第二章、ガゼフ内乱

しらせるぜっ

 惑星、”ベーリン”。

 ガゼフ王国の主都がある星である。

 ガゼフ王宮の第二王女の執務室だ。

 通信用のモニターである。


「シャルロッテ様。 サカイ様を見つけました」

 マール商会の商人がモニターに映っていた。


「そうか、サカイ師匠は元気そうカヤ」

 金髪碧眼、ドレス姿の女性が答える。

 年は十六くらいか。


「今サカイ様は、”芋洗坂”にいます」

「それで、面白そうな機体が……」


「うむうむ。 コンペの動画を見たぞ、確か、ますらおとかいうのじゃロ」


「それから、襲ってきた海賊は第一王子の手のものかと」


「まだ、戦争がし足りないのか……」


 王子の母である第一王妃の実家は、”西方”出身の、”ベンツアー重工”。 

 巡洋艦コルベットなどの兵器を作っており、戦争が続くともうかる。

 さらにシャルロッテの母は、”東和”出身である。


 ニャンドロスは、東から攻めて来た。

 ”西方”までは攻めて来ていない。


 ――これ以上、”東和”の地を荒らさせてなるものか

 シャルロッテ王女は、手を強く握りしめた。



 第一王子、”アレク”の執務室。

 通信用モニターには、マール商会を襲った海賊が映っている。


「ちっ、失敗したのか」

 青い眼と輝くようなきれいな金髪。

 十代後半の美青年が醜く顔をゆがめた。


「へえ、大砲をつけた輸送船と変な機体に邪魔されました」

「これでげす」

 やまとんと益荒男ますらおの映像が映る。


「これは、サカイか……」

 ――たしか、”芋洗坂”にいたはず


 ニャンドロスと今停戦中だ。

 再び開戦するには、非戦派の第二王女と英雄のサカイが邪魔である。

 サカイの手柄は奪ったが、当然現場の人間はサカイが英雄であることを知っている。


「捕まった仲間の解放を頼んます」

「……わかった、ひきつづき王女の妨害をしろ」

「へえ」

 通信モニターが消えた。   


「汚れた金髪め」

 自身の輝くような金髪を手ではらう。

 シャルロッテ王女の母親である第二王妃は、黒髪黒い目の、”東和”出身である。

 彼女の金髪は少し暗い色をしていた。 


「そろそろ排除するか……」

「我々のような優れた、”西方人”に、”東和人”も獣人である、”ニャンドロス”も支配されれば良いのだ……」

 アレク第一王子が小さくつぶやいた。


 非戦派で、東和人を母に持つ第二王女、シャルロッテ。

 攻戦派で、西方人至上主義者の第一王子、アレク。


 サカイは、”東和”の辺境惑星出身である。



「あら~~、すごいわよっ」

「?」

 マリアの声に怪訝な表情をするサクラギ。

 マリアが枕元の携帯を見ていた。


「ガゼフの王女様が、益荒男ますらおを買いたいって」

「ガゼフっていったら、サカイ君の祖国だね」

「そうよ~」

「ふふ」

 マリアが、ベットの上のサクラギを押し倒す。

「んっ」

 豊かな胸をサクラギに押し当てながらキスをした。


 ――これは何かがおこりそうだなあ


 サクラギは、マリアの舌に自分の舌を絡めながらチラリと考えた。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る