貞操概念異変 

庭顔宅

第1話 取り巻く環境

QIWE年 世界は混乱へ突き落とされた。地球に急接近した隕石の破片が地球に落下し、未知のウイルスを世界中へばら撒いた。


G7やWHOは対策をするどころか、原因を解明すること以外なにも出来なかった。気がつけば、女性の出生率だけが下がり続けていたのだ。動物や昆虫などは全くの変化は無かったが、人間だけに変化が判明していた。未知のウイルスが発生したとされるQIWE年から早100年。


未だに女性は全滅や、急激に減らすわけではなく徐々に数が、出生率だけが減っていく。だが100年たった。


世代がまるまる変わり、男女比が明確になった。


100:1


男が100に対し女が1。


これは人類にとって大打撃だが、致命傷では無かった。200年たった今でも男女比は100:1のままであり、総人口自体は減ったが絶滅の恐怖とは無縁となった世界で今、


俺は生を受けた。


名前は瀬名 騎士 (せな ないと)


俺もまた、キラキラネームの被害者の一人だ。だが俺には他人とは違うところがある。それは俺が転生者だということだ。


前世は普通の世界だった。男女差別だーとか浅いフェミニストがウンタラコウタラ言っている普通の世界だった。フェミニストなどと言っているのは俺の知識が偏っているだけで、世界は普通だ。俺がちょっとオタクでネットに生きていただけだ。

気にしないでくれ。


今世の俺は黒髪黒目の普通の男性だ。身長が高いわけではなく、イケメンではない。というかその事実に気がついたのは幼児の頃だった。


俺が転生者だと気がついたのは幼稚園の某日。


妙に同級生である子達が男ばかりで、保育士も男性しかいないことを理解し、こりゃ革命おきたで!と一人で笑っていたころだった。


急に頭痛に襲われ、俺は気絶した。そしておねしょしていた。この世界で初めて泣いた時だった。


あれほど恥ずかしかったことはない。


ちなみに園児に女性はいない。そもそも女児であれば、女性の保育士がいて、警備もしかかりとした保育園にいく。そこにいける男もエリートの子供だけだ。


すでに差別はここから始まっていた。


だが園児達は気にしない。だって理解していないのだから。生物の生存本能が女を求めていないからだ。


俺はちょっと悲しかった。


近所で仲が良い女の子に優しくして、大人な対応をして、美人なお姉さんにあら~~ないとちゃんは偉いわね~と頭なでなでしてほしかった。


めっちゃがっかりした。だが無いとわかれば人間吹っ切れるものだ。

そもそも俺は三次元よりも二次元の方が興味があるタイプのオタクだった。リアルに執着がないのだ。もう振り切れている。


今思えば、逆に全く周りに女性がいない環境には感謝している。


心おきなくオタク道に突き進むことが出来た。


俺の家族は父が一人いるだけだ。


俺は捨て子。どこかの孤児院に拾われ、どこかの孤児院から父が俺を拾ったらしい。

本来であればどんな理由であっても国が保護するため、捨て子など存在しないはずだったが、例外はどこにでもある。

俺はその例外の側だった。後で知ったが、この世界にも少なからず野外放置される赤ん坊はいるので例外ではなく、少数派だった。


そういった赤ん坊達も一度全て、孤児院に集められる。孤児院に集まるのは捨て子だけではなく、教育させる気が無いのに生んだ子供達が流れていったりする。こっちが主流で捨て子は本当に少数派だ。聞いた話だと俺がいた孤児院では俺ともう2人しか捨て子がいなかったらしい。本当にしか、と言えるのかわからないが保育士の先生が、そうと言うならそうなのであろう。


捨て子やら、教育する気が無いのに生んだ子が存在し、普通に許されている背景には国の方針が関わっている。国の方針では子供を産むことは数年に一度の期間で義務づけられている。一応、世界には人工授精に人工子宮やらが存在しているが、日本に関しては存在しているだけで、知る人ぞ知るみたいな感じだった。世界も人工的にやろうぜ!と勢いがあるわけでは無く、まぁ手段の一つだよね~といった感じだった。

