167

 赤い光が、荒涼とした岩場を照らしていた。


 炎が揺れるような光に包まれながら、ジャックとスピカは一歩ずつ進んだ。


 時折、足元の岩がガラガラと崩れそうになったが、支え合う。


 この旅の先に希望があると信じて。


「スピカ、この辺りは岩がもろいけど、もう少し頑張ったら頑丈な岩があるみたいだ。そこで休憩にしよう。ゆっくりで大丈夫。慎重に進もう」


「わかったわ、ジャック」


 気持ちを奮い立たせる。


 ロッククライミングなんて初めてだけど、体育の授業では色々経験した。


 できることもあったし、できないこともあったけど、なんだかんだ、体験したことを思い出す。


 それでもスピカが足を踏み外しそうになると、ジャックが支えた。


 スピカは歌を歌う。


 進む勇気が消えないように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る