勇者（姉）と魔王（妹）の幸福追想録

プロローグ

　これは、遥か遠くにある世界の物語。

　運命紋と呼ばれる才能を指し示す紋様によって、「勇者」の才を見出された姉と、「魔王」の才を見出された妹が、幸せを手に入れるまでの物語だ。

　勇者となった姉は、心に誓ったという。

　――あたしが必ず、妹を守ってみせる、と。

　魔王となった妹は、心に誓ったという。

　――私が必ず、姉を守ってみせる、と。

　相容れない運命紋を与えられた双子の姉妹は、数多の苦難を乗り越え、互いを信頼し合い、運命に決して負けない人生を歩み切った。

　前世からの呪われた因縁と向き合い、己の運命に逆らい、世界を敵に回してでも、お互いの幸せを願い続けた。

　どこまでも純粋に、懸命に、直向きに、彼女たちは臨み続けた。

　これは、遥か遠くにある世界の物語。

　勇者となった姉と、魔王となった妹が、幸福を掴み取ってから綴った追想録だ。