その理由はやはり別に焦る必要ないね、と結論を出したのも理由の一つだろうか。まぁ俺には関係無い話だ。一生縁が無いと断言していい。


まぁ、そんな理由やらがあって孤児院は、少し姿を変え、現代で繁栄の一途を辿っていた。歯科病院よりも多く存在しているね。


今の孤児院は、国からの支援を大々的に受けられている。だから穴を突くやらからも少なからずいるのだが…まぁこれもどうでもいいな。


世の男性は、妻がいない場合は孤児院から引き取るのが普通。そのため子育ての義務やら義務教育を受けられる権利などは一般家庭からは消えている。


父が俺を引き取った理由は、気になったからという一般的な理由だ。だが所詮気になったレベル。母性が低い男性が普通に自分の血が通っていない子供を育てることは可能性が高いことでは無い。


そして父はその高くない側だった。


だったら引き取るなよと声を大にして言いたいが、子を引き取るともちろん補助金が出る。


それを悪用する人達もいるようだが、父は違う方だった。


俺は小学5年生から父とは離れて暮らしている。だが定期的に生活費などを与えられているので、俺の父は優しい方だ。


育児放置と言えば聞こえが悪いが、子供の意思を尊重するやり方だ。小学5年生に経済を求める父は疲れていたのだろう。俺が転生者じゃなければ死人1人増えていたと思う。



物語はやっと始まる。俺は今、小学生を卒業し中学校への入学を待っている。


今日は入学式。


着慣れていない制服を着ていた。特に特別な感情は無い。前世も学校は制服制だったので、5回目の制服だ。今世の小学生も制服だった。俺は私服をほぼ持っていないのでとても助かっている。子供の成長速度というのは恐ろしい。


今さらだが、父から貰うお金は定額だ。まぁ補助金がそのまま俺に来るのだから当然だな。そのお金とちょっとしたグレーバイト?で稼いだ金が俺の全財産だ。


今は入学準備やらで何やらで、今はちょっとした貧乏だ。補助金が出ると言っても所詮補助金。多くはない。だが人生の1/3の1はバイトですと言わんばかりの俺の人生を持ってすれば、何とかなる。


実際に小学校卒業後、俺は事前に都内の高いくせに狭い父と暮らしていた賃貸から、山奥のやっっすい一軒家を買っていて引っ越しをしていた。


別にやっっすいからといって古いとか、狭いとかではなく、広いし新築のように新しい。その理由は、元々その家は女性が別荘が欲しいと建造依頼したからだ。

だが別にもっといい立地が見つかったのか、単純に飽きたのか、どうでもよくなったのか、理由は定かではないが造るだけ造られ放置された一軒だ。山奥すぎて人気も無く安くに安くなった一軒だ。


長期間放置されていていたので、草木が家の壁にへばりつき、家までの山道が道の機能をしていなかった。家具の移動なども、引っ越し業者がやってくれなかったレベルだ。行ける所まで行き、荷物は地面に置かれた。お金払ったのに…


まぁブルーシートは貰えたので、雨の心配がちょっとだけ無くなったのが良かった。


てな訳で、引っ越して最初の仕事は掃除だった。木々を伐採し、草を刈り取り、環境を整えた。家の中は埃が多少ある程度で、綺麗だったので助かった。


だが家具の移動が大変だった。家具を持って、山道を登って、降りて、登って、降りてを繰り返した。死ぬかと思った。ずっと運んでいたのに2日もかかったよ?運び終わったときは腕が痛すぎてご飯も喉を通らなかった。1直線にベッドに入った。


やばいかった。冷蔵庫とか絶対1人で持ち運ぶ家具じゃないって。


だが今となっては良い思い出だ。この家は周囲の土地ごと購入したので死ぬまで私有地だ。その周辺の広大な土地はおまけでついてきた。おまけと言うにはずいぶんと高いが土地の量的には安かった。さすが田舎だ。もう家賃で悩む必要はない。


