こんなはずでは

考えてもいなかった

静岡体育大学を卒業して岩谷食品で再び弓道をする機会を与えてもらったことに関して感謝してもしきれない。ケガが完治してしておらずスグに戦力としてなることが出来ないのに治療費を出すからとまで言ってくれた。


何と優しい世界なのかと身をもって感じていた。早くよくなって弓道をやりたい気持ちが強いが焦っては余計長引くと少しでも早く治るようにこころがけていた。


大学時代、入社を跨いで数ヶ月が経ってようやくギブスが外れてリハビリと軽い練習に参加出来るまでになっていた。久しぶりに持つ弓矢にスゴい喜びを感じていた。


スポーツは1日休むだけで感覚が狂うとは言うが蒼唯の放つ弓矢は的に当たらないどころか届いてすらいない。ヤバいと言うよりも驚きで言葉が出なかった。


数週間経てば感覚が戻ってくる、それまで焦らずじっくりと自分自身に言い聞かせて気持ちを鎮めて弓矢を放つようにしている。ど真ん中図星を何度も当てるライバルを見えも自分のペースを乱さないようにしている。


暑い夏が過ぎてようやく蒼唯自身、思ったところに弓矢が飛ぶようになって中心に当たるようになる確率が上がり、本来の姿に戻りつつあるなと感じていた。これなら大会に出たら個人戦、団体戦で結果が残せる自信があった。


その矢先、悲しい知らせを通達される。

岩谷食品の業績悪化で弓道部を閉じると唐突に言われた。蒼唯のみならず、他の部員も驚きで涙を流す人が多くてこれからどうなるのかわからずにいた。


他の部員は総務部や経理部と仕事をする傍ら弓道をしているが蒼唯は特例で弓道に専念して欲しいと強化選手扱いになっていた。弓道が無くなっても岩谷食品に残れるかも知れないが弓道しかしていない蒼唯はどうなるのか。


蒼唯のことを献身的に来て欲しいと声をかけてくれた恩人にこの事実を話してこの先の行方について相談をしていた。クビになるのか入社して半年経って右も左も知らない人に残して配属してくれるのか聞く以外なかった。


残るならかけあうし、こうなってしまって新たに別のところで頑張りたいと言うなら知り合いの働いているところに頭を下げて斡旋あっせんしてもらうよと自分本位ではなく蒼唯がどうしたいのかを聞いてくれていた。


残りたい、けど上に掛け合って揉めるくらいなら蒼唯はこの会社を辞めて違うところに行く。自分のせいでご迷惑をかけてしまうことはしなくないのでと強調をした。


上の判断は何も出来ない人は要らない、そして歯向かうやつはもっと要らないとわずか入社半年で履歴書にキズを付けてしまうことになった。それよりも悔しいと思ったのは自分に親身に対応してくれた人を意見を述べただけで追い出す会社の姿勢が許せなかった。


間違った言動をしていたら注意する、そんなこともねじ伏せられて上のご機嫌取りして出世をするなんて不条理な世の中、次の場所ではそんな世の中を変えたいと考えていた。話を聞くと家族も居るのに仕事を新たに探さなきゃいけなくなってしまったことに本当に申し訳なく感じた。


上には上、下には下

気づいたら鎧もない状態で放り出されたような感じになってしまう。母校でもある静岡体育大学に出向いて履歴書の書き方を聞いて過去の先輩たちが進んだ会社はどこなのか聞いたりしていた。


紹介をしてくれた所のほんとどが体育大学出身って言うこともあり体育会系気質の残るところに多く進んでいた。それだけは絶対やだと時分で探すもののらちが明かない。


転職サイトや転職エージェントに登録をするとひっきりなしにスカウトメールが届いたり、こういう会社から面接を受けて欲しいと来ているけどどうすると自分が思っている以上にオファーが来たことに驚きを隠せずにいた。


今迄の見られていたのは三島蒼唯=弓道、弓道=三島蒼唯だったからこそ唯一とも言える弓道を失った蒼唯にだれも評価してくれないと勝手に思っていたが世の中はまだ見捨ていないとひと安心していた。


紹介された求人や自分で見つけた求人を見比べてどこで働きたいと思うのかを考えていた。何をやりたいのか、何に興味をあるのかと考えていると小さい頃にもらった玩具おもちゃに感動をしたことを思い出した。


自分で探していると地元静岡に長年に渡って売上を上げている玩具おもちゃメーカーを見つけて求人を見ていると驚くほどの給料に充実した福利厚生、アットホームで未経験者歓迎で丁寧に優しく指導すると書かれていて早速応募をして無事内定をもらい骨を埋めることを決めた。


だがこの選択が地獄の始まりになるとは思いもしなかった。入社初日挨拶をすると誰も挨拶を返さなかった。履歴書を汚しても今すぐ逃げた方がいい匂いがしていた。


未経験でも優しく指導すると書いてあったが誰も何も教えてくれず、聞いても何も教えてはくれない。仕事は教わるものではなく見て盗めという体育会系で昭和の残る雰囲気だった。今は令和だよねと疑うほど。


営業の人が外回りに出れば契約取れるまで帰ってくるなと数日間寝ずに働いていたと知らされていた。男女比が歪で男性よりも女性のほうが多く美人な子やかわいらしい子が多くいて卑猥ひわいな言葉やセクハラを当然のようにしている。


業界の中ではハラスメントのバイキングと揶揄やゆされているのにも関わらず上の人間は改善するどころか自分の私利私欲のために女子社員を雇っていると言っても過言ではない。


この会社にはハラスメントという言葉は存在しない。

パワハラ、モラハラ、セクハラは日常的で毎日のように労働基準監督署や警察、そして被害者家族から訴える内容証明郵便が届いていた。どうしてこの会社が潰れないのか不思議で仕方ない。


本当に会社売上主義で社員が肉体的なケガ、精神的に追い込まれて精神疾患になっても労災がおりないのは当然。社員のことを人だと思わずあて駒としか思っておらずいなくなればまた雇えばいい。


求人票をよくすれば応募が増えて掴んだ獲物は逃がさない。そしてまた辞めるを繰り返して何も改善をしようとは考えていない。ここまで求人票に書かれていることと真逆だと清々しい。正に社会のお荷物的存在である。


なぜ買収で会社が変わっているのに何も変わらないのかを考えると平民の従業員が変わっても上の貴族が同じなら変わるものも変わらない。刑務所以上の拷問だと皆が呟く。


潰れないなら潰した方が世のため人のため、マッチやライターで燃やしたいと思ったことが何度あっただろうか。それをしたら蒼唯が訴えられる。求人詐欺にも程がある。


過去に戻ったら絶対にこの会社には入らないようにするし周りの人のためにも口コミで書き込んで近づかないように呼びかけをしたいと思っていた。

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