忍者の過去

 なあ、みんな! めちゃくちゃ寒いな!

 寒すぎて風呂の管が凍結したよ!!

 近所の風呂屋は去年潰れたよ!!

 どういう試練なん!!!???

 仕事終わって帰って来て風呂に入れないって!! フライヤーのせいで頭が油臭いのに!?

 あれかな……拙者がみんなのこと振り回したから神様が「お前ちょっと迷走しすぎだから寒いまま寝て」つって罰を与えてきたのかな……。

 そういえば、カイロって水がかかったら燃えるってどっかで見た記憶があるんだけどさ、少量の水だったら弾くんだね!

 ちょっと焦っちゃった。

 みんな! ちょっと昔話、聞いてくれる?

 遺書だからさ、拙者が病む原因になった前の職場の酷さを記しておこうかと思ってさ。

 見ようによっては苦労自慢に見えると思うから、それが嫌だったらここで読むのをやめろ!!!!

 娯楽施設というのは先述した通りだね。

 何が酷かったってさ、客の質の悪さよ。

 格安店の夜って、町中からクズが集まるのよ。

 しかも大抵、酔ってんのよ。出来上がってんのさ。

 マジでまともなやついねえのよ。話が通じねえのよ。

 あれほどの理不尽を毎日のように全身に浴びることはこの先もうないだろうな。

 ん? 理不尽な上司もいるよ! って?

 理不尽な上司は暴力沙汰は起こさないじゃん。

 何回110番通報したかわからないよ。

 あの5、6年で一生分の110番通報したよ。

 アルソックの緊急ボタンも一生分押したわ。

 警察官に防犯カメラの映像を見せているとき、先輩(女性)と笑って話してたら警察官に「こういうこと慣れてるの?」って言われたよ。

 ひとりで来た白バイの警察官が無線で応援要請したときはさすがにビビってたよ。で、めちゃくちゃいっぱい警察官が来た。来すぎ。

 出勤したらすでにパトカーと救急車がいたときもあったな。びっくりしてライト消しちゃったよ。

 自分が救急車で運ばれたこともあるよ!

 他人の血をブラシで洗い流したり、蹴破られたドアを段ボールで塞いだり、トイレに行ってください! って注意したりするなんてことはもうこの先ないだろうな。

 トイレに行ってください! って、人間の大人に対してする注意じゃなくね?

 あとさ、最近の娯楽施設は各所に防犯カメラがあるからそんな問題を起こす不埒な人間はいないと思うけどさ、娯楽施設のカラオケルームをラブホ代わりにしないで。ラブホ行って。

 ていうかラブホまで我慢できねえのか。

 見つかったら罰金で済めばいいほうだからね。

 空き室だからと置いておいた掃除用具を取りに行ってちょうどドアを開けちゃったこっちの身にもなって。

 あとはまあ、拙者も一応、女なんでね。セクハラももちろん普通にありますわな。

 でも先述した通り、Yシャツとインナーとカーディガンでつるぺたまな板に見えるから、そこまで被害は大きくなかったかな。

 別に可愛いわけでもないしね!

 なんか全然似てないのに「女優の〇〇さんに似てるね」って言われてその女優さんの下の名前で呼ばれてたことあるよ。マジで似てねえのよ。視力どうなってんの?

 ちなみに、拙者が夜勤をやめたいと知ってるのに「俺もう夜はできないわww」つって笑ってたのが拙者をちょうどいい暇潰しの相手と思ってる男な。

 拙者が精神に異常を来してるって知ってたよ?

 なんなら、拙者が精神に異常を来してるってのは全従業員が知ってたよ。

 なんか誰から見ても異常だったみたい!

 だから辞めるときすんなり辞めれたよ!

 あ、大丈夫だよ。なんか病気を患って仕事が満足にできなくなったから煙たがられてたとかそういうことはないよ。

 最初に通院し始めたのはまだ働いている最中で、通院しながら1年半くらい働いてたのかな?

 で、先述した通り、1年半休職してた。

 いまの主治医になったタイミングが休職前なのか休職後なのかが本当に思い出せないんだよね。

 あの頃マジでヤバかったから記憶が曖昧なんだよ。

 でも、休職しているあいだ2回くらい「そろそろ働きたいんですけど……」つって「まだ早いです」って叱られたのはいまの主治医だったな。

 ちょっとさ、そういうことがあったのに嫌ってるの? って言われそうでいままで書かなかったんだけどさ、先述した通り、拙者は休職している1年半、両親を頼っていたわけ。

 他に頼れる人がいないからね?

 でね? 仕事を辞めるきっかけは母でね。

 拙者が何かの折に、仕事がしんどいって零したのさ。いつどのタイミングかは忘れたけど。

 母が「辞められないの?」って訊いて来たんで「だって働かないと生活できないし……」的なことを返したのさ。

 そのとき、会社で社保に入れてもらえるくらいは稼いでたからさ、家にもお金入れてたのよ。で、家と食事は親の援助だけど、自分の稼ぎだけで生活していたのさ。

 なんなら一時期、一人暮らししてた!

 解放感がすごかった!!!!

 まあちょっと事情があって出戻りなんだけどね。

 そしたら母が「理由がお金だけなら辞めなさい。あんたひとりを養うくらいの余裕ならある」って。

 え……うちの母、カッコよくない……?

 あれ? そう言われて助かったって記憶で思い出を美化してるだけ?

 ほんとにうちの母……?