だが交通方法が徒歩しかないので大変だ。


この家の周辺には人どころか、建物がない。電車がなければ、バスもない。近場の街まで1時間30分以上かかる。中学校まで2時間以上だ。


食料の買い出しが毎回地味に大変だ。


俺は運動が好きでは無いタイプ、普段から運動はしない。だから山奥が住居という、長い通学路は俺にとっては、と て も、いい運動になるからまあ良いかと割り切れている。面倒くさいという感情は消した。


だが自転車が使えないのは予想外だった。マウンテンバイクでなければ自宅周辺の道では使えなそうだ。アスファルトの道路なんて夢を見るな。全てが土だ。土。

誰も使わなすぎて、道の形は崩壊していないが、ボロボロだ。でこぼこ過ぎて車だと尻と頭が痛いことになるだろう。あの引っ越し業者は大丈夫だったのだろうか?


マウンテンバイクはお値段最低3万円。上を求めたら10万を優に超える。そして俺の体は子供。すぐ成長する。近いうちに買い換えることにもなってしまうだろう。

つまりマウンテンバイクなんて高級品は買えないということだ。


もう、運動と割り切ろう。多少朝早起きして、多少朝から疲れて、多少帰宅するころには日が暮れているかも知れないだけだ。


体が成長しきるであろう高校生になったら、何処の高校へ進学するかによってマウンテンバイクは買うかどうか考えよう。


高校生になったらお金も貯まっているはずだ。マウンテンバイクを買うなり、簡易的ながらも道を整備するなり使いどころはあるだろう。


話は変わるがさすが女性用別荘。ネット、電気、非常用設備を完備している。たいへんオタ活がしやすいです。


さて、そろそろ行かないと入学式に遅れるかも知れない。


これから片道2時間以上だ。電車など時間が制限される代わりに高速な移動手段ではないので1分の遅れが致命傷になる事はないが、単純に距離が遠いというのは大変だ。


瀬名は家を出て山道を下る。勢いに体を任せ、ホイッホイッと跳びながら降りる。変にゆっくり降りようとすると靴擦れやら、爪先が痛いやら、時間がかかるので合理的な判断だ。


山道を下りきったら走る。訓練はしてきた。2時間ぶっ続けで走りきれるように訓練してきた。俺の背中にある学校指定のバックの中には替えの下着にタオル、水が入っている。不覚はない。


何度か見てきた田んぼを横目に走る。


田んぼは放置に放置され雑草が生い茂っている。なんとか田んぼとしての枠を残しているレベルだ。こうなるのも仕方がない。この周辺にわざわざ家を建てる物好きはいないので、数少ない家は全て空き家らしいい。これが少子高齢化というやつか。

ゴルフ場など広い土地が必要なものも、土地的、県的な理由でいろいろ無理らしい。

つまり一生耕作放棄地だ。


そもそもそんな話が上がったのは女性が住むとわかってからだ。今は音沙汰もない。

つまりこの一帯は俺の国だ。


誰もいないので、打ち上げ花火から大規模なたき火だって県に申請したら可能だろう。


1時間ほど走って、街が見えてきた。走ることにより30分も短縮した。30分も寝過ごしても何とかなることがわかった。いいね。過酷な体力増加訓練は無駄じゃなかった。


さらに20分走って俺が通うことになる中学校が見えてきた。


きちんと整理されている芝生に、美しいまでに整えられた桜並木がある外周を通り、なぜか道路から校門までの間にある長い緩やかな坂道を一気に駆け抜けて中学校に入る。道路から校門までの間に人が沢山いたが、逃げるように走り抜ける。


こうして長い通学路を得て中学校についた。予定より40分も早く着いたため、時間には余裕があった。


智美中学校。


俺がこの学校を選んだのは贈与金、免除金そして特待生制度があったからだ。その3つのおかげで普通の安い中学校よりもお得に通学できる。それに家からそれなり近い中学校だ。


正直、ここしか無いと思っている。当然、免除金なんて物がある学校だ。とても水準が高い。だが前世の知識を持ち、早くから理性を取得した俺だ。


復習したら余裕だった。オタ活もちょっとだけ我慢して一年間、勉強をした。そのおかげで順位トップで特待生になれた。もしこの学校に落ちたら滑り止めの、安い中学校に行くことになるが、いかんせん治安が悪い。絶対に行きたくない。


俺は水をゴクゴクと飲み干し、呼吸を整えながら自分のクラスを確認しに行く。クラスが掲示される場所には俺以外に人が見えない。だが校門には沢山の人がいた。


Q.それはなぜか?


