星に願いを
第七皇子は剣も長い読み書きもままならぬ病身で、夜空をながめることだけを慰めとしていた。亡き母から聞いた星座の物語を思い出しながら、曇りでも雨や雪が降ろうとも、どの星がどの一点に瞬くかを見透かしていた。
成人の儀を目前にした夜、皇子はただ一人の侍従に言った。
「わたしもつくったんだ」
竜座の黄金色の牙、不死鳥座のきらめく心臓、熊座のたくましき足――細い指が迷いなく動き、輝きを示してつないだ。侍従は恭しく型通りに応えると部屋を去った。
次の夜、いくつかの星が消えると同時に、国境近くに山をも踏みつぶす巨躯の異形が立ち上がった。皇子は咆哮を聞きながら最後の息を吐いた。帝国の何ものも朝日に浴することはなかった。
毎月300字小説企画 第10回(2023.10.7)
お題「つなぐ」
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