新たな発見

どっちでもいいが

晴れて菊川総合高校に入学を決まった上で悩むことがある。それは何で通学しようか。


自転車で通うことが出来る距離ではあるものの遠すぎない距離であり。途中に長い川を渡った上に学校前には急勾配の坂がある。その途中に学校があるためとても悩ましい。


掛川南中学校から菊川総合高校に進学するという話は特に聞いておらず、誰かいればその子と仲良くなれればいいな、いなかったら最初から人脈作りから始まる。


仲良くなった子と学校の近くにあるコンビニやお肉屋さんのコロッケ、最寄り駅から歩いてすぐにはオシャレでかわいい洋菓子屋を見つけて高校生のたまり場になっていた。


電車通学に憧れていたこともあり、通学定期を買ってもらうことになるがメリットとして自分の都合で家に出られる自転車と違って電車は決まった時間に乗らなくてはならない。なので遅刻するということはよほどない。


案の定、掛川南中学校からは蒼唯のみで誰もおらず人脈作りもしないと。来るもの拒まず去るもの追わずのスタイルで弱いものイジメをするのをよしとしないため例え標的が自分でなくても見つけたら潰そうと考えていた。


入学式で近くにいる女の子と喋りつつスグには仲良くなろうとは思わない。仮面を被っているかも知れない、自分を悪い道に導こうとしているかも知れないと考えると人間関係は慎重に程よい関係性を保とう。


この人は大丈夫だと信頼出来た段階で少しずつ心を開いていく。三島蒼唯がとういう人なのか話すようにしていた。


中学校時代にテレビで魅了された弓道は高校に入っても続けている。ズブの素人だった所から少しずつ段階を踏んでいき個人戦で成績を残して静岡県内では知らない人はいない所まで登りつめていた。


高校生になったらアルバイトをしたい気持ちもあったが如何いかんせん弓道が忙しくてそれどころではない。全国のライバルたちと勝負してみたい、自分がどこまで通用するのか気になっていた。


ある大会で帰国子女で蒼唯が行こうとしていた島田女子高校弓道部で活躍をしている子がいた。その子の名前は森舞莉矢もりまりやで左手から放たれる矢は的の中心に集まっていた。


野球やサッカーのようにメジャースポーツではないため、同じ大会で弓道部と弓道クラブが当たることも珍しくない。静岡県内の弓道を牽引するのは三島蒼唯。突然来たよそ者にその座を譲る気持ちは全くなかった。


もし蒼唯が島田女子高校弓道部にいたら右の三島、左の森としてチームを引っ張っていたのかなと妄想をしていた。それが実現しなかった以上ライバルとして君臨することに変わりはない。


テレビ番組で芸能人との弓道部対決で高校生代表として三島蒼唯、森舞莉矢の2人が選ばれて意外な形で初顔合わせになることになった。


実力があるのにも関わらず謙虚で蒼唯ちゃんのようになりたい、静岡県内にスゴい子がいるっていうのはアメリカにまで伝わっているよ。仲良くしてねとフランクでいた。


ハンデがありつつも圧巻の勝利で改めてライバルになりうる森舞莉矢ちゃんと対決をしたいなと熱望をしており、連絡先を交換してそのまま近くのカフェに行って仲良くなる。


最大の味方、最大のライバル

初対面を果たした三島蒼唯と森舞莉矢。この日を境に練習試合で相対することが増えてどちらかに優劣付くことはなく、蒼唯が勝つこともあれば舞莉矢が勝つこともあり、対戦成績は互角でお互いにモヤモヤしていた。


ここまで自分を追いつめるのは舞莉矢ちゃんが初めてと語る蒼唯、常に蒼唯の背中を追いつけ追い越せの気持ちでいる舞莉矢とそれぞれ思っていることは違っていた。決着は公式戦で。だが中々対戦する機会が訪れない。


弓道の大会はリーグ戦ではなくトーナメント戦。負ければ終わりであり、過酷な中を勝ち上がって頂点を目指す形だからこそ個人戦で負ければ自分のせい、団体戦では周りに迷惑をかけないようにと気を遣う。


難しい半面、団体戦で自分の打った矢で勝ち進めたり優勝出来ると思うと嬉しいしやりがいがあるなと感じている。


個人戦で決勝まで進めれば三島蒼唯対森舞莉矢の対決が実現することになっていたが2人とも決勝進出とはならず、初の直接対決とはならなかった。


団体戦で島田女子高校対掛川弓道クラブが決勝で当たる。三島蒼唯、森舞莉矢ともに主将として自分たちの番が来るまで神経を研ぎ澄ませていたが島田女子高校のストレート勝ちでここでもまた直接対決とはならなかった。


負けた要因を振り返って舞莉矢ちゃんに勝てれば個人としても団体戦でも制することが出来ると思い込みがあった。練習試合をしているのにも関わらず何をしているのかと同じ団体戦に出ていたメンバーに申し訳なかった。


秋季大会の県大会、個人戦で初めて三島蒼唯対森舞莉矢の対決が実現する。両者譲らない攻防戦で僅差で舞莉矢に敗れる。悔しい気持ちともっとレベルアップしなければ勝てないと図星に当てる確率を上げようと精進する。


試合が終われば友達として勝利を称える。県代表として思いっきり戦ってきて欲しい、現地で応援していると告げて電車に乗ると勝手に涙が溢れてくる。負けていい試合などない、それも仲のいい友達でありライバルに負けたからこそ次こそは勝ちたいとより感じていた。


舞莉矢ちゃんはホント凄かったな。これだけ夢中になって弓道をやっていたのにどうして辞めちゃったのか。もっと続けられない原因は何だったか覚えていない。

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