第17話 VSサハギンロード
サハギンロードは本来ならば中層に生息する魔物だ。強さを求め下の階層におりていき過酷な生存競争を生き残ったサハギンだと言われている。その能力は通常のサハギンよりもはるかに高く、物理だけでなく魔法にも耐性ある鱗と四本の腕から繰り出されるモリの一撃は歴戦の冒険者ですら苦戦するという。
その能力はもちろん、ミノタウロスよりもはるかに高い。
「ブリュンヒルデ!!」
「ギョ――――――――!!!」
俺がブリュンヒルデを召喚するのと、サハギンロードが起き上がり奇声を上げるのはほぼ同時だった。これはなんだ? と思っていると、背後から『ギョギョ!!』という声が響いてくる。
「こいつ!! 寝ていた奴をおこしたのか!!」
「マスター、気を付けてください。くぅ!! 足場が悪くて力が……」
「ブリュンヒルデ!?」
サハギンロードの三本の槍をいなしながら、苦しそうな声を上げた。元は沼地だからか、足元が滑って本来の力が発揮できないのだろう。
彼女にカイニスの靴を装備されるべきだったか?
そして、ブリュンヒルデが初めて苦戦をしているのを見てショックを受け、恐怖してしまった自分に嫌気がさす。いつの間にか俺は自分が思った以上に彼女に頼っていたのか? ああ、そうだ。なにかあれば彼女がいれば何とかなるって思ってたのか……
「違うだろ、アレイスター!! 俺は英雄になる男だ!! こんな所で引けるかよ!! うおおおおお!!」
「マスター!? 危険です」
「大丈夫だ!! 一本ならば俺がいなす」
意を決して、サハギンロードのモリを一本いなす。全力で受け流したはずなのに手が痺れて、思わず剣を落としそうになる。これを三つも受け流していたのよ、ブリュンヒルデは……
「ギョギョ!?」
サハギンロードが一瞬俺を見つめ不快そうに顔を歪めると、今度はこちらに向けて、モリがふるわれた。だけど、俺もステータスにかまけないで経験を積んでいたからだろう。かろうじで相手の動きを受け流す。
このまま消耗戦になれば俺達が勝てるだろう。だけど、背後から迫るサハギン達の足音がそんな悠長な事をさせてはくれない。ブリュンヒルデの槍もかすり傷を与えてはいるもののやつに致命傷を与えるには至らないようだ。
「ギョ―――!!」
背後からサハギンの声が響き目の前のサハギンロードがにやりと勝利の笑みを浮かべやがった。完全に挟み撃ちである。
まずい……俺はどうすればいい? この状況を打破するには……俺は何とかこの状況を覆そうと必死にサハギンロードに斬りかかっているブリュンヒルデを見つめ、思いついた。
「ブリュンヒルデ。俺が一瞬隙をつくる。だから、サハギンロードを頼む!!」
「マスター!? いったいどうやって?」
「俺とお前の力でだよ!! 雷光突き擬き」
彼女の疑問には答えながら、俺はサハギンロードのモリに合わせて突きを繰り出した。凄まじい衝撃で俺の剣とモリがぶつかりあって、サハギンロードが体勢を崩す。
やはり、今の俺ではこれが限界か……
ブリュンヒルデだったらモリごと破壊していただろう。だけど、俺も確実に強くなっているのだ。そう実感しながら次の手をうつ。
「愛しき我が守護者よ、仮初の力を与えん『戦乙女(ブリュンヒルデ)の寵愛』!!」
「ギョギョ―!!!??」
「うぎぎぎょ!!」
俺の剣から神の雷が発生して、あたりに雷がまき散らされる。水分をたっぷり含んだ地面をより多くの標的を巻き込み感電する。サハギンロードが苦しんでいるが、俺も例外ではない。思わずサハギンみたいな情けない悲鳴をが得てしまった。無事なのは『対魔法防御』を持っているブリュンヒルデくらいだろう。
そして、ブリュンヒルデの槍がきらめいて、サハギンロードが悲鳴を上げた時に空いた口を貫いた。
「マスター大丈夫ですね? やぁぁぁぁ!!」
俺の方に一瞬視線を送り無事を確認すると、彼女はサハギンロードと同様に感電をしているサハギン達の対処に向かっていく。
沼地に慣れたのか、まるで演舞のように美しく流れるようにブリュンヒルデを見つめながら、半分痺れた身体でポーションを取り出して飲み干す。体の痛みが徐々に引いていくのがわかって一安心だ。
そして、サハギン達を倒したのを確認して一息つくと、ブリュンヒルデの頬がぷくーっと膨らんだ。
「マスター!! なんで、あんな危険な真似をしたのですか? マスターは対魔術の防御がないんですからこうなることはわかっていたでしょう?」
「ああ、だけど、こいつの隙を作るにはこうするしかなかったんだよ。それに……ブリュンヒルデなら絶対倒してくれるって信じてたからさ」
「うう……そう言われたら何にも反論ができなくなるじゃないですか」
「ごめんごめん、だけど、ここでブリュンヒルデだけに任せるようじゃ英雄にはなれないだろ?」
心配させたことは謝りながらも自分は間違っていないと思う。俺の目指す英雄は仲間に頼ってばかりではいられないからだ。
