161~170
惑 性 難
気難しい学者のような顔つきで彼は窓の外を見つめている。もともと室内に籠もることを好まない性格である彼がこうしているのも、散策の途中に好からぬ輩に絡まれた傷が原因のため、余計に不快であるようだ。春は誘惑の多い季節である。外から響く嬌声に惹かれるように、彼は長い尻尾を揺らしていた。
溶 立 勢
町中が崩れるような勢いで降り続いた雨は、夕方にはすっかり止んでいた。日が沈めば透き通った空に無数の星々が輝いている。帰り道、ふと立ち止まって光を見上げていると、なんだか体がすぅっと浮かび上がって、宝石を撒いたような宇宙の中に溶け込めるような気がして、少しだけ朝の輝きが憎らしい。
濁 乱 晩
散乱した衣類、見知らぬ男、ホテルのベッド。昨晩なにがあったのかは明確だ、意識の混濁した間にホテルに連れ込まれなんやかんやされたに違いない。あまりの出来事にベッドからずり落ち、四つん這いのままオロオロしてしまう。ふと鏡に目が行き、また愕然とした。そこには小さなだけが猫が映っていた。
暇 脱 汗
だらだらと流れ落ちる汗を拭いとる。この星はそこら中に流れる溶岩のせいで、故郷で過ごした夏よりずっと暑かった。宇宙海賊に襲われた時に使った脱出ポッドが流れ弾に当たってから、仲間たちの姿を見ていない。運よく生き延びたものの、落ち着く暇もなく歩き続けて疲労は頂点に達しようとしていた。
乱 中 涙
僕らの日常に混乱と幸福をもたらした異星人たちは、来た時と同じように突然この星を去っていった。夜空の中を小さくなっていく宇宙船を見送って、いまだに鼻を鳴らしている幼馴染に向き直る。今はもう幾億の星に紛れて見えない船をじっと見つめ、握りしめるハンカチは落ちる涙を受け止めきれずにいた。
勢 味 帯
甲高い音を立てて空へ昇る火の玉は勢いよく広がり、大輪の花を咲かせる。火花はちらちら瞬きながら煙の中へ消えていった。心にばかり影を残す、その終わり方がなんともあっけなくて、だから祭りは嫌いだった。隣の彼女の金魚のような帯も、味の分からないかき氷も、これからの日常には溶け込めない。
晩 神 乳
ちっぽけでガリガリの子猫を拾った。どうも親猫の姿が見えないので家に連れて帰ったのだ。友達の家の、まだ乳臭い子猫たちにまぜてもらってだいぶ世話になった。丈夫に育つように毎晩神様に祈った。そんな子猫がまさかここまで大きくなるとは。軽トラの荷台からはみ出た元子猫をみてため息をついた。
態 乳 変
「このヘッドギアを装着して、スイッチを押したまま理想の女性を思い浮かべるんだ。そうすれば信号を読み取ってゲルが骨組みの上で形を作るから。3分くらいで状態が安定するけど、とにかく集中してイメージを持続させないと変なのができちゃ…お前おっぱいのことしか考えてないな。なんだこの乳の数」
飲 好 夜
ぼんやりと白み始めた空を見上げる。眠気の訪れぬまま、何を思うわけでもなくただ飲み続けた酒は、好いたものであったはずなのに味もなく喉を過ぎてゆくばかりだった。夜が嫌いだ。月明りさえ届かない暗闇の中、ほんの鼻先に潜むおぞましい影の気配が、幼い頃から眠りすら遠ざける恐怖の時間だった。
高 想 守
抜けるような青空と言うものを初めて見た。つい昨日まで天高くそびえたつ入道雲は姿を消し、空は一面の青、青、青。想像しうるかぎり、ここまでの晴天は見たことがない。このような空は、また見られるだろうか。自分が大人になるまで、自分の子どもが大きくなるまで、守り続けることが出来るだろうか。
次の漢字を全部使って文章作れったー
https://shindanmaker.com/128889
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます