第5話:作戦と白ご飯
帰宅後、昨日と同じくらいの時間にベランダに出てみた。
「やあ、マーマレードジャムはどうだったかな?」
お姉さんは先にベランダに出ていたみたいだ。彼女の言葉で彼女が昨日言ったことを理解した。
ああ、そう言うことか。
先に言われていたのに、ここでもう一度言われてやっと理解できた。
僕は急にクラスの人気者的に扱われて、七隈さんの直下の階級上位2位のところに置かれた。
七隈さんを含めてみんなが話しかけてくれて、チヤホヤしてくれる状態。ジャムで言うところの甘い部分だろう。
でも、僕の目の前のジャムはただ甘いだけじゃない。マーマレードジャムなんだ。食べていると苦い部分が含まれている。
あの居たたまれない気持ちは「苦み」の部分だったか。
「占い師さんってすごいですね。忠告されていたのに、僕はバッチリマーマレードジャムをなめてきましたよ」
「懲りたみたいね。それは優秀だわ。苦みがあると言っても表面的には甘いからほとんどの人はそこに甘んじるものよ」
予言通りになったからか、占い師のお姉さんのどや顔が見えるようだ。もっとも、僕は彼女の顔すら見たことがないのだけど。
「甘いって言っても、あんな表面的な甘さは甘さの方だけでも馴染めなかったですよ」
「そう」
「あと、今日とか明日とかは階級の上の方に居られるかもしれないけど、七隈さんの……あ、グループのトップが七隈さんって子なんですけど、彼女の気が変わったら今度は僕がパンを買いに購買に走らされる係になりそうです」
「そこでうまくやり過ごして卒業まであと9か月くらい現状を維持するという選択肢はないの?」
「いや、無理ですよ。あれならボッチの方がまだ気が楽ですよ」
「そう……」
「他に選択肢はないんですか? ボクにとってのハッピーエンドみたいなやつ。教えてもらった選択肢は多分『猫』しか出ませんでしたよ⁉」
七隈さんにカバンに付けていた猫のキャラについていじられた。それが「猫」だったのではないだろうか。他に猫要素はなかったし。
もう一つは何だったっけ。関連のない2つだったので全く覚えてない。
「そう……困ったわね。じゃあ、明日のお弁当はご飯だけにして おかずを持って行かないといいわ」
「なんですか、その突拍子もないやつ」
「まあ、行けば分かるわ」
そう言うと、お姉さんは部屋に戻って行ってしまった。
占い師というものは本当に恐ろしい人種だ。彼女の指示で停滞していたゲームが急に進むみたいに事が進展する。
ただ、どうなるかは僕が理解していないので不安しかない。
そうは言っても、現状を打破するには僕は彼女の指示に従うしかないのだ。
その後、母さんに言って明日の弁当をご飯だけにしてもらうのだった。
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