A.女子を待っているんだよ。


校門にいた人は全員男子で、女子の登校を待っていたんだ。もちろん先生方も監視している。

この学園はかなり高水準な中学校だ。とうぜん女子もいる。だから外観もこれだけ綺麗なのだ。


一クラスに3人以上単位で女子がいる。


あそこの男子達は、哀れな本能の奴隷だ。花の無い小学生時代を過ごした故のものだ。見てやるな。


小学生。人が理性を持ち始める時期に通う学校だ。とうぜん女子がなぜ、周りにいないことを理解し始める時期だ。俺の小学校も女子が存在せず、大変たいへんだった小学校生活だ。性欲の塊みたいな会話が鳴り響くこともあった。まだ小学生だぞ?エッチな雑誌一つで一つの組織が出来る。まだ小学生だぞ?


ありえない。


あの校門にいる男子はそんな小学校生活を嘆くだけではなく、上を目指し勉強した所は認めるが、目的が不純なため素直に褒められない。


本当であれば、俺も女子がいない学校へ行きたかったが、先ほども言った通り治安が悪い。男子校でまともな所は費用が高い。費用が安い所は治安が悪い。なかなか難しい問題だ。


治安が悪い中学校はほとんどが受験勉強負け組だ。そんな学校の生活など、とんでもない物だ。


少しインターネットで調べてみたが、言葉を失うレベルだった。1~10割はホモになるらしい。そしてちょっとした煽り(負け犬などという発言)で刃傷沙汰なる。


怖い。


絶対に行きたくない。


だから俺はしょうが無く、女子がいる中学校に進学することになった。


そもそも男子だけで治安が良い中学校はこの県には無かったため選択肢から外された。この県には都合の良い男子校がなかったのだ。

父は県外までの引っ越しは許してくれなかったので仕方なく、女子がいる中学校へ進学を選択することになったんだ。


さて、あれこれ言ってきたが、別に憂鬱な気持ちで登校してきたのではない。これでもワクワクしてきた。


もしかしたらオタク友達が出来るんじゃ無いか?とドキドキしているのだ。小学校はまともな親友が出来なかった。むしろまともに生きるのに必死だった。


わかるか?先生が一クラス3人体勢だったんだよ?(生徒30人)叫ぶゴリラ。泣く陰キャ。毎日喧嘩する猿。


怖かった。


この中学校は受験勉強を頑張ってきた人達だけが来れる。


その中にオタクがいるなんて思っていない。むしろ0人だと確信している。


だが俺と同じように、現実が理解できる人がいるかもしれない。そういう人達をオタ活の道へ引きずり込むのだ。


瀬名は狡猾な笑みを浮かべた。だがすぐにここが公衆の面前だという事を思い出し、真顔に戻した。


さて、自分のクラスは1-A、19番。確認した。出席番号が素数なのは素晴らしい。日付と席順で当てられないかぎり、発表の機会はほぼないだろう。


「「「ッきゃーーー!」」」

「「「「「ウォォォォーーーー!!!」」」」」

「誰か気絶したぞ!先生!先生!!」


急に激しい声援が耳の奥に響いてきて、若干の痛みを感じ、耳を押せた。声がする方を向くと、当然ながら校門で男子達が叫んでいた。先生は、救護のための先生だったのか。


俺は逃げるように中庭へ行った。そして椅子に座り込む。


さすが女子が来る中学校なだけあって、中庭は綺麗だ。ここでお昼ご飯を食べられたら最高なんだろうなと思いながら座る。汗で引っ付くシャツがウザい。早く着替えたい。だが疲れた。もう筋肉を動かしたくない。そよ風が涼しい。このまま眠ってしまいそうだ。

