第76話

「良かった!本当に良かった!」

 まなちゃんのお姉ちゃんが泣くほど喜んでくれている。


 「目が覚めて良かったよ。優秀な店員を失うところだったよ。」

 店長も顔隠してる。


「心配かけないでくださいよ!」

 雪、心配してくれたのか。雪なら当然してくれるよな。

 そっか心配か、


 「あれ、先輩どうしたんですか?生還出来て感動しているんですか?」


 そうだ俺はお母さんが亡くなってあの家族と一緒になってから、

ずっと、ずっと冷めてた。


 「あー、すごく生還出来たことが嬉しいよ。」


 まなちゃん、俺生きて良かったよ。


ーーーーーーーーーーーー

 そして、しばらく病院の生活が続く。動けるようになったが、まだ病院にいる。


 まなちゃんもここで入院してたんだよね。

 幽霊になって出てこないかな。


 「急いで!!この子」


 たまに、あのように急患で子どもが運ばれる。


 お医者さんは大変だな。


ーーーーーーーーーーーーー

 雪や、店長はかなりの頻度でお見舞いに来てくれる。

 あれから父親と月宮家の姉妹が来たが、俺は黙り込んだ。

 

 そして、早野がやって来た。


 「・・・」


「・・・」


「助けてくれてありがとう。」


「いいよ、俺がしたかったからしただけだし。」


「そうよね」

いや、少しは恩を感じろ。


 「ねぇ、もう言えないと思うからさ言うんだけど」


「何?」


「私、アンタこと好きだった。」


「はっ??俺にニセコクしたやつが何を」


「あれ、ニセコクじゃなかったの。いやそうなんだけど」


「ど言うことだよ?」


「私、アンタに昔春香と一緒に何回も助けて貰ったじゃん」


 確かに俺は、年上に虐められていた早野を助けたことがあった。それも何回も。


 「だから私はずっと憧れて好きだった。」

俺は何も言葉が出なかった。あの姉妹を思い出して。


 「私はそれが春香にバレてたの。でも春香は隠れてそれを全力で邪魔してくるの」


 顔からして嘘ではなさそう。


 「だから、あの日はニセコクしろって春香に命令されたの。これはチャンスだと思ったの、だからもしOKなら、その場全て春香に強制されたこともバラして春香とは絶縁するつもりだった。春香にこれはドッキリと言われる前に。」


 思い出せば、噂を主にばら撒いたのは春香だった。


 「好きな人を嵌めた罪の意識と、あなたに嫌われる顔されるのが怖くて、私は言えなかった。」


 辛そうにしている。これは本当だったのかもしれない。


 「だから転校してたのも、それが理由。」


「嘘ではなさそうだな。」


「うん、嘘ではないよ。私は本当にあなたのことが好きだった。ねぇ、もう一度だけ答えを教えて貰っていい?」


「悪いけど、俺はまなちゃん一筋だ。」


「そっか、そうだよね。」

 そして、早野は上を見ている。


 まさか、自分のことを好きになってくれる人がまなちゃん以外にいるとは思わなかった。ここ数日本当に色々なことが起こる日だな。


 俺は一つ疑問に思った。

 早野は嘘をついては無さそうだ。だがそれなら今までの態度はなんだ?



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