第5話 蒼也  家族

 俺は、大学在学中の二十歳の時に、小説家デビューして立て続けに作品を発表し、一気に若手の売れっ子作家としてもてはやされた。

だけど、俺はコミュ症で執筆する以外のことは出来ればしたくなかった。

そんな俺のサポートをしてくれたのは、実の弟の

蒼真だった。

蒼真は、アメリカの大学に留学していたけど、俺の為に帰国して、俺の傍にいてくれた。

俺の為に。


俺と蒼真は、年子だったから、双子に間違えられるくらい似ていた。

顔も背丈も声も似ている。

特に声変わりをしてからは、俺たちの声は親でも聞き分けられないくらいだった。


俺が高2、蒼真が高1の春、両親が死んだ。

高速道路で、後続車の無理な追い越しに依る事故に巻き込まれ、両親の乗った車は横転し、炎上した。

両親は、車から出ることが出来ずに、焼け死んだ。

今の時代、平和な日本において、火事ではなく自殺でもなくて、焼死する人なんて滅多にいないだろう。

元々、裕福な家だったから、保険もデカい保険に入っていたそうで、育英積み立て?とかいう物と、2人の生命保険とかで、俺たち兄弟の手には4億円が入った。

親戚は、九州に嫁いでいる父の妹である伯母さんがいるけれど、それほど交流もなかったし、俺たちはもう高校生だから、施設などにも入らずに2人で生きていこうと決めた。

都内で、大きめの一軒家に暮らしていたけど、これは2人で暮らすには広すぎるし、維持管理するのは大変だし。

両親がお世話になっていた弁護士さんに、諸々の手続きをお願いして、家を売却して2人で暮らすのに手頃なマンションを購入してもらった。

その売買差益で、5000万ほど手に入った。

厳密に言えば、弁護士さんがだいぶちょろまかしているのもわかってはいたけど、両親がお世話になっていた分の謝礼として、見過ごすことにした。

この弁護士さんには、その後もなんだかんだと世話になった。

俺が大学に入る手続きも、蒼真が留学する手続きも、煩わしいことは全部やってくれた。

その都度、請求される金額はぼったくっていたけれど、お金を払って気持ち良くやってくれるのなら、それでいいかと思うことにした。

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