第82話 欠陥奴隷は魔性を獲得する
強化した触手は先端に口と牙が増えた。
涎を垂らしながら甲高い鳴き声を上げている。
こいつを操って相手に喰らい付かせることも可能らしい。
さらに【貪欲な強奪者】を発動すれば力も吸収できる。
触手は俺の肉体の一部で、傷付くと痛みを感じた。
ただし再生能力も共有されているため、破壊された時の苦痛さえ我慢すれば、ほぼ無制限に使用可能だ。
どれだけ切り裂かれようと新たなに生やせる。
攻撃能力としてはかなり便利だろう。
(だけど、少し物足りないな)
俺は触手を操りながら考える。
別にこのままでも活躍するスキルだが、もう少し改造できるような気がした。
何度もスキルを複合させてきた経験から、そういった感覚が鍛えられているのかもしれない。
俺はその感覚に従って操作する。
>スキル【炎角】【毒牙】【狂戦士の魂】【骨鉄刃】【紅岩殻鱗】【飛翼】【魔性】【魔王の兆し】【暴食触手】を複合
>スキル【墜貌の怪異】を取得
何やら禍々しい能力ができてしまった。
見た目が変わる系統のスキルを集めてみたのだが、想像以上の出来になったようだ。
俺は少し躊躇いながらも有効化する。
すぐに全身が変貌を始めた。
底無しの力が沸き上がってくると同時に、肌が黒く変色する。
皮膚が脈打ち、滲み出すように暗紅色の甲殻ができた。
よく見ると鱗のような物も混ざっている。
そんな混合物の鎧が、軋みながら全身を覆い尽くしていく。
戸惑っているうちに変化が終了した。
「いい感じになってるわよー。確かめてみる?」
サリアが水の鏡を生み出す。
そこに映り込んだ俺は暗紅色の怪物と化していた。
全身がごつごつとした甲殻と鱗に覆われている。
隙間からは、赤い光が血管のように漏れ出していた。
額には燃える角があり、両手からは骨刃が爪のように伸びる。
背中で動くのは鳥のような翼で、振り向くと数本の触手が尻尾みたいに蠢いていた。
(酷い姿だな)
俺は驚きと呆れを覚える。
思ったより醜い状態であった。
もっとも、戦闘能力は通常時とは比べ物にならないほど向上している。
力が際限なく溢れ出してくるし、実際は見た目以上の変化があるのだろう。
詳細を詳しく調べていくと、いくつかのことが分かった。
このスキルは【屍越の英雄】と同様、さらにスキルを合わせても名称が変わらないタイプらしい。
今はすべての特徴が全開になっているが、調節次第で一部のスキル効果だけを発現できる。
各特徴の発現する位置も自由に変えられる。
その辺りの柔軟性は兼ね備えているようだった。
この姿だと第三者には見せにくいが、扱い次第ではその心配もなさそうである。
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