がっつりと背もたれによたれかかって空を見つめる。


上を向くことによって長い髪がかき分けられ、綺麗に空が見えた。


俺は髪を伸ばしている。女子かというほど前髪だけは髪を伸ばしている。それは目の下から頬の上辺りまで伸びた髪だ。日常生活からして大変だがその効果は今日からハッキリするだろう。俺はそれを、対女子自衛用防護壁と呼ぶ。


なぜそんなに髪を伸ばしているのか、と問われると理由はほぼ1つ。それは女子に目を付けられないようだ。


女子に目を付けられるというのは、良い意味でも、悪い意味でも最悪な場面だ。

この学園は評価によってクラス分けられる。Aが一番良くて、Eが一番下だ。全てのクラスに女子はいるのだが、Aクラスは桁が違う。二桁だ。10人を超える女子がAクラスにはいる。


これは歴代の傾向から間違いない。


さて、女子に目を付けられたらどうなるか。知りたいか?


女子のお気に入りになると、当然ながらその女子の取り巻きになるだろう。お気に入りであれば、中心として女子と一緒にその集団を盛り上げていくだろう。下っ端であれば下っ端だ。とても大変で理不尽が一杯だろう。


その女子と疎遠になることは難しい。完璧な状況で嫌われなければ、被害を負うのはこちらだ。女子に嫌われ、先生から怒られ、クラスから怒られ、男子から殺意が飛んでくる。


逆に嫌われると、女子に嫌われ、先生に怒られる+生徒指導、クラスから怒られ+いじめ(に発展する可能性大)、男子から殺意+カツアゲ暴行類が飛んでくる。


地獄だ。


俺なら退学して自ら中卒のレッテルを自分の額に貼る。不登校になって3年間留年するというのはあまり現実的では無いので仕方がない。


さて、ここで質問だ。初めから、完璧な状況で女子と疎遠になるにはどうすればいいのだろうか?


答えは簡単。


ヤバい奴だと認識されることだ。


まず、ヤバい奴には2種類あると思う。

まずは精神的ヤバい奴。


言動からヤバい奴だ。やってること言ってることが全ておかしい奴。だがその場合だと物好き系女子に目を付けられるかも知れない。それに自演自作のヤバい奴だ。どこかで穴が出てくるだろう。

よって候補から外される。


つぎは外見的ヤバい奴。


外見からヤバい奴だ。近づくことさえ遠慮してしまうような外見で、話こと全てに最初はえ、は、はい、など何かを言う前に言いよどむことにより、何だこいつ、近づかんとこ。という風になるように仕向けるタイプだ。

だが気をつけるべきところが一つある。それは清潔感を持つことだ。清潔感がなければ排除に入ってしまう。こいつ邪魔だ…この学校から居なくなれ、と判断されないように、清潔感は保たないと危険性が高い。正直どちらにせよ退学の可能性があるのでだいぶ危険を冒している。


だが俺が女性の奴隷にならないように、必要な事だ。女性の奴隷になるぐらいなら退学してやる。


さて俺の想定を話そう。髪を伸ばす理由は目元を隠す事により警戒される。そして言いよどむことにより、気が弱いモブと認識されることで、俺はクラスの空気になれるという算段だ。


一応いざというべきのために500円玉サイズの小さな容器にワックスを入れ、制服の内ポケットに入れてある。いつでもオールバックにして変装が出来るぞ。最終手段だけど。

豆知識だが容器の底には500円をセロハンテープで貼って、いつでも水が買えるようにしている。そして中学校では水道水が無料だ。何があっても喉が枯れて死にかけることはないだろう。


「ねぇ、ここで何しているの?」


あれ…?おかしいな。女子の声がする。なんでこんなところに居るの?いやまて、日々のオタ活による幻聴だろう。そうだ。たしかにここは中庭だが女子がいるなんて可能性は…


「ねえ?無視しないでよ。」


「ごめんなさい。」


なんでいるの?そう思いながら椅子に座り直し、声の主を見る。


輝くような黄髪だった。まるで金粉がまぶしてあるように思えた。アメジストのように輝く瞳がこちらを見ていた。まるで気品を示すように黄金のエフェクトが見えた。それは太陽の光を反射しているからだろう。




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