第81話 欠陥奴隷は人外の領域へ踏み込む

(次に必要なスキルは何だろう)


 俺は腕組みをして考え込む。

 魔族との死闘を振り返り、足りなかった要素を頭の中で羅列した。

 そして答えの一つに辿り着く。



>スキル【魔力回復】【強奪】【横暴】【魔力吸収】【瘴気吸収】を複合

>スキル【貪欲な強奪者】を取得



 魔族との戦いで不味かったのは魔力の消耗だ。

 様々なスキルを同時に使う関係上、どうしても減りが早い。


 加えて素の魔力量も皆無で、そこもスキルで補うしかなかった。

 だから戦闘中でも補強できる手段が欲しかった。


 【貪欲な強奪者】は接触した生物や物体から魔力や瘴気を抜き取る効果らしい。

 それらを自分に力に変換できるのだ。


 試しにサリアと手を繋いだ状態で発動してみると、彼女の魔力を大量に取り込むことができた。

 これはとても便利だ。

 さほど手間ではないし、上手くやれば敵の弱体化にも繋げられる。

 戦況を覆すのに役立つだろう。


 ただし、大量の魔力を失ったはずのサリアは平然としていた。

 常人なら失神してもおかしくないのだが、彼女には通用しないようだ。

 サリア曰く、この程度の消耗なんて誤差の範囲だという。

 全体の魔力量からすると微々たるものなのだろう。


(やっぱり魔女だよなぁ……)


 俺は半ば呆れながらサリアの魔力を感知する。

 あまりにも途方がないので、量の測定は不可能だった。

 進化の最中だったあの魔族すら凌駕している。


 一体、何をすればこのような状態になるのか。

 それとなく訊いてみたいが、サリアはきっと教えてくれない。

 或いは冗談を言って誤魔化してしまうはずだ。

 重要なことをあえて伏せたり、自分の素性について触れないのは彼女の癖である。


 魔力の回復手段を得た俺は、次に魔族から得たスキルを確認した。

 既に複合の素材にしたものも、まだいくつか残っている。

 そのうちの一つである【瘴気触手】を使ってみた。


 すると、両腕から突如として触手が生えてきた。

 魔族が俺の拘束に使ってきたのとまるきり同じである。


「う、おわっ!?」


 気持ち悪い光景に思わず声を上げるが、すぐに落ち着く。

 計六本の触手は蠢くばかりで、それ以上の動きは起こさない。


(……右に動け)


 俺が念じてみると、触手はその通りに傾いた。

 伸ばしたいと考えれば、皮膚から這い出して長くなる。


 どうやら俺の命令に従って動いてくれるらしい。

 これはかなり使えそうだった。

 見た目の気持ち悪さに目をつむれば、いくらでも活用法が思い付く。

 このままでも十分だが、スキル数の圧縮も兼ねて他の能力を合わせてみた。



>スキル【吸血】【大食い】【溶解液】【噛み砕き】【捕食】【瘴気触手】を複合

>スキル【暴食触手】を取得

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