第9話 新しい召喚物

「くらえ!! 雷光突き!!」



 踏み込みと同時に繰り出された突きが、魔狼を貫き絶命させた。あれから、何体かの魔狼と戦って、俺はようやく雷光突きをものにしていた。

 そして、それだけではない。すばしっこい魔狼との戦いを経て、俺は完全に自分の上昇しすぎたステータスに身体が慣れてきた。力に振り回されることがなくなったのである。



「魔狼の牙も結構手に入れたし、そろそろ休もうか」

「そうですね、ちょうどいい運動になりましたし……お弁当を頂きましょう」



 俺の言葉にブリュンヒルデが頷いた。彼女が上機嫌に見えるのはきっとバーバラのお弁当をたのしみにしているだけでなく、俺の成長を喜んでくれているっていうのも関係しているだろう。……関係してるよな?



「わーすごいですね!! 出来立てですよ。湯気が立ってます」

「ああ、このアイテムボックスに入れたものは状態が変わらないみたいだな」



 お弁当にとバーバラが持たせてくれたカツサンドだったが、彼女の言う通り、カツが湯気をあげており、何とも食欲をそそる。

 


「うおおお、すげえ、揚げたての味がする!!」

「わーい、ご飯はやっぱり出来立てが一番ですね!!」



 口に含むと肉汁がじゅわーとあふれ出して、口の中が熱くなっていく。ダンジョン内でこんなうまいものを食べているのは俺達だけじゃないだろうか?

 そんな風に食事を楽しんで、一息をつく。



「そろそろレベルも上がってきたし、何かを召喚してみようと思うのだがどうかな?」

「そうですね……マスターは今戦っていて何が足りないと思いましたか? それを補うものを召喚するのがいいかと思います」

「そうだよな……」


 彼女の言葉に俺は召喚リストを確認して考える。今のレベルは18だ。今回の戦いでは俺は魔狼の素早さに追いつけずにカウンター気味でばかリ戦っていた。だったら素早さを補う装備がいいだろう。

 たしか、早くなりそうなものがあったはず……



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疾風のローブ消費LV15

ビキニアーマー消費LV25

魔法の鎧   消費LV30

カイニスの靴 消費LV15

魔狼の首飾り 消費LV1 NEW

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 なんか増えているんだけど!? しかも、こいつだけやたらと消費LVが低いだと……? 俺は魔狼の首飾りの詳細を確認してみる。


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魔狼の首飾り


 硬くて鋭い魔狼の牙をあしらった首飾り。攻撃力があがり、獣系の魔物に対してうたれ強くなる。

 

 解放条件 狼系の魔物を20体以上狩る


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 ???があるとは思ったが、俺の行動で新しい召喚できるものが増えるのか……しかも、効果が良いわりに、消費LV1は破格である。

 これなら疾風のローブとこれを同時に召喚できるじゃないか。



「疾風のローブと魔狼の首飾りを召喚!!」



 世界が漆黒に包まれると、二枚のカードがその存在を主張するように俺の視界で回転する。そのカードに描かれているのは魔術師が着るようなローブと牙を何個もつなげて作られた首飾りだ。



 疾風のローブ



 風の精霊たちがかつての友のために一つ一つ糸に魔力を込めて編んだ品。守備力は高くないが、精霊の加護によって、素早さがあがる。

 俺の手元のカードが神々しい輝きを放つと、この身には魔力によってきらびやかに輝くローブと、どこか力強さを感じる首飾りを纏っていた。



「すごいですね、マスター!! 二つとも強い魔力を感じます」

「ありがとう。これで俺のステータスも上がったはずだ。せっかくだし、食後の運動と行こうか」



 俺たちは再び魔狼の群れを見つけて、剣を構える。そして、魔狼が襲ってくるのにあわせて、先ほどとは違いこちらから斬りかかっていく。



「今度はこっちに二匹くれ!!」

「わかりました、マスター!!」



 あわてて、距離をとろうとした魔狼だったが、素早さの上がった俺の一撃が足をかすめて、悲鳴を上げる。

 そして、隙を狙って襲い掛かってきたもう一匹の魔狼を返す刃で一撃で倒す。素早さが上がったことにと攻撃力があがるだけで、こうも楽になるのか!!



「フフフ。マスターが強くなったのは装備のおかげだけではありませんよ。ステータスにふりまわされないようにちゃんと鍛錬をしたからその力をつかいこなせているのです」



 俺が手負いの魔狼をたおして、新しい装備の強さに驚いていると、ブリュンヒルデが、そんな風にほめてくれる。

 確かに動きの素早い魔狼との戦いによって、俺はかなり戦いに慣れてきた。そして、憧れの英雄の技に似たものも使えるようになったのはブリュンヒルデの指導によって特訓したからだ。


 

 ああ、そうか……俺のスキル『マイナス召喚』は確かにステータスがあがりにくい。だけど、それはそれを補うための武器や防具を手に入れることができることと、強力な仲間の力を借りることができるから、レベルによるステータスの上昇があまり重要ではないということなのかもしれない。

 そして、そのことに気づくことができたのは目の前で俺の成長を喜んでくれている戦乙女のおかげだ。



「ありがとう……最初に召喚したのがブリュンヒルデでよかったよ」

「もう、何を言っているんですか? 私もマスターに召喚されて幸せですよ」



 そういって恥ずかしそうに微笑む彼女を見て、改めて俺はマイナス召喚というスキルに感謝をするのだった。



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やはりある行動をしてアイテムが解禁されるのテンション上がりませんか?


というわけでアレイスターくんのパワーアップ回でした。

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