停滞期?

 と、パーティでの活動はこんな感じだ。それとは別に探索の無い休養日は【影移動】による転移で一人、下層に潜って魔物を討伐してはステータスアップに励んでいる。


 今や俺の最高到達階層は地下五十階。非公式だけど、この地下遺跡の最高到達階を更新している。どやぁ、と誰かに自慢したいが公表するわけにもいかない。


 この地下遺跡、深く潜れば潜るほど魔物の数は少なくなるのだが、魔物の質が高くなる。この階層で出現する魔物はBランクの魔物ばかり。


 Bランクの魔物一体が率いた軍勢でベテラン冒険者が多くいる開拓所が危機に陥ってしまうのだから、俺が攻略中のこの階層がどれだけ危険かは言うまでもないだろう。


 倒すだけなら光魔法【審判の光 神光】でもぶっ放せば終わりなのだが、地下遺跡という狭い空間であんな魔法を放てば大惨事になるだろう。たとえ俺が無事でも上層にいる冒険者やシエイラの街にも大きな被害がでてしまう。


 つまりこの限られた地下遺跡という空間で倒さなければいけないのだが、ゴブリンキングだって剣技で圧倒出来た俺。そんな俺にとっては楽勝だろ、そんな風に慢心していた俺は伸びきった鼻をへし折られることになった。


 出現する魔物はBランクに恥じない多様な能力ももちろんだが、その多くが植物魔法やそれに類する能力を持っており地形も操作しながら俺に襲い掛かってくる。つまり地の利は魔物側にあるってことだ。


 例えばトレントナーガという半身半蛇の魔物の亜種。その身体は樹木でできており地下遺跡と同化して神出鬼没な上、気配を隠すのが上手いためこの地下遺跡内に限っては三百六十度全方位からの攻撃に備えなければならないし、こちらの攻撃を当てるのも難しい。


 それにウルデバという人型の魔物。魚のような皮膚に両生類の手足のように吸盤の付いた指先が特徴の幼児くらいの背丈の魔物だ。非常に素早く水魔法を巧みに操りこちらを攻撃してくる。そしてその鳴き声はとても美しいのだが樹木を操る効果がある。精神に作用する効果もあるらしいのだが俺には無効なのは、ステータスの精神の高さによるものだろう。


 トレントナーガとウルデバとの戦いではまるで地下遺跡が魔物の味方をしているように感じることすらある。俺も植物魔法を使えるからわかるのだが、地下遺跡の植物を操るのはかなりの魔力と集中力を使う。いくらBランクの魔物だからって戦いながらそうポンポンと操って攻撃に転用するなんて考えられない。


 地下遺跡で生まれた魔物の特殊能力で操り易くなっているのではないかと思っているが、それを証明することは出来ない。


 そして最も厄介なのは光魔精と呼ばれるエレメント型の魔物。魔精とは実体がなく魔力の塊でしかない魔物だ。そしてこの階で出現する魔精は全て光属性を帯びている。そのため光魔法は吸収され、相反する属性の闇属性の魔法については何故か無効化されてしまう。物理攻撃は素通りしてしまうので剣での攻撃は効かないし、植物魔法も効果がない。


 これらの魔物に対して俺は【邪神の魔力】を解放し、その尽きることのない魔力による身体強化に周辺警戒、地下遺跡探索で上昇した剣術、体術をベースにした近接攻撃と大して効きもしない植物魔法で戦っている。


 因みに【邪神の魔力】解放時に際限なく魔力を込めれば生活魔法でも凶悪な威力を発揮するので戦闘にも使えるのだが、ミト曰くそれだけ多くの魔力を込めてしまうと魔法自体に微量の邪気が混じっているらしい。


 残留魔力を調べるスキルや魔道具なんかもあるらしいので、邪神に関連付けられる可能性があるため攻撃への転用はしないことにした。


 トレントナーガやウルデバは一対一なら何とかなるものの光魔精については俺ではダメージを与えることが出来ないため、現在その対策を考えているところだ。そのためこれ以上進むことは出来ずに足踏み状態が続いている。


