一粒
息の絶えた口から転がり出たものを、少年は布切れに包んで懐にしまった。小指の爪ほどのガラス玉に似たそれが魂だ。ナイフの血を拭い、薄暗い四囲に目を走らせた後、さらに暗い路地へ身を翻す。
顔つきに背丈に髪の色、どれもが今までの誰よりもそっくりだった。きっと今回こそうまくいく。
寝ぐらに戻った少年は蝋燭を灯さぬまま、隅に横たえた仲間の亡骸に走り寄った。取り出したガラス玉を半開きの冷たい唇にあてる。少年の視線の先で唇に吸い込まれたかに思えたガラス玉は、しかしすべり落ちて床に砕けた。小さな音の後に静寂が戻った。少年は閉ざされたまぶたを見て立ち上がった。そして服越しにナイフの柄に触れると、再び外に駆けていった。
毎月300字小説企画 第11回(2023.11.4)
お題「奪う」
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