……」
様々な話にミューズの心労と体調が心配になってきた。
「長旅での疲れもありますので、そろそろ宿へ向かおうと思います。明日の朝にまた来ますから」
「今日このまま泊まればいいではないですか。部屋も食事も準備していますしよ」
「私はここにいてもいいの?」
「当然だよ、ここはミューズの家なんだから。皆もミューズ達が来るのを待っていたんだよ」
廊下ですれ違う使用人達の様子を思い出すにそうは見えなかった。
「緊張していたのと、僕達より早く赤ちゃんを見るべきではないと言っていたから、それでじゃないかな。じき公爵家を継ぐ二人にそんな不敬をするような使用人はいないよ」
にこにことするセレーネの頬に触れ、ディエスも笑顔になる。
「もっと孫の顔を見ていたいし、二人が嫌でじゃなければ是非泊っていって欲しいんだ」
そう言われたら断れない。
「ではお言葉に甘えさせてもらいます」
公爵の好意に甘えることにした。
ミューズもずっと親孝行がしたいと言っていたし、丁度いいだろう。
親子水入らずで話す良い機会だ。
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