黒百合兄妹の呪術捜査
緋衣 蒼
Detective Twins ―探偵の双子―
「ねえねえ妹子。先生、面白い呪いにかかってるね」
「そうですわね、兄一郎。祓って差し上げましょう」
そして俺が受け持つ生徒達でもある。思わず息を長く吐いて、右手で頭を掻いた。
「とりあえず生徒会室でべったりくっつきながらチェスと将棋の異種ボードゲームするのを止めろ。お前らの顔面が東大主席合格級なせいで大量の気絶者が転がっているんだっつーの」
苦言を呈したら双子はそっくりな造形で笑う。確信犯かよ、クソ。
「まあまあ先生。僕達の善意を無償で受け取れるだなんて、光栄なことだよ」
兄一郎が膝上にいた妹子を降ろして立った。それと同時に、こいつの肩甲骨より下くらいにある漆黒の髪が揺れる。
「そうですわ、先生。私達は正当な実力を持っていますのでご安心なさって」
降ろされて僅かに不服そうな妹子が続いた。日本人形を連想させる古風な髪型は烏の濡羽色を名乗るのにふさわしい手入れがされている。
「ひとまずお前らの長身で俺を囲うな」
生徒に両脇から見下されるのは癪すぎた。双方から「あはは」とか「うふふ」とか楽しそうに笑われる。首が痛いんだっつーの。
そもそも、さっき突然言われたことも訳分からん。体調不良や怪奇現象に襲われたことはねぇんだけど。
「大丈夫だよ先生。呪いと言っても、貴方を嫌っている訳じゃないらしいから」
「半分間違いですわ、兄一郎。愛憎故のお可愛らしい呪いだとお見受けします」
「流石だね妹子。やっぱり、心の理解は君に頼るのが一番だ」
「当然です、兄一郎。けれど貴方の論理的解釈も必要ですわ」
「お前らだけの世界観で会話すんじゃねぇって何回言わせるんだ。せめて当事者を置いて話を進める癖を直せ」
どこの何がどうなってそうなったのか全く読めない。頭が良いやつほど他人を置いていくのは共通事項なのか、あるいは俺の周辺がそういうやつらばっかりなだけなのか。胃が痛い。
兄一郎が俺を中心にしてグルグル回る。対して妹子は少し離れた位置からこっちを見つめていた。何をされているのか分からない、未知の恐怖心が背中を伝う。
やがて何かを理解したらしい双子は立て続けに言った。
「ねえねえ妹子。僕、まだ解けないよ」
「奇遇ですこと、兄一郎。私もですわ」
「これは捜査をする必要があるね」
「面倒なので避けたかったですが」
「仕方ないよ、敵前逃亡とくれば墨黒の名が泣くから」
「仕方ありませんわね、百合の矜持が許しませんもの」
家柄と超次元の話をしているのは分かったが何も分からん。
「頼むから現代語訳してくれ」
「百合一族、ケイイチロウ!」
「同じく墨黒家、マイコ!!」
「誰が戦隊ごっこしろっつったよ」
「2人は」
「探偵!」
「そういうことじゃねぇっての」
胃薬が来い。
とにもかくにも、俺は
「つか本題。お前ら、さっさと机を片付けて生徒会室を返してやれ。ファンクラブが『畏れ多すぎて入れない』って発狂みたいに騒いでる」
「えっ、僕達のせいなの?」
「発狂については違うかと」
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