卍元ピアニストだけどカッコいいのでギターやります卍
はるかうみ
第1話 プロローグ
ああ、楽しい。
音が踊って見える。
……いやまあ、実際踊っているのは私の指なんだけどね。
夜想曲第2番変ホ長調 作品9の2。
偉大なるロマン派、フレデリック・ショパン作の名曲だ。
奏でられる音は、一見穏やかに聞こえる。
だが、この曲が持つ背景は永い弾圧による憤怒と敗戦による悲嘆。
音に込める想いは、どうしよもなく無力な自分への落胆と、宙ぶらりんになったまま薄くなっていく虚しい怒り。
二つの想いが交じるこの曲を私なりに解釈し、砂糖菓子を作るように繊細かつ丁寧に音を奏でていくと、徐々に周囲の全てが私の音に支配されていくような万能感が湧き出てくる。
やがて、長いようで短い演奏が終わりを迎えると、数瞬の無音の後にぽつぽつと何処かから拍手の音が聞こえ始め、それはゲリラ豪雨のように一瞬で万雷の賞賛に姿を変える。
「素晴らしい!」
「やはり、君は天才だ!」
最早飽きるほど聞いた賛辞に向かってゆっくりと礼を返すと、さっさと舞台袖に戻る。
さてと——
「あー、疲れた……。さっさと帰ってギターの練習したい」
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