盲音の彼方

湯奈

0.始まり

少年は耳が聞こえない。


目に映るすべてが興味深い。


目の前にいるこの男女は何を喋っている?


パクパクと開いたり閉じたり。


何もわからない。


あちこちに温かい粒が浮いている。


これは何?


わからない。


何もわからないことが面白い。


少年は生まれたとき大声で泣きながら、同じくらい大声で笑っていた。


それが少年の最初の記憶で始まり。





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