第52話 欠陥奴隷は英雄を知る
他の冒険者と合流した俺達は、馬車を降りてついていく。
周囲の冒険者達は当然ながらざわついていた。
もちろん俺ではなくサリアを見ているのだ。
やはり彼女は有名らしい。
この中には、他の街を活動拠点とする冒険者だっているはずだが、容姿が知れ渡っているのだろう。
明らかに距離を置かれていた。
無論、尊敬や憧れといった感情はなさそうだが。
俺はそんなサリアの隣を歩く。
ここから魔族の拠点まで、まだ距離があるそうだ。
馬車の時と同様、会話で時間を潰すことにした。
「俺達は戦闘でどういう役割になるんだろうな」
「遊撃部隊になるんじゃない? ひたすら魔物を蹴散らすことになると思うわよ」
「簡単でありがたいな」
俺には難しいことはよく分からない。
いくつものスキルを掛け合わせて作った【大軍師の独壇場】を使えば、なんとなく理解できる気がするも、素の知力に自信がない。
できるだけ単純な命令の方が嬉しいことには違いなかった。
魔物を倒すだけなら分かりやすい。
これまでに手に入れたスキルを存分に活かして戦うだけだ。
移動の最中、俺はサリアから説明を受ける。
主な話題は今回の戦いに参加する英雄についてだ。
標的の魔族に抵抗する主戦力である。
俺達の位置からは見えないが、軍隊の先頭付近にいるらしい。
感知系スキルである【看破眼】を使うと、確かに強そうな気配が三つほど発見できた。
その反応が英雄達だろう。
彼らの中のリーダー格は"霧葬剣"のニアである。
魔術の剣の使い手で、霧に変えた刃を拡散させて相手を切り裂くらしい。
変幻自在の剣術はかなり有名だという。
参謀役なのが"血杖"のウィズだ。
呪われた杖を扱う女魔術師で、定期的に血を吸わせなければ杖に殺されるらしい。
ただし、血を吸わせ続けると絶大な力を提供されるそうで、そのような武器を使いこなす英雄だそうだ。
戦闘では血を操る術に特化しており、能力の特性的に大規模な戦場ほど真価を発揮とのことだった。
苦労人と言われるのが"鉄壁"のダンである。
青い鎧と盾が特徴の大男で、体内の魔力が全身を覆う特異体質を持っている。
天然の防御魔術であるこれが異様に頑丈らしい。
その能力を鎧と盾にも浸透させて、決して傷付かない前衛として守りの要となるそうだ。
ハルバードによる攻撃も地味だが侮れないとの噂で、戦士の憧れらしかった。
彼ら全員が二級の冒険者であった。
上は一級と特級のみで、ほぼ最上級と言えるだろう。
努力では到達できない領域だ。
十分に英雄と呼ばれる存在に違いない。
現状、俺が目指すべき三人であった。
(たとえ魔族が相手だろうと、冒険者の補助なんて不要なんじゃないか?)
英雄達はそれぞれが特殊能力を持つ。
いくら強靭な魔族でも、まず敵わないと思う。
きっと高レベルで良いスキルをたくさん取得しているのだろう。
言うなればサリアみたいな人物が三人いるようなものだ。
きっと俺の出る幕なんてないはずだ。
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