「まったく、それでこそ私が認めたマスターですが……私ももっと強くならなければなりませんね。おっと……さっそくレベルが上がったようですよ。強敵でしたからね」
その言葉を聞いた俺は彼女のステータスを確認する。
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ブリュンヒルデ
真名『??????』
レベル5→10
HP 60→100
魔力 70→110
攻撃力 60→110
素早さ 30→60
スキル
上級槍術
神聖魔法
防御アップ
対魔法防御アップ
神の雷
ユニークスキル
戦乙女の誓い
己が主と認めたもののために力を振るう時ステータスアップ。
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うおおお、すげえ!! 久々にチェックしたこともあるが、中々レベルの上がりにくいブリュンヒルデなのに、召喚した時の倍のレベルになっている。そして、その恩恵はそれだけではない。
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レベル25
HP 15(+50)
魔力 20(+55)
攻撃力 15(+55)
素早さ 15(+30)
スキル
ブリュンヒルデの加護(召喚者の一部ステータスアップ)
ブリュンヒルデの寵愛 戦乙女のスキルが使用可能。
突きLV1
ユニークスキル
マイナス召喚
装備
ドドスコ賠償剣
疾風のローブ
カイニスの靴
魔狼の首飾り 攻撃力+5 獣系にはさらに5
鱗のバックラー NEW HP+30
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俺のレベルも一気に上がった上に、ブリュンヒルデが強くなったのでステータスも段違いで上がったのだ。
そして、サハギン達を大量に倒したからかさっそく新しく召喚できるものが一つ増えていたのでさっそく召喚してみる。
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鱗のバックラー
サハギンの鱗によってつくられた盾。金属よりも硬く、軽いため非力な人間でも使いやすい。非常時は敵を叩くことにも使える。
ちょっと魚クサい
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なかなか強力そうな防具である。まあ……匂いはドワーフの店員さんに相談するとしよう。
「次は四層に言っても大丈夫そうだな。あーでも、何を召喚しようかなぁ」
「あまり浮かれないように……と言いたいですが、今回は浮かれてもいいと思います。そうですね、そろそろもう一人仲間を召喚したほうがいいかもしれませんね」
「そうだよな。幸いにも枠はもう一つあるし仲間を召喚するのもありか……ちょっと迷うな」
先ほどまでは一歩間違えたら死ぬかもという状況だったのに、次は何を召喚しようか胸を躍らせている自分に苦笑しながら、サハギンの宝玉を回収する。ついでにサハギン達がため込んでいた防具などの回収してアイテムボックスにいれる。
もう、使えるものはすくないだろうが、冒険者の遺物だ。誰か関係者が欲しがるかもしれないからな。そして……俺はサハギンロードの遺体を見て、眉をひそめる。
この前のミノタウロスといい、今回のサハギンロードといい、本来はこんなところにいるような魔物ではない。しかもこいつは誰かに傷つけられて逃げてきたのか?
何かダンジョンで想定外の事がおきているのか?
「ブリュンヒルデ……やはり、誰かを召喚しようと思う。強力な仲間がもう一人いれば、さっきみたいな時も何とかなるし、俺のステータスもあがるからな」
「そうですね、マスター。ただ、ここはあれですから、平地に向かいましょう」
ダンジョンで何がおきているかはわからない。だけど、何がおきてもよいように対策をすることは悪くないだろう。
そして、俺はブリュンヒルデにあたりを警戒してもらいながら召喚の準備を始めるのだった。
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今のLV25
犬 消費LV3
悪魔 消費LV10~50
戦乙女 消費LV15
英雄 消費LV10~50
魔王 消費LV99
ケルベロス 消費LV60
リッチ 消費LV30
ファフニール 消費LV65
サハギンロード消費LV15 NEW
???
???
ETC
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というわけで次回は召喚回です。よろしくおねがいします。
面白いなって思ったらブクマや☆をいただけると嬉しいです。
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