第46話 意外な幕引き



 青黒ガーゴイルが墜落した場所の近くに、降り立つ。



 舞い上がった土埃がゆっくりと晴れ、その中から、片腕片翼を失った青黒ガーゴイルが姿を現す。



「バ、バカナ!? コノ俺ガ、人族ゴトキニ倒サレル、ダト!」

「だから、人間を馬鹿にするなって言ってんだろ。──見ろよ」



 くいと親指を立て、指さす。指した方向では、立花さんが二匹のガーゴイルと戦っているところであり、そして──、



「はぁ!」

「グギャアァ!?」



 勇者の剣で、体を真っ二つにされたガーゴイルが、地面に倒れる前に、サラリと砂へと変わるところだった。



「……クッ! コンナハズデハ!」



 ヨロヨロと体を起こす青黒ガーゴイルは、驚きゆえか、その赤い目を歪ませて俺を見る。おまえらが勝手に俺たちに襲い掛かってきたくせして、何を言ってやがんだ。



「今生ノ勇者ガ、新タニ生マレタコトハ聞イテイルガ──」



 おいおい、待て待て。



「……モシヤ貴様ナノカ!?」



 お前までそんな愉快な勘違いしてんじゃねぇよ。



「……俺が勇者なわけないだろう」



 ほんと、むかつく勘違いだぜ。ゴブリンジェネラルとのやりとりを、否が応でも思い出しまうじゃねぇか。



「バカナ!? ナラ貴様ハ一体!?」

「俺はただの冒険者だよ」



 別に嘘を吐く必要も無いだが、本当の事を言ってやる義理も根性も無いんでね。それに、冒険者ってのは本当だし。



「──ソノ実力デ、タダノ冒険者、ダト……? ──!? マサカ!?」



 起き上がったものの、フラフラとふらついている青黒ガーゴイルは、後ずさりしながら、残った左手で俺を指さした。



「マサカ貴様ハ、“七烈のレジスター”ナノカ!?」

「七烈のレジスター?」



 なんだ、それ? ちょっとカッコいいな、おい。



「……イヤ、小大陸ノコンナ場所ニ、八色ガ居ルナンテ聞イタコトガナイ! ナラ、貴様ハ!?」



 一人でぶつぶつと呟き、なぜか納得している青黒ガーゴイル。七烈のレジスターがなんだか知らないが、それがどうしたってんだ? 空から叩き落した時、打ち所が悪かったのか……? まぁ良いや。



 スタスタと、青黒ガーゴイルへと近づいていく。遠くで、「団長!?」と、立花さんと戦っていたガーゴイルが叫んでいた。

 団長? こいつ等、どこかに所属している組織なのか?



「クソッ!」



 苦し紛れに放たれた爪を、首を傾けて躱すと、青黒ガーゴイルの足を払う。



「グウッ!?」



 再び地面へと倒れ込んだ青黒ガーゴイル。



「まぁ、良い。トドメだ──」



 魔力を付与したショートソードを、青黒ガーゴイルの腹にまっすぐ落とそうとした、その時──



「──双方、静まりたまえ!」




 馬の蹄と、ヒヒーンという今のいななきが聞こえたかと思うと、身なりの良い男性が大勢の衛兵を引き連れて現れた。

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