後編、というかエピローグ
正義、という言葉はどうしても独善性が
正義の実行とは、つまるところ悪人の処刑である。だから俺は死刑制度を支持するし、今後も制度は無くならないだろう。冤罪で処刑される者も居るだろうが、俺に言わせれば、それは誤差の範囲である。俺が優先するのは正義であって、一人一人の人権ではない。
そして、言ってしまうが、
正義とは時代ごとに、アップデートされていくのである。そのアップデートの
時代が進む
俺と奴、つまり『正義の概念』である俺達の戦いに、状況の変化が訪れた。無数の爆撃機のような黒い
「どうだ、もう無益な戦いは止めないか。ただ、お前は俺の正しさを認めれば良いのさ。それで苦痛から逃れられるぞ」
停戦交渉、という訳か。こういう
「それは、それは。その『正しさ』とやらが、どういったものか、俺に教えてくれないか。内容次第では受け入れてもいいぜ」
「何、簡単な事さ。ただ軍事大国の言い分を受け入れて、全面降伏すればいい。『強い者に逆らって申し訳ありませんでした。我々は惨めな奴隷です。どうか好きなだけ私達を征服してください』と言うんだ。小国の側に加担している、正義の概念であるお前が降伏すれば、人間社会で行われている戦争にも終止符が打たれる。そういうもんさ、知ってるだろう?」
「そうだなぁ……」
いかにも熱意の無い
無数の細い糸に寄って編まれた網が、上空にある敵戦力の、更に上に浮かんでいる。
網は俺の体の一部だから、自在に伸縮もさせられる。体積が増えている今の俺は相当な重量で、その重い俺に引きずられた爆撃機もどきは、空中で衝突して誘爆を始めた。そして網は炎の塊を包んで──俺の真上に落ちる。
「ば……馬鹿じゃないのか……結局、大ダメージを受けやがって」
「……上空から攻撃され続けるよりは、マシだろうよ」
体に広がる炎を叩き消しながら、唖然としている奴に俺が言葉を返す。結構なダメージを受けて、横に増やしていた俺の体積は、ずいぶんと減ってしまった。だが、まだ戦闘は可能である。全身が激痛で悲鳴を上げているが、それだけだ。時間さえ掛ければ、また俺の体は復活させられる。
「上空の戦力が居なくなったな。分かってるぜ、お前の戦力にも限りがあるんだろ?」
「減らず口を……」
俺の
俺は不死では無いし、常勝でも無い。正義が負ける事もあるのだ。まあ、俺の敗北は、別の『正義』の勝利なのかも知れないが。
俺と奴の戦いが再開される。年が明けても、この戦いは終わりそうにない。俺が降参すれば、確かに戦死者は減るのだろう。ただ、そこに残るのが地獄で無いと誰が言えようか。俺は自らの正義を信じて、今日も戦場で人を死なせ続ける。それを悪だと言うなら、そうなのだろう。
正義には悪の一面もある。俺が倒れて死んで、結果的に平和が訪れる事も有り得る。それも正義のアップデートなのかも知れない。しかし俺の
正義の戦い 転生新語 @tenseishingo
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