おにぎりくん

ピザー

第1話 タヌキさん

 ぐぅ〜とタヌキさんのお腹が鳴った。

「お腹空いたなぁ〜」

タヌキさんはそう言った後、力が出なくなり歩けなくなりました。

「どうしたんかな? お腹減ってるんかな? 僕はおにぎり君やからな」

そんなタヌキさんに話しかける者が現れました。

10歳ぐらいの人間に見える男の子です。

「おにぎり君、タヌキさんにおにぎりあげるからな」

おにぎり君はタヌキさんに風呂敷から出したおにぎりをあげました。

ぱくぱくぱく。

「美味しい美味しい。おにぎり君ありがとう」

「どういたしましてやからな。おにぎり君はおにぎり美味しいって言われるのが1番嬉しいからな」

「おにぎり君、お礼がしたいんだ。タヌキの里に来なよ。おいらはタヌキのゴロウって言うんだ」

タヌキのゴロウさんはおにぎり君をタヌキの里に誘いました。

「僕、嫌われ者やからな。おにぎり配る以外しないと決めてるからな」

おにぎり君は悲しそうに言いました。

「おにぎり配るいい人が嫌われ者なわけないじゃないか」

タヌキのゴロウさんは言いました。

「そんなことないからな。おにぎり君は自分が嫌われるの知ってるからな。英語で言えば、それはdestiny。そう誰かに教わったからな。じゃあ、タヌキさんさようなら。もう歩けるかな?」

タヌキさんは2、3歩進んでみました。

「うん、歩けそうだよ。でもdestinyって、運命ってこと? そんな運命なんかあるわけないよ」

「ううん、あるからな。おにぎり君は知ってるからな。また美味しいおにぎり作れた時は食べてくれるかな? また会えたら」

「もちろんだよ」

タヌキのゴロウさんは答えました。

「ありがとう」

その言葉だけが残り、タヌキのゴロウさんの目の前からおにぎり君は居なくなりました。

ぐぅ〜とお腹は鳴りません。

確かにお腹は膨れました。

おにぎりを食べました。

確かにおにぎり君はさっきここに居ました。

「おにぎり君、それはないよ」

タヌキのゴロウさんは寂しくなりました。


おにぎり君はまた時空を渡りました。

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