俺を振った初恋の美少女と許嫁になって同棲が始まった件。

水間ノボル🐳@書籍化決定!

1章 俺を振った美少女と同棲

第1話 俺を振った初恋の美少女と許嫁に

「ごめんなさい。日野くんとは付き合えない」


夕暮れの教室。

告白にはおあつらえ向きの場所だ。

――今、3年越しの俺の初恋が、あえなく撃沈した。


「ごめん……実は私、もう心に決めた人がいるの」

「そっか……好きな人がいるんだ」

「だから、日野くんとはお友達でいたいな」

「……うん。ありがとう。友達でいよう」

「じゃ、また明日ね」


俺は高校で、月島結那≪つきしまゆいな≫と運命的な再会を果たした。

だが、運命だと思っていたのは俺だけだったらしい。

心の底では、撃沈することは薄々わかっていた。


高校入学の4月。それは青春の始まり。

高校デビューを果たして、昔の自分とおさらばするチャンス。

だから、俺でも「いける」と浮かれてしまった。


入学早々、月島さんは学校一のイケメンから告白された。でも月島さんは、女子なら誰でも付き合いたいと思う男子を振った。

学校一のイケメンが振られても、かわいい月島さんと付き合いたいと思う無謀な男子は後が絶たず、49人もの男子が突撃した。無事に全員が撃沈。いつしか月島さんには「撃墜女王」と呼ばれるように。

そして俺は、50人目の犠牲者というわけだ。


「おうおう!無事に振られたな!」


同じクラスの沖悠真おきゆうまが、ニヤニヤしながら影から出てきた。

悠真とは俺の小学校からの悪友で、中学でもずっと一緒だった。

悠真は俺と違って女子にモテる。高校入学早々、3股をかけて女子から「カス悠真」と呼ばれている。


「おいおい。見てたのかよ……」

「お前の討ち死を見届けないとな」

「討ち死にって……お前なあ」


俺が今日、月島さんに告白することは、悠真にだけは言っていた。

まさか着いてきてるとは思わなかったぜ……


「お前のことが心配で心配で仕方なかった」

「オカンかよ……」


俺はやれやれと肩をすくめた。

でも、悠真が俺を心配してくれていたのは嬉しかった。


「まあ……高校生活は始まったばかりだ。これから新しい出会いあるさ」


悠真は、ポンポンと俺の肩を叩いた。


「ありがとう。お前の言うとおりだよ」


考えようによっては、俺は振られたことで初恋の呪いから解放されたとも言える。

どうせ最初から叶わない恋だったと思う。

いつまでも何もせずにいるより、ちゃんと振られたことで、俺は前に進めたんだ。

――今の俺は、そう思うしかなかった。


「なあ、悠真。帰りにゲーセン行こぜ!新しいのいろいろ入ったらしいからさ!」

「ゲーセンってお前……今時、誰が行くんだよ」


悠真は呆れた顔をした。


「高校生の俺たちが行かなきゃ、ゲーセンなくなっちまうだろ。社会貢献だよ」

「たまには行ってもいいか……」

「早く行こうぜ!」


俺は気乗りしない悠真の肩を抱いて、教室を出て行った。


「俺が愛してるのは、悠真、お前だけだぜ」

「きしょいわ!俺は女の子と行きたいぜ……」


◇◇◇


夜、俺は家で麻婆豆腐を作っていた。

高校入学後、俺は一人暮らしを始めた。

田舎から都会の高校へ通うことになったから、一人暮らしをさせてもらっている。

最初は苦労したが、2ヶ月経ってだいぶ慣れてきた。


俺が好きな麻婆豆腐をたくさん作った。

好きなもんを食いまくって、失恋を忘れよう。


麻婆豆腐をごはんにぶっかけた時、スマホが鳴った。

——父さんからだ。


《久しぶりだな。春斗。元気にやってるか?》

《なんとかね》

《実はお前に、大事な話があるんだ》


かすかにだけど、父さんの声が震えているように聞こえた。

どうやら言いにくい話みたいだ。


《……お前に、許嫁いいなずけができた》

《は……?》


許嫁――将来、結婚を約束した相手、婚約者、フィアンセ。

親同士が子どもの結婚を、約束することだ。

そんな、大昔の日本じゃあるまいし……


《……冗談だろ?》

《それが冗談じゃないんだ。お前には婚約者ができたんだ》

《聞きたいことは山ほどあるが……まず教えてくれ。相手は誰なんだ?》

《お前の相手は……月島結那つきしまゆいなさんだ》

《え……》


――ぼとっ!


俺はスマホを落とした。


《おーい!どうした?春斗!》













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