46 人間たちは皆、無限に喰われ続ける餌となった

 その日の夜、学校で避難生活をしていた人間が皆、吸骨種に「骨吸い」された。


 人間たちは骨を喰われた。

「骨の幽霊」となり、吸骨種の世界に取り込まれた。

 吸骨種の「家族」の役割を同意なく与えられ、吸骨種好みの生きる人形となった。

 生涯をただ無限に喰われ続ける餌となった。


 ――――。

 ――――――。

 ――――――――。


 ――翌朝、目覚めた人間たちは顔を突き合わせた。

 前日と寸分違わぬ顔ぶれが揃っている。皆、無事だ。少なくとも目に見える傷はなく、無事に見える。


 しかし、全員の脳裏に平穏無事を否定する記憶があった。


 顔を見合わせたことによって全員が徐々に気付き始めた。自分以外にも同様の記憶を皆が持っていると。あれは己の恐怖が先走って見せた悪夢ではなく、現実だと理解した。


 異世界被災者である人間たちには、吸骨種に襲われ、存在を吸い殺された昨夜の鮮明な記憶があった。






〈5章完〉



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る