たすけるぜっ

 新しくつけられたマニュピレーターで銃器の試射をした、益荒男ますらお

 射撃場のある辺境の惑星から帰路に着いていた。

 辺境の航路を益荒男ますらおの母艦である宇宙戦艦、”やまとん”が行く。


 ビイイ、ビイイ、ビイイ


 艦の前方にある、”やまとん”の平型艦橋内に警報音が鳴り響いた。


 真ん中にある艦長席には白いひげをたくわえた、海野九三艦長。

 その斜め前には、丸い透明の球形状の、”コスモレーダー”。

 黒縁眼鏡に金髪の女性が座っていた。


「艦長、救難信号をキャッチしました」

 女性が言う。

「マリア君、音声に出してくれ」

 艦長だ。


 ザザザ


「メーデー、メーデー、武装した船に襲われている」

「たすけてくれえ」

「海賊だあ」


「艦長、宇宙海賊に襲われているようです」

 体にぴったりとした宇宙服姿のマリアが答えた。


 ワープの時は何故か下着姿になるぞ。

 ただ、今の主流は宇宙を満たしている謎の物質、”ダークマター”の四次元面に沈む、”ダイブワープ”。

 波動エンジンを使った空間歪曲型のワープではないので、残念ながら下着姿は見れないのだ。

 某宇宙人(ユキメ族)がこれを再現しようと躍起になっている様である。 


「距離と方位を出してくれ」

 艦橋の天井に斜めにつけられているメインモニターに映し出された。

 丸い光の点が三つ。 

 一つの点を後の二つの点が追いかけているようだ。


「艦種出します」

 痩せぎすの男性の砲術長が、宇宙戦艦大和型砲台につけられている測距機(左右に突き出た大きな望遠鏡)で確認する。

「データ出ました」

「ガゼフ王国の、”ニール商会”所属の商船と」

「所属不明の戦闘艦……ガゼフのアウグスタ級巡洋艦コルベット2艦です」


「ご苦労、サクラギ君」

――”やまとん”は傭兵マークス入学式登録された戦艦だ

――海賊退治も依頼に入る

 九三艦長が少し考えた後、

「アーノルド君、商船に向かって全速全進」


 ズドオオオン


 操舵席に座ったガチムキの男性がレバーを操作。

 艦の左右につけられたのメインエンジンを吹かしながら加速した。


 通信士、マリア。

 砲術長、サクラギ。

 操舵長、アーノルド。

 やまとんは人手不足である。


 

 サカイとレイカは、益荒男ますらおのコックピットで戦闘待機中である。


「ふむ、ガゼフのアウグスタ級巡洋艦コルベット……か」 

 ――少し古いがまだ現役で使われている艦だ

 ――海賊は普通、もっと古い払い下げ戦艦を使うのだが


傭兵マークスに電磁スタン弾の使用許可を出しますヮ」

 レイカが言う。

 その名の通り強力な電気でスタンさせるものだ。

 強力な武装の為、傭兵マークスにより使用が制限されている。

 

「武装は、”メドヴェーチ《熊》・ウビーチ《殺し》”対艦対物ライフルとSA80アサルトライフルですノ」


 SA80アサルトライフルは、イギ〇スが誇る超欠陥銃を大きくしたものだ。

 プルバップ方式(←マガジンがトリガーより後ろにある)。


 コッキングレバーに空薬莢が当たり作動不良(ジャム)を起こす。  

 マガジンのばねが弱い。

 勝手にマガジンが自重で落下する。 


 等が忠実に再現されている。


「装填は28発までですノ」


「…………」

 ――なぜこの二丁……?

 サカイが何とも言えない顔をした。

 ちなみに、サクラギとレイカの趣味である。



 商船と海賊船に近づいた宇宙戦艦やまとん。


「所属不明艦より入電」

 マリアだ。

「繋いでくれ」

 九三艦長が答える。

 

 ブツッ

 

 モニターに海賊船のブリッジが映し出された。

 ガラの悪そうな男性が映し出される。


「そこの輸送艦もどきい」

 やまとんは重機輸送船、通称、”タコ部屋”を改造したもの。

「邪魔をするんじゃねえぞおって」

「おお、べっぴんさんを乗せてんじゃねえか」

 マリアを見ながら鼻の下をのばした。 


「むっ」

 サクラギが黙って、48サンチ陽電子衝撃砲ショックカノンの照準を海賊船に合わせた。


 ウイイイン


 艦の周りを輪っかのように走る多目的ウエポンラッチ。

 そこに着けられた三連装の大砲が海賊船を指向。


「マリア君、”馬鹿め”と打電してくれたまえ」

「”馬鹿め”だ」

 言っちゃえ、九三艦長っ。


「はい」

 打電した後、通信を切った。


「全艦、戦闘準備っ」

「前進を維持」

「戦闘機動にそなえよっ」

「片一方の艦をすぐに落とせるな」

 九三艦長がサクラギに言った。


「お容易い御用ですっ」

 サクラギは大砲が大好きだ。

 憧れの大和型大砲を撃てるため自然と声が弾む。

 じつは、48サンチ陽電子衝撃砲ショックカノンはガ〇ラスの艦艇を一撃で落とせるほどの高火力なのだ。


「エンジンブロックを狙え」

 海賊は賞金首である。

 生きたままの方が賞金は高い。

「発砲と同時に、益荒男ますらお出撃っ」


 バキュウウウウ


 独特の発射音と共に砲塔から、白い光が飛び出しよじれる。


益荒男ますらお、レイカ、サカイ、出ます」

 シグナルが赤から青へ。


 ズドオオオン


 蒸気圧式のカタパルト(←電磁カタパルトは軍事機密)が白い煙を出しながら、巨大な金属の塊を撃ち出した。


 背中に紅いバーニア炎を吹かせながら、益荒男ますらおが宇宙を駆ける。






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