第49話 悪魔の話
さて、前話で幾つかの事案が見過ごされたことについて語られていたと思う。その中の一つの事案を挙げれば、『デーモン』に堕ちた元『カーディナル』たちのことが挙げられる。
とはいえ、「狂皇」エカチェリーナ=バラノハは聖堂で熟睡している所を慎重に拘束されて『カーディナル』へと戻された。今代聖女である「星屑」ステラ=マリアは憑依していたサタンが逃げ出したためそのまま治療と相成った。
問題は、「拷問吏」グレゴリー=トーチャーと「狂打者」隠岐克洋である。彼等二人は、唯一神がベヘモットによって焼き尽くされた騒動の最中に行方不明となった。そして彼等を追える余力が全くなかったエクソシスト協会は、一旦彼等のことを放置することに決めた。
『デーモン』の中に、「篤志家」と呼ばれる者がいる。
何故「篤志家」なのかといえば、エクソシスト協会に虐げられている同族を拾っては逃がしてやったり養ってやったりしているからである。本人曰く、大罪の悪魔を一通り手元に揃えたいという収集欲からなる行為だとのことだが、それによって救われた悪魔は多い。
裏返せば協会はかの「篤志家」に随分煮え湯を飲まされているということで、そのような理由でグレゴリーは「篤志家」のことを知っていた。とはいえ、協会の地下を本拠地とするグレゴリーは実際に出会ったことなどなかったのだが。
「まさか『エクソシスト』のふりをして紛れ込んでいたとはね」
「様になってはいただろう?」
笑いながら背の黒翼を翻す「篤志家」に、グレゴリーは肩を竦めた。いやはや、全く思いもよらない人間がそうだったのだ。これは見つからない訳だ、と内心で呟いた。
ジョット、というのが『エクソシスト』としての彼の名前だった。彼は強欲の魔王であるマモンの権能により、悪魔祓いの技を盗み取り、さも『エクソシスト』であるという顔をして協会内に潜んでいたのだ。
リヴィオ=フィユールという名が常の名だと聞かされたグレゴリーは、曖昧に頷いて彼の誘導に従った。『デーモン』に堕ちた自分が協会に居残っていても、処刑されるしかないと思ったからだ。
色欲と暴食に嫉妬まで一度に揃えられたのは良かった、と笑うリヴィオの背を眺め、グレゴリーは溜め息をつく。さて、「篤志家」は自分をどうするつもりなのかと、ぼんやりと考えながら。
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