おわるぜっ
アレクは執務室で通信をしている。
「このままでは倒産よっ」
アレクの母であり、ガゼフ第一王妃がモニター越しに言った。
実家はベンツアー重工だ。
ベンツアー重工は、東和とニャンドロスを戦わせて兵器を売ってもうけていた。
「母上、もう終わりにしましょう、東和とニャンドロスの血を流し過ぎました」
「それに、芋洗い坂に手を出したでしょう」
芋洗い坂総合土建会社。
アメリゴの鉄鋼王、”アイアンフェラー”財団の娘が、当時中堅ぐらいの会社だった芋洗い坂の若社長である、”芋洗い坂、
押しかけ女房したのは平民の間では有名な話。
その結果、芋洗い坂が一流の会社に。
後にうまれたのがマリアだ。
「鉄鋼を止められたのでしょう」
「くっ、ううう」
第一王妃がモニターの先で崩れ落ちた。
その後、主戦派であった、アウディー侯爵とバイエルン伯爵は横領や背任、さらに、東和の軍事情報をニャンドロスに流していた罪で、極寒の鉱山惑星に強制労働の終身刑になった。
さらに、二人の令息も、東和やニャンドロスの女性に対する暴行で同じ惑星に送られる。
第一王妃は王家から離縁を言い渡された。
今回の件により、東和はガゼフから莫大な賠償金を得て独立することになる。
第二王妃も王家の有責で離縁され、シャルロッテと一緒に東和に帰る。
アレクは途中から、シャルロッテ姫の暗殺や攻撃をやめるように命令していたために刑は軽く、王子の身分をはく奪、謹慎処分を受けていた。
◆
ザアアア
通信を終えたモニターがノイズを出している。
モニターの
チャリッ
アレクは、小さな音を出して喉元からネックレスを取り出す。
その先には中に液体の入った塁滴状の小さなガラスのペンダントトップ。
アレクが口元に運ぶ。
「だめですっ、アレクさまっ」
自害しようとする主人を止める為、少年侍従が飛び出してきた。
同時に、黒髪のメイドが暗闇から音もなく現れた。
メイドがアレクのガラスの入れ物を持った手をそっと握る。
その日、アレクと少年侍従、エリザベスと呼ばれた黒髪のメイドがガゼフから姿を消した。
◆
少年がふすまが少し開いて中を見ている。
畳。
その先には、紋付袴を着た鮮やかな金髪の青年と角隠しをした黒髪の女性が並んで座っていた。
「な~に、のぞいてんのよっ」
パアン
「ひゃあっ」
後ろからふすまを開かれ、少年が部屋に転がりこんだ。
少年と同じ年くらいの黒髪の少女が、腰に手をあてて立っている。
「もうっ、こそこそしないっ、今日は姉上の祝言の日よっ」
少年をビシッと指を差しながら言った。
「ふふっ」
鮮やかな金髪の青年が笑う。
角隠しの女性が、くすくすと肩をふるわせた。
ここは、東和の名もない辺境惑星。
”風魔の里”がある、ということをのぞいては。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます