第53話 欠陥奴隷は魔術を習う
俺達は魔族の拠点へと順調に接近していった。
そして、ある程度のところまで進むと停止する。
ここから先は未探索地域となっていて危険らしい。
そのため先遣隊が偵察へ向かうことになった。
罠の解除や潜伏する魔物の始末、相手の本隊の陣営や構成が把握までできれば上々とのころだった。
隠密能力に優れた兵士と冒険者が偵察に向かう一方、俺は様子見することに決めた。
ギルドマスターから貰った腕輪のおかげでステータスを偽装している。
今の俺は無難なスキルを持つ剣士という設定だ。
だから、ここで名乗り出なくてもいい。
なるべく体力を温存しておくつもりだった。
今後、戦いがどうなるか分からないから、念のために消極的な選択を取ったのである。
サリアも偵察には不参加だった。
彼女なら魔術で隠密行動も可能だが、面倒臭いとのことで断っていた。
それに異を唱えられる者もいない。
だから俺達は静かに待機することになった。
ナイフの手入れをしながら、俺はサリアに質問する。
「俺があの三人を超えるには、何が必要だと思う?」
「うーん、全部かしら。力も素早さも判断力も足りないし、戦闘経験だって負けているわね。あ、でも隠密と再生力ならルイス君が勝っているはずよ」
サリアはあっさりと即答した。
気まぐれに訊いてみたのだが、なかなかに辛辣な意見である。
ただ、下手な誤魔化しがないのでとても参考になった。
彼女の見解は決していい加減ではない。
しっかりと受け止めて意識するべきだろう。
(今の時点で勝っている能力があるだけマシか)
比較対象は英雄なのだ。
むしろ優れている部分が見つかったのは、大いに誇るべきだろう。
少なくとも現状は得意分野ということだ。
死体のスキルを奪うという特性上、得意分野は変わっていくが、今は隠密と再生力を活かす戦いが合っているのではないか。
あまり恰好が付かないものの仕方ない。
少し前までの俺は、最弱の欠陥奴隷だったのだ。
ここからさらに成長して、高みを目指せばいいだろう。
その後、待機時間を利用してサリアから魔術を習うことになった。
奪ってきたスキルに魔術関連のものがあり、これを使わないのは勿体ないと思ったのである。
サリア曰く、魔術の修練には長い年月が必要らしいので、とりあえず初歩の初歩だけ教えてもらうことにした。
幸いにもスキルの補正が利いてくれたのか、最低限ながら使い方を習得することができた。
まだまだ魔術師を名乗れるほどではないものの、何もできなかった段階に比べれば上出来だろう。
専門知識の勉強は気が進まないが、これからしっかりと学んでいこうと思う。
これも英雄になるための一歩だ。
いつまでも低い意識で怠けてばかりではいられない。
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