 いや、まぁ、相手の攻撃では命の危険を感じることは無いので全部無視すれば先に進めるには進めるんだけど、何か負けた気がするのでここまでの階層はしっかりと魔物を討伐しながら進んでいる。だからこそこの階層でも魔物を攻略したいんだよね。


 俺が魔物に苦戦するのはスキルの相性によるものもあるだろう。それでもこの三ヵ月でそれなりに魔物は討伐しているのだが、スキルは解体スキルレベルが上がった他には生活魔法のレベルが一上がっただけでそれ以外に変化はない。ステータスも邪竜を倒したときほどの大幅な上昇はなく頭打ちだ。


 そう、スキルレベルやステータス上昇が鈍化している。


 俺のスキルレベルの上がり方はかなり異常だった。転生特典なのか、加護の影響なのかは分からないが、前世とは関係のない剣術スキルは既に六となっている。これは一般的には達人と呼ばれてもおかしくないレベルのはず。


 確かに父親に叩き込まれた剣技に加え、大幅に上昇したステータスを考えれば俺の剣の腕はかなりのものだ。自分でいうのはなんだけどさ。


 これは素の状態でもBランクのゴブリンキング相手に手加減すら出来ることからも明らかだ。


 だが邪竜討伐後からは全く上がる気配がない。ダイエットでもある停滞期的なものなのだろうか。それとも何か他の要因があるのか。


 そしてステータスも上がってはいるのだが、こちらも上がり方が鈍ってしまった。



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名前:レイブン・ユークァル

年齢:10


加護:

・死と再生の神による加護…成人するまで運に限定補正、闇系統、光系統の魔法適性に補正、前世の経験を持ち越し

・邪神の恨み…魔物に襲われやすくなる、闇系統の魔法適性に補正


(カッコ内の+がスキル補正で加算されている数値、表示はスキル補正が反映されたもの)

(上昇値は邪竜討伐直後の時点からスキル補正を除いた値)

生命力:1,365/1,365(+360) →(122 up)

魔力:3,307/3,307(+880) →(105 up)

力:1,109(+480) →(103up)

精神:10,617(+1000) →(3 up)

素早さ:1,251(+450) →(94 up)

器用さ:2,201(+960) →(85 up)

運:108(+∞、成人までの限定補正) →(1 up)


スキル:

剣術(Lv6)…剣を用いた攻撃に補正。力に+180。

体術(Lv5)…体捌きに補正。素早さに+150。

武術(Lv10 Max)…武芸全般の習得、実行に補正。生命力、力、素早さ、器用さに+300。

Up生活魔法(Lv5)…生活魔法が使用可能。

植物魔法(Lv6)…植物魔法が使用可能。魔力、精神に+180。

闇魔法(Lv10 Max)…闇魔法が使用可能。魔力、精神に+300。

邪道魔法(Lv1)…邪道魔法が使用可能。魔力、精神に+100。

光魔法(Lv10 Max)…光魔法が使用可能。魔力、精神に+300。

統治(Lv4)…自領を発展させる行動、部下の人心掌握に補正。精神、器用さに+120。

算術(Lv10 Max)…計算に補正。器用さに+300。

言語(Lv5)…言語習得に補正。器用さに+150。

ちーと(Lv1)…ちーと☆。

眷属化(Lv2)…レベルに応じた人数、自身の眷属にできる、生命力に+30。

▼眷属:ミト・ズゥレ・ソソララソ、フッサ・ンモゥカキ

Up解体(Lv3)…生物の解体作業に補正。器用さに+90。


ユニークスキル:

邪神の魔力…解放時に邪神の力を纏う。魔力を無限に使用可能。

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 とまぁ、こんな感じで以前のように爆発的な上昇はしていない。結構魔物を倒しているんだけどな…。


 今現在の素の状態でもBランク冒険者と同程度の実力はあるので、十歳としてはかなり強い方だろう。というか俺以上に強い子供なんかいないはず。だけど何が起きるかわからないこの世界で長生きして、「死の痛み」から逃れるためにはもっと絶対的な強さがあった方が安心だ。


 来月には十一歳の誕生日を迎え、加護による無敵タイムは残り四年間となってしまう。


 停滞期、なんとかせねば!

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