ウンディーネ
こうやって
無理もない。今の彼の体は、体長約五メートル強。体重一トンを優に超える巨大さなのだ。
いわゆる<ホホジロザメ>に非常によく似たそれを維持するためには大変な栄養を必要とするのは当然だろう。
ただ、実は、先ほどレオーナ達を取り囲んでいたサメの群れを少なからず食っていたことで、まだ少なく済んだというのもある。
それがなければ、今回食べた量のさらに倍は必要だったかもしれない。
なので、レオーナはむしろ、
「もうよろしいのですか?」
と尋ねてしまった。
「あ、はい。大丈夫です」
彰太自身は自分でも驚くほどの量を食べてしまったにも拘わらずそれだったので、少し気恥ずかしさすら覚えてしまった。
その一方で、ミリス達は無事に食事を終えられたことで安堵した様子だった。
彰太もそのことには気付いて、申し訳ない気分になる。
『みんなを怖がらせないようにしなきゃな』
そうも思う。
レオーナにはこの時、言語としては明確には伝わっていなかったものの、彼が申し訳ないと感じている印象は伝わっており、
『とてもお優しい方なのですね』
とは思えていた。だからこそ、食事の後にそのまま懇談に移った際、
「ショータ樣には、<サメ族>としての本能も備わっていらっしゃることは承知の上で敢えて申し上げます。私達にそのお力を貸していただけないでしょうか?」
そう丁寧に懇願した。その上で、
「私達<ウンディーネ>は今、<バンディーネ>からの侵略を受けています。バンディーネは強大な軍事力を有した国で、しかもここ数年で特に力をつけ、私達をも取り込もうとしているのです。
サメ族もバンディーネの軍門に下り、尖兵として使役されています。ショータ様もその状況を憂いておられるのではないでしょうか?」
とも。
しかしこれに対しては彰太は、
「あ、俺、最近ここに来たばっかりだから、そういうの全然分かんなくて」
やはり申し訳なさそうに応える。するとレオーナは、
「やはりそういうことでしたか。では、バンディーネに使役されているサメ族とは無縁というわけですね?」
身を乗り出して問い掛けた。これに対しても彰太は、
「うん。だから俺にとっては仲間ってわけじゃないんだよ。ぜんぜん違う種類みたいだし」
正直に思った通りを告げた。
無論、彼の言葉をそのまま鵜吞みにするほどレオーナも純粋ではなかった。なかったが、敢えてそれを前提にリスクを背負うだけの器は持っていたようだ。
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