数多の世界を旅した最強——この世界を気ままにゆく

沢津鬼華一

第一章——到着——



 これは、上下左右の感覚など存在しているのか分からない、次元の狭間での会話——





 『うぅ、気持ち悪い。次元を移動するのって何回やっても慣れないんだけど……。○○はなんで大丈夫なの?』



 「それは恐らく、ことわりを覆しているリベル様自体に作用している力だからかと」




 『えー…、じゃあ何回やっても慣れないじゃん』


 


 「ですが!!私などでは次元を移動すること自体出来ません!なのでやはり、これはリベル様が素晴らしすぎるということなのです!!」


 


 『……うぅ、うるさくてまた気持ち悪くなって来た』



 「な、なんと!!それは申し訳ありませんでした!気分が優れるまで私が回復を——」




 『あ、もうすぐ着く。…………』






 何者もいるはずのないその空間でリベルと呼ばれた少年は、傍に立って控える者と二人で会話をしていた。何もない空間……退屈を紛らわせるには会話くらいしか手段がないのだが、それとは裏腹に、吐こうと思えば今すぐ吐けるほど気分は最悪だった


 

 一方少年であるリベルに《様》を付けているその者の様子は、リベルに心底心酔しているというのが伝わる程だった。言葉を遮られたことなど全く気にしておらず、またも身体を使って大袈裟に騒ぎ出す






 「流石リベル様!!そのようなこともお分かりになるとは。私は、また深くリベル様の素晴らしさに胸打たれ——」




 『それより、○○。俺最初、この世界一人で行こうかと思うんだよね』




 「!!な、何故ですかリベル様!私はリベル様に永遠に付き従うと決め——」



 『あー…もうすぐ目的地に着いちゃうからさ。これは決定事項ってことでよろしくね。それじゃあ、

バイバーイ!』




 

 そう言ったリベルは、傍に佇んでいたその者を

次元の狭間に突き放した


 すると次元を自由に移動することなど出来ないと言っていたその者は、縦と横の感覚などあるのか分からないその空間を、ただそのまま落ちていく

 






 「リ、リベル様ーー!!」




 『落ちていけばどこかの世界には着くからさー。○○ならどこでも大丈夫でしょ?呼ぶ気になったら呼ぶから、まぁそれまで頑張ってよ』




 「な、なんと!!リベル様からの信頼、この身に余る程の光栄です!それにリベル様の御命令ならば私めは何処へでも。ハッ!!で、ですがもし何かあった場合、すぐ私をお呼びくだ——」






 そこまで聞いた所で、リベルは目的の場所に着いたことにより次元の裂け目から弾き出された——




 リベルが現れたその場所は、大陸全土で一、ニを争う大国から遠目に見える程の距離にある広大な森の奥



 周りに木々が立ち並ぶ森林の中だった——







 『うぅ、気持ち悪い……まぁ、すぐ治るからいいんだけど。……なんか最後に言ってた気がしたけど、○○なら大丈夫でしょ。フフッ、俺だってもう一人でも旅くらい出来るんだからね』

 


 



 無邪気に喋るその声は決してうるさいものではなかったが、静まり返った森には少し響く


 リベルの体調はもう既に戻っているようで元気そうだ


 リベルは今自分がいる場所を把握しようと周囲を見渡していたが、木々に囲まれたその場所から先は何も見えず、上から見ようと跳び上がった


 大きくしゃがみ込み、ぐっと足に力を入れて跳び上がったリベルに蹴られた地面は、その衝撃で砕け散る


 その少し大きな音が、辺りに短く響いていた


 

 そんな跳び上がったリベルは森だけでなく、辺り一面を見渡せる程の上空から周囲の景色を確かめていた


 

 



 『んんーー、前よりはいい感じの空気。おっ、あそこにでっかい国みたいなのがあるな。……大きいしあの国でいっか。お腹も空いたしね』

 





 そして遠目でも分かる程巨大な国に目が止まると、リベルは長くない髪と服を靡かせながら、飛び上がった時とは違い軽やかに地面へ降り立つ






(この森も結構広かったな。まっ、この世界最初の探検には文句なしだね!!)



  

 

 『よしっ、あの国目指してレッツゴーだ!フフッ、ハァーッハッハッハッ!!』

 

 



 そう言ったリベルは高笑いをしながら目標の場所に向けて、まるで遠足をするかのような足取りで進み始めた


 

 その、魔物が蔓延る広大な森を——

 

 

 



  *****

  




主人公——リベルがこの世界に来た時のほんの一描写です



 ゆったり安心してお楽しみください^_^



ちなみに*←これが区切りで視点が変わります^_^






  

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