第42話 エンデュミオンの影
「うおおおおお。ふざけんなよ、こっちは魔法攻撃ができないってのに、あっちは全部の攻撃が魔法ってずるくない?」
「とりあえず、身を隠すわよ!! これが、あと三体もいるなんて……」
「これが『エンデュミオンの館』の厄介さなのですね……あの男らしい姑息なやり方です」
魔法の届かない距離から矢を撃ってくる狩人の攻撃から俺たちは必死に逃げる。やつは人型のゴーレムであり、不思議な色に輝いている弓と矢をその身に装備しているようだ。
こいつがダークフレイムさんのいっていたエンデュミオンの影か!!
正面からならばいいんだが、屋根の上からの攻撃となると近づくのも厄介なんだよな……しかも、こっちが近づくと屋根を渡って同じくらい距離をとってきやがる。
なんとか逃げた俺たちは一息つく。建物に入ろうにも、不思議な結界のようなものがあって、邪魔をするのだ。
「アイリス、どうだ。あの狩人を何とか倒せる魔法はあるか?」
「それは……ちょっと難しいわね。私の制御力じゃ、魔法を放ってもあの距離じゃ、魔力が拡散しちゃうわ。なんとかばれないように近づかないと……」
「私の結界と神の雷はおそらく通じるはずです。いざとなれば私がおとりになるので、その間にマスターたちは近づいてください」
「それは最後の手段だよ。ほかの三体がどこにいるかわからない以上危険だ。そして、俺の魔剣は今回は役に立たないみたいだな……」
軽く刃に触れてみるも、指が切れないのを確認してため息をつく。どうやら魔剣の攻撃も物理攻撃とみなされるようだ。
となると、マジでアイリスの魔法と、俺とブリュンヒルデの神の雷で戦うしかないみたいだな……
「マスター!! 先ほどとは違う敵がやってきたようです。数は二体です!! 気を付けてください」
ブリュンヒルデの言葉の通り狩人が襲ってきた反対側から、二体のゴーレムがこちらに近付いてきた。
「まじかよ!! 全員でパーティーを組んでいるわけじゃないのだけが救いだな」
「あれは……魔法使いと前衛職みたいね。魔法なら負けないわ。私に任せて!! 風刃よ、我が敵を切り刻め!!」」
魔法の射程に入ると同時にアイリスが圧倒的な量の風の刃を放つ。相手の魔法使いが何かをする前の先制攻撃だったが、相手の騎士が盾を掲げたかと思うと、不可視の結界が現れて、風の刃を受け止めた。
「な……アイリスの魔法を受け止めただと?」
「あの結界は魔力だけを防ぐものよ。だから、私の魔法も……」
アイリスが驚愕の声を上げる。なるほど、物理防御を捨てて魔力を防ぐことにのみ特化しているから、アイリスの魔法も防げたのだろう。いや、ここでそれはずるくない?
「マスター、アイリスさん危険です!! 敵が魔法をうってきます!!」
ブリュンヒルデの言葉を聞いて魔法使いを見ると、杖から大量の炎の矢が飛んでくるのが見えた。アイリスが放った時よりも数は少ないが、こいつもかなりの使い手のようだ。
少なくともロブリンマジシャンよりは格上だろう。
「お二人とも失礼します!!」
「うおおおおお!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
ブリュンヒルデが俺たちを荷物でも抱えるようにしてそれぞれの腕で抱え込んで火の矢の範囲から、免れる。
そして、そのまま駆け出して、敵が見えないところまで逃げ切った。
「申し訳ありません、このまま結界を張って耐えていても、じり貧だと思ったので……」
「ああ、ナイス判断だ。助かったよ。当たり前だけど、ダメージは受けないけど、物理で干渉はできるんだな」
剣で自分の指を斬れるか試した時も、押される間隔はあった。つまりはダメージは受けないが干渉はできるという事なのだろう。
「あの騎士が厄介ね。あいつさえいなければあんな魔法使いには負けないのに……」
「まるで護衛でしたからね……おそらく一緒に行動をしているのでしょう。多少強引にでも引きはがさないといけなさそうですね。やはり、二手に分かれるしか……」
確かにはさみうちをすればいい気もするが……あの狩人が怖いんだよな……あんまり離れて、挟み撃ちにあったら俺達は殺されるだけだろう。
どうしようかと考えて……俺は一つの作戦を考え付いた。物理でダメージを与えられなくても、干渉はできるのだ。だったらやりようはある。
「あいつらを引き離せばいいんだよな。だったらいい作戦があるぞ」
「本当なの?」
「流石マスターです!!」
驚いた顔をする二人に俺は得意げにうなづくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます