愛人家
考作慎吾
自己紹介
わたしの名前は
元は別の名前だったけど、両親が『バカ』『クズ』『ダメな子』『穀潰し』と呼んでいた為、忘れてしまった。
わたしは両親に虐待を受けていたところ、運良く児童相談所に保護され、孤児院で過ごしていたらパパに拾われた。
「うん、良い名前を付けられた。これで愛子は僕の可愛いペットだ」
そう言ってわたしに微笑んでいるのは、パパこと
側から聞いたら変質者の発言なのだが、これには訳がある。
突然わたしの体は宙を浮き、パパの手の届くところまで近付くと犬のように両手でわしゃわしゃと頭を撫でる。
体はまるで太いロープが胴体を巻き足がブラブラと揺れる。胴体を抱えている見えないロープに触れると、なんとも言えない感触が伝わる。
「……パパ。いくら家にいるからって、本体でわたしを抱えたらダメだよ」
「ああ、ごめんね。愛子が可愛くって、つい」
パパは両手でわたしの胴体を掴んで抱っこする。それと同時に胴体の違和感がなくなった。
「愛子が賢い子で助かるよ。すぐに僕のことを受け入れてくれたんだから」
「そうじゃなかったら、孤児院に戻らないといけないからね。最初は恐かったけど、パパはわたしに酷いことはしないでしょ?」
「もちろん。だって僕は人間を愛しているから、この星に来たんだよ」
……わたしのパパは宇宙人。そして大の人間好きの愛好家だ。
パパの話によると、パパの星では空前の人間ブーム。地球から人間を攫い、飼っているそうだ。感覚的にはペットショップから好きな子を選んで飼っている感覚らしい。
攫われた人間はパパの星の最新技術で簡単な手術により、都合の良い記憶を植え付けられ幸せに暮らしているそうだ。なんでもパパたち宇宙人と人間は次元が違うらしく、人間が負担にならないよう宇宙人側が次元を合わせているようだ。
そしてパパは自分の星で飼うだけでは我慢出来ず、人間に擬態して地球に住むことにしたらしい。
地球に移住し、最初のペットとして選ばれたのが、わたしになる。
以上の話をわたしは孤児院からパパの家までの車内で説明され、パパが宇宙人だという証拠を嫌と思うほど見せられた。
そして住宅街に入り、白い柵に囲まれた大きな赤い屋根の家と広い庭が待ち構えていた。今までとは比べものにならないくらい立派な家に、ペットとはいえ良い暮らしが出来ると思った私はこの状況を受け入れて今に至る。
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