パワー・グリード ~他者の力を奪う特異体質のオレは魔物の力を奪って頂に上る~

辛味の視界

第一幕 追放編

プロローグ

「おはよう、みんな。」


 俺の名前は夜桜よざくら すい。普通の高校二年生だ。そう、このときまでは。


「あ、おはよう!翠!」


 今俺に声をかけてきたのは幼馴染の水谷みずたに ひじり。どんなことにも真面目で色んな人から好かれている、所謂優等生ってやつだ。


「ちょっと聖ー、私達は後回しってわけー?」


「ご、ごめんね?翠が見えたから……」


「へぇー?そうだね、仕方ないよね。なんてったってあの翠が来たんだから、サ!シシシッ!」


 今、聖と話しているのは俺たちの友達のひいらぎ 杏子きょうこだ。かなり色んな人にフレンドリーでモテる……って話を聞いたことがある。しかも成績も上の下くらいで十分いい。まあうちの学校自体がかなり頭のいい学校でここにいるだけで頭がいいんだけどな。


「おはよう!翠に聖に杏子!ってまーたお前は聖おもちゃにしてんのか。やめたれよーっと。」


「へいへいやめますよ。おはよう、瑠衣るい!」


 話しかけてきたこいつは神原こうはら 瑠衣るい。勉強はそこそこだが、運動能力に全振りしたスポーツ最強人間だ。

 この四人がだいたいいつも話しているグループって感じだな。


「おーいお前ら―、席に着けー。HRはじめるからなー。」


 ガラガラと扉を開けて入ってきたのは俺らの担任だ。HRが始まり、また変哲のない一日を過ごすのだと、ここにいる全員がそう思っていた。


♢♢♢♢♢♢


キーンコーンカーンコーン


「ふいー!終わったー!帰ろうぜー!」


 最後の授業が終わったと同時にこちらへち近寄ってきた瑠衣が言った。勉強がそこまで好きではなく、スポーツ推薦で入学した瑠衣が疲れているのはいつものことだが、今日は俺もかなり疲れた。


「そうだな、早く帰ろうか。」


 一足早く帰ろうと席を立つと、急に足が動かなくなった。


「な、なんだよこれ!なんで動かねんだ!?」


 どうやら瑠衣も同じなようで、声を上げる。同時にクラス内で同じことが起こっているらしく、クラスのあちこちから声が上がった。


キィィィィ


 床になにかの紋様が刻まれ始めた。そしてその紋様がクラスの床全体に行き渡った時、紋様が光りだす。


ボンッ!


 大きな音が鳴り、その教室にいた全ての生徒は消えてしまった。そして全世界の誰の記憶からも消えてしまった。

 

 

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