第73話 『新機能』
「よし、みんな……準備はいいな?」
「おー」
「クマー」
「クゥー」
「……ねぇ、なんなのこの恰好」
バレないように静かに声を掛け合った俺たちにミントが質問する。俺たちは全員、
「それはクマの能力で認識阻害の効果があるんだ。もちろん直視されれば見つかるがかなり効果は高い」
「いや、僕は魔法で消えることが」
「いいかミント、ときにはな……チームワークというのも大事なんだ」
「それ、君がいう?」
そう、大事なのは旅は道連れってやつだ。ソフィアさんがいないことが悔やまれる……結構楽しそうにしていたからな。
「クマ、クマクマ、クマー」
「えっ、ほんと? ちょっとやってみるね」
リリアはクマに何かを聞くと、つけている仮面を触り何かを念じるように目を閉じた。
『こちらリリアー、リリアでーす』
「おわッ!? な、なんだ……」
「な、なに今の……声がしたんだけど」
「すごーい、ちゃんと届いてる!」
「なんだったんだ今のは?」
「クマの新しい能力だって。仮面を触りながら念じると声を届けることができるの」
「それはすごいな、俺もやってみよう」
俺もリリアと同じように仮面に触れ念じてみる。
『こちらレニ、みんな聞こえていたら右手をあげてくれ』
指示すると全員が言われた通りに動いた。ちゃんと聞こえているようだな、これはすごいぞ。
「これなら二手に分かれて行動できるな。俺はルークと、リリアはミントと動いてくれ。もちろんクマも一緒にな」
「わかった、よろしくね」
「クマッ」
「お願いだから足を引っ張らないでよ」
「何かあればすぐに連絡すること。絶対に一人で行動はしないようにして、何より自分の身を優先して守ってくれ」
「りょうかい!」
「クマ―」
「本当に大丈夫なの君たち……」
こうして俺たちは二手に分かれ行動を開始、俺とルークがまず森の中を探索すると海賊たちの集落に出た。俺とルークは遠目から様子を
「見た感じ人数は少ないな。よし、奥のほうに牢がないか探してみよう」
「クゥ」
外周から裏に周っていくと山沿いに横穴が掘られている……、どうみてもここが怪しい。
「ここで待機しててくれ。もし何かあれば見つからないように隠れろ」
「ククゥ」
穴の中へ入っていくと道が分かれており片方には牢があったが中には誰もいない。道を戻りもう一方へ進んでみると、そこには宝箱や財宝が溢れていた。
「お~溜めこんでるなぁ。やっぱ海賊といえばこれだな」
念のため予言の本がないか調べるがそれらしいものは見当たらない。よし、もうここに用はないな……。そして戻ろうとしたとき、一つの地図が目にとまった。
こ、これはもしや宝の地図? 宝の地図といえば、わざわざ地図を作るくらいの宝なんだから伝説級に等しいんじゃ……! 俺は地図に目を通してみた。
「ふむ…………なるほどな、全然わからん」
それもそのはず、現在地が表記されてるわけでもなくこの島がどの辺かもわからない。コンパスもあるわけじゃないしこんなのわかるはずがない。俺は地図を戻し外に出ると、ルークと一緒に集落の中を調べることにした。
* * * * * * * * * * * *
「王女様はどこかな~?」
「クママー」
「ねぇ、魔力が追えるならさっさと見つけてよ。ゆっくりしてるほど時間はないんだからさ」
「クーマークマー」
「うーん、なんかこの島に入ってから魔力が混ざり合ってるというか……入り乱れているような感じでわかんないんだって」
「僕はなんにも感じないけどなぁ」
「とりあえず歩き回るしかない、頑張ろう!」
私たちは今、レニ君たちとは逆に海岸沿いを探している。話によると岩の中に洞窟があったりするらしいから注意深く見ておかないといけない。
「あ、向こうから人が来てるよ」
「えっ?! どうしよう、どこかに隠れないと……えーっと……こっちよ!」
クマを連れ岩場の陰に隠れると少しだけ横から覗き込む。
「丸見えなんだけど……もう、バレても知らないよ……」
ミントは上空から見ているためばれる心配はなさそう。私たちも見つからないように……そして何か情報も得られればいいんだけど。海賊たちがこちらに歩いてくる。
「しっかし、もっと金目の物を奪ってくりゃよかったのに」
「しゃあねぇ、お頭の命令は絶対だ」
「姫様一人さらってきて、いったいどうするつもりなんだろな」
「水の国の王女だっけ? 最近砂漠の王子と結婚するとかしないとか色々うるさかったが」
「まさかお頭……姫さんと結婚する気じゃあ?」
「はっはっはっは! そんなことになったらいよいよこの世界も終わりだな!」
男たちは会話をしながらそのまま去っていった。お姫様と海賊が……まさか、本当に!?
「ミント、結婚を止めるわよ!」
「へっ? 何言ってんの……あっ、ちょっと!」
私たちは一刻も早く姫様救出のために探索を急いだ。そして、しばらく進むとミントがジッと遠くを見ている。
「ねぇ、何か聞こえない?」
「ん?」
言われた通り耳をすましてみるが海から聞こえる波の音でよくわからない。
「んーわかんないなぁ。何が聞こえるの?」
「歌……こっちからだ…………」
ミントはそういうと、ふらふらと何かに誘われるように海沿いの岩場へと飛んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます