ショートショートアソート

藤枝志野

Eの仕事

 掃除の途中、マントルピースに飾られた絵皿を割った。

「それはご主人様が直々にお求めになった骨董品よ」

 家政婦長は目くじらを立てた。他の先輩使用人は、新入りだからと励ます者、遠慮なく呆れを顔に出す者と色々だった。

「お務めご苦労様です」

 執事に人知れず葡萄酒の貯蔵庫へ呼び出された。

「いえ、ありがとうございますと申し上げるべきですね。ご安心を、全て終わるまであなたをくびにはさせません」

 引き続きお願いします、と執事が――依頼人が一礼する。聖水入りの葡萄酒を振りかければ、皿の破片は灰と化して消え去った。

 使用人として潜入し、屋敷を蝕む霊や呪われた物たちを祓いつくす。最初の一体を葬った。次はどいつを掃除しようか。




毎月300字小説企画 第1回(2023.1.7)

お題「初」

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