 でもまあそんなようなことを言われたのは本当。

 そのとき、張り詰めていたものが一気に決壊して流れるように仕事を辞めた!

 休職しているあいだはほんとに自由に過ごさせてもらったよ。まあなんもできなかったしね。

 ね? 親に恩あるじゃん!

 それとこれとは話が別なんだよ!!!!

 まあ親の話はいいや。親の話は三日月川大橋(仮)のてっぺんに行くって決めたときにまとめて書くよ。

 拙者の苦労自慢、どうだった?

「は? あたしのほうが苦労してるし」って?

 いますぐ辞めろその職場!!!!

 続けててもいいことねえぞ!!!!

 病む前に辞めろ!!!!

 もし病んでも会社は責任取ってくれねえぞ!!!!

 しんどさを被るのはお前だぞ!!!!

 さっさと辞めろ!!!!

 お前のことで責任を取れるのはお前だけだ!!!!

 誇りを持って気高く生きろ――――!!!!

 おっとっと、なんとお節介な忍者だろうか。

 おばさんだから苦労してる人を見るとつい口を挟みたくなるのオホホ。

 いつも「おばさんだから」って書いてるけど自分のことおばさんだと思ってねえからな。

 自覚がないのが一番厄介だよねww って?

 うるせえ!!!! 私がおばさんならお前はおじさんだ!!!!

 まあ実際「酷え職場だったな」とか「散々な目に遭ったぜ」とか思うけど、あんまり苦労したとは思ってないんだよね。

 正直なところ、いまの店の会員情報に「クレーマー」って書かれてたお客さんに「どんなクレームを言って来るんだ? さあ、来いよ!」って構えてて、実際は要望を言われただけで「どこがクレーマーなんだ……?」と思ったときは、いまの店はだいぶ生ぬるいようだ……とは思ったけどね。

 みんな「クレーム」と「要望」はちゃんと聞き分けられるようになってくれよな!!

 ……あれ? 拙者の基準がおかしい?

「要望=クレーム=要望」ってこと?

 お客さんに「ちょっとこれさあ、画面が見づらいんだけど他のないの?」って言われたら、クレーム? 要望?

 拙者は要望だと思うんだけど……。

 日報で上の者に報告はするけど……。

 あれ? クレームってなんかめちゃくちゃ文句を言われることだと思ってたんだけど……。

 要は「画面が見づらいから違うやつに替えて」ってことでしょ? 要望でしょ?

 ちょっといまわかんなすぎて「クレーム」で検索した! クレームっていうのは苦情なんだって!

 じゃあやっぱ要望とは違うね。

 まあ正直、酒飲んで暴れたりしなければ当店基準のクレーマーなんて可愛いもんだよ。

 その精神で働いてたおかげか、他の従業員が苦手意識を持つ気難しいお客さんと打ち解けたんだよね。

 いつも怖い顔でさ、喋り方もちょっとキツい感じがするんだけど、普通に世間話をする仲だよ。

 まあたぶん、従業員の中で拙者が一番にこにこして要望を聞いてたからだと思うんだよね。

 拙者にだけ敬語を使わないって気付いたときはちょっと心を開いてくれてる感じがして嬉しかったな。

 閉店するって話したらしょんぼりしてた。

 常連のお客さんが多くてそんな大変なことはなかったな。お客さん自体が少なかったけどね。

 70代の男性客にパパ活的なものに誘われたのはさすがにちょっと引いたけどな。

 大部屋を閉鎖していたってのもあったかな。

 満室のときに酒を飲みながら来たお客さんがいたんだけどね? 最初は代表で60代くらいのご夫人が来たのさ。

 いま1時間半待ちです~っつって、そのご夫人は諦めて引き下がって行ったのさ。

 そしたら缶チューハイ片手に強面の兄ちゃんと陽キャっぽい若い姉ちゃんが来てさ、まず兄ちゃんが「ほんとにどこも空いてないの~?」って言って来てさ。ほんとにどこも空いてねえよ! ってね。

 んで、姉ちゃんが「そこの大部屋は使えないんですか?」って言うから「現在はご利用いただけません」っつったの。

 そしたらもう『なに言われても引き下がりません』みたいな顔で「なんでですか?」って言うんで正直に「カラオケの機械が入ってません」って答えたら何も言えなくなってて笑ったよ。

 ついでに言うと3年半くらい掃除してない。

 そういう『いつもは来ないお客さん』が来るとちょっとめんどくせえなとは思ってたけどね。

 む、なんだか思い出話になっちゃった。

 おばさん忍者だから話しがなげえんだ。

 もし三日月川大橋(仮)のてっぺんに行かなかったときに読み返して「そういえばそんなことあったな~」って思い出に浸る用ね。

 ちょっとさ、今回は長くなっちゃったからこのまま終わるけど、次回からもしかしたら織部と佐久間さんの物語を付け足すかもしれない。

 なんか織部と佐久間さんのやり取りが恋しくなっちゃったんだよね。

 というか、織部の物語を書かないと拙者も佐久間さんに会えないんだよね!

 何がしたかったんだ! って感じがするけど、拙者、基本的に行き当たりばったりで勢い任せな忍者なんだよね。

 スケジュール管理とかできない忍者だよ。

 仕事できなそー……。

 締め切りは守れるけど「〇日までに〇%進める予定」とかの計算はマジでできない。

 そういう性質の人間だから致し方なし。

 開き直りだよ。

 みんな! あったかくして寝ろよ!!


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