第1話 紗友花  出会い

 私は、結婚して桜森紗友花になった。

旧姓は田中だったから、

『たなかさゆか』さん

って呼ばれても普通だったけど、

『さくらもりさゆか』って、なんだか女優さんみたいな素敵な響きで、なんてゆうのか、ちょっと照れてしまう。

結婚して1年以上経つけれど、まだその名前に全然慣れないのは、誰からも呼ばれることがないからだ。


結婚当初、旦那さんのマンションに転がり込むように新婚生活が始まった。

落ち着いたら、引っ越しをしよう、と。

なので、仮住まいのようなつもりで暮らしていた。


旦那さんの仕事は、小説家。

私より7つ年上。

本名は、桜森蒼也さくらもりそうや

仕事の時は、佐倉あお と言うペンネームを使っている。


 私と蒼也さんとの出会いは、佐倉あお先生の本の出版記念サイン会に4時間列んでサインしてもらった時。

あお先生の初めてのサイン会。

何年も前から佐倉あお先生の大ファンだった私は、会社を休んでサイン会に行った。

当日は、朝から自宅のある千葉でも雪が降っていた。

始発電車に乗って新宿まで行った。

初めて会った あお先生は、本当にかっこよくて、後光がさしているように尊かった。

その時にアドレスを書いた紙を、あお先生に そっと渡した。

そんなことをしたって、まぁ連絡なんてこないよね……

そう思って諦めていた。


サイン会の1ヶ月後、佐倉あお先生から、ダイレクトメッセージが届いた。


【2/7の新宿のサイン会に、寒い中来てくれて、ありがとう。1ヶ月経ったけど、本は読んでもらえましたか?可能でしたら、感想をお聞かせくださると嬉しいです】


今回の作品は、恋愛モノが多い佐倉あお先生の作品の中で、異色なモノ。

『まほろばの朱きドラゴン』

長編の異世界ファンタジー作品。

だから、読者の生の反応が欲しかったのだと。

私は、ガッツリ長文の感想を送った。

何回か、メッセージのやりとりをして、

直接会ってお話しませんか?

と、誘われた。

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