雷の行く末なんて誰も知らない

かりりん

第1話

窓の外が激しく光った。10秒後には雨音を切り裂くような地響きが轟いた。3kmくらい先で雷が落ちたのだろう。光と音は何度も繰り返す。早いと言われている音さえもあの閃光には遠く及ばない。きっと雷に打たれてしまったら、音を聞く間もなく散っていくのだろう。声なんてきっと聞こえないだろう。そんな当たり前なことを私は部屋のベッドの上で浮かべていた。見上げれば逆さに時刻を示している目覚まし時計がそこにはあった。

「7時、13、いや14分かな・・。」

ベッドから足を下ろしそのまま流れに逆らわず立ち上がる。長らく伸ばした髪をふいに触りながら台所に向かう。そういえば冷蔵庫に昨日残りの野菜炒めがあったはず。部屋の扉を後ろ手に閉めようとした時窓の外が激しく光り地響きが轟いた。それと同時に机の片隅に寂しげに佇んでいた写真立てが力なく倒れ、机から落ちた。1秒にも満たない時間私はそれを眺め、扉を閉めた-----------



台所で冷たい野菜炒めを電子レンジを温め食べ始めた。温かく私が昨日生み出したときまで時間が巻き戻ったかのようだった。が、ところどころ冷たくあくまで擬似的に時間が巻き戻ったように見せかけられただけだった。食べ物だろうか人間だろうがどんなものでも本当に時間を巻き戻すことなんて、できるはずはない。きっと流転して何度も裏と表を繰り返す、空でさえそうだから。1週間そこらたてば誰も今日の天気がどうだったかなんて覚えてなんかいない。そういえばさっき部屋を出てから雷の音も光もしていない。今はただ、騒がしさを洗い流すように静かに雨が降り続いているだけだった。

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