いくぜっ

 ガゼフ王国は、東西二つに分かれている。

 西の、”旧ガゼフ領”と、東の、”東和領”である。

 昔、”ガゼフ王国”と、”東和皇国”がある超大国相手に協力して戦争した。

 その後、東和皇国がガゼフ王国に吸収合併する形で一つになった。



 ”ニャンドロス神聖王国”は東和領の半ばまで進攻。

 サカイ達の活躍で押しかえした所だ。



「というわけで、指定された東和領まで行くわよ」

 

 東和出身の第二王妃を母に持つ、”シャルロッテ第二王女”。

 彼女が益荒男ますらおを買いたいとのことで、機体を見せに行くのだ。

 また、サカイと知り合いらしく会いたいとの希望である。


「非戦派の王女と戦争を止めた英雄……ね」

 ――交戦派はどう思うのかしら?

 マリアは、チラリとサカイを見た。



「うむ、ダークマター推進機関起動」

 海野九三艦長だ。

 ダイブワープして王女の指定した場所に行くつもりである。

「境界面活性化を確認」

 レーダー席のマリアだ。

 

 宇宙を満たす謎の物質、”ダークマター”。

 これには三次元(海上)と四次元(海中)があった。

 ダイブワープは、四次元(海中)に潜り、時間をさかのぼりながら距離だけ移動する、タイムマシン型ワープ航法である。


「ダイブワープせよ」


「ダイブ、ダイブ、ダイブ」


 操縦席のアーノルドがレバーを操作。

 宇宙戦艦、”やまとん”の周りが波打つように銀色に光る。

 ゆっくりと艦体が、四次元(海中)に沈んで行った。

 ダイブスペースは、海の中のような淡い藍色だ。

 所々銀色の波を出しながら進む。

 

 もう少しで目標地点だ。


 ピーン、ピーン

 ピピピピピ


「艦長、アクティブソナーに感」

「前方に巨大な物体あり」

「あれは……」


 尻尾の先と手足がヒレになったワニ。

 巨大なモササウルスが泳いでいる。


「識別せよ」


「出ましたっ、ニャンドロスの移動要塞、モササウルスクラスと判明」

 ――宇宙適応型巨大海性爬虫類のモササウルスを使役したニャンドロスの生体兵器っ


「識別コードは出ているな」

 やまとんの所属は傭兵マークスギルドだ。

 いきなり攻撃はしてこないはず。


「横をすり抜けます」

 

 やまとんが巨大な牙の生えた口の横を通る。



 レイカとサカイは食堂でお茶をしていた。


「なっ、これヮ」

 レイカが驚きの声をあげた。

 食堂の窓をうめつくすモササウルスの巨体。


「……まだこんなところにモササウルスクラスが……」

 サカイだ。

 海上三次元は東和領である。

 ほんの少し前までこれと戦っていたのだ。


 モササウルスの背中には、複数の鳥居とその先に大きな神社。

 その周りを和風な城壁が囲む。


「……ニャンドロスは猫妖精ケットシーの国ですヮネ?」

「そうだ、優秀なフィッシュテイマーで本殿でモササウルスを操るんだ」


 敵の要塞がまだこんなところにいる。

 停戦はしたが、まだまだ和平には程遠いと実感する二人であった。

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