第33話


一人先にステータスの調整を終えた恵奈は、生活魔法で湯を沸かす。ダンジョン攻略での疲れを癒す為に紅茶が飲みたくなったからだ。


「———もういい、全部取る!」


お湯を注いだカップからセロイン茶葉の女王と名高いディンブラ茶葉の、華やかな香りが漂い始めた頃。琴音の考えが纏まったらしい。


「決まったんだね、はいどうぞ」

「ありがと」


一服。


香りを味わい、心地の良い渋みを楽しむのは至福の一時。


美味しい!


「それで、全部取るって言ったけど合計何属性になるの?」

「火、水、土、風、光、闇、無の7属性だね」


恵奈と違って純粋な魔法職だからか、取得できる属性魔法の数が多い。可能ではないようだが他にも、重力や空間といった魔法も存在しそうだが分類が違いそうなので、恐らく上記に挙げた7属性で全ての属性が揃うのではかいだろうか。


仮に全ての属性だったとしたら、スキルは普通にバラバラなのか、それとも一纏めに”全属性”に変化するのか。


とても気になるところだ。


「取得してみるよ!」


【火属性魔法】レベル:1

【水属性魔法】レベル:1

【土属性魔法】レベル:1

【風属性魔法】レベル:1

【光属性魔法】レベル:1

【闇属性魔法】レベル:1

【無属性魔法】レベル:1


の七種類を取得。


ピコンっ♪

『7属性全ての属性スキルの取得が確認されました。スキルを統合します』

『スキル【全属性魔法適性】を取得しました』


—————————————————————————————

スキル【全属性魔法適性】

 ・火、水、土、風、光、闇、無の全ての属性を兼ね備える。

—————————————————————————————


『人類初のスキル統合が確認されました。特別報酬が与えられます』

『スキル【複合魔法】を取得しました』


—————————————————————————————

スキル【複合魔法】

 ・異なる属性同士の魔法を混ぜ合わせて発動できる。

 ・発動までの間、相応の制御技術が求められる。

—————————————————————————————


「【全属性魔法適性】に変化したよ!あと、【複合魔法】ってもの取得したみたい」

「良かったじゃん!」


初期投資にスキルポイントを14消費するのは大きい出費だが、全ての属性を適材適所に運用する事が出来る様になれば、ポイント分以上の価値を発揮する事ができるだろう。


更に詳しく調べてみると、驚く事実が発覚した。


「この【全属性魔法適性】だけど、レベルを一つ上げれば単属性の上昇量には劣るけど相応に全属性分成長するみたいだよ!これってすごい事じゃない?」


一つ一つの属性をレベル10まで上昇させると、消費するスキルポイントは取得時を含めなければ20必要になる。


しかし、全属性魔法適性をレベル10まで上げれば、単属性の成長率よりは劣るものの全ての属性が相応に上昇する。スキルポイントで単純に考えると、単属性全てで70消費するポイントが60浮くこととなる。


スキルポイント革命だ。


更に【複合魔法】を使用するれば単属性だけではなし得ない効果で発動できる。


例えば水と火を合わせて”水蒸気爆発”が可能とする。


もちろん、二つと複合魔法を取得していればできることだが、全属性魔法適性があれば低コストでできる。更に他の属性も混ぜて扱う事ができるので、コスパ的にみれば最初に全属性魔法適性を取得しておいて損はないだろう。


「もし水蒸気爆発が起こせれば、殲滅力がすごいことになりそうだね!」


付近で爆発したら巻き込まれそうで怖いが、そこは聖結界で守ってくれるので安心である。


「だね!———まぁ直ぐには無理だけどさ」

「それはしょうがないよ。地道に頑張ってこうね?」

「うん!」



*****



休息後、攻略を再開する。


「それじゃぁ榴弾の試射やってみるよ!」


生かした一匹が咆哮を上げて息絶える。そしてダンジョンの奥から集まるは大量の蟻たち。新弾薬の実射試験にこれほど向いたモンスターもなかなかいないのではなかろうか。


結界の中から、既に装填済みのDSMR-01を構える。


一塊に纏まっている場所へと銃口を向けると、そのまま発砲した。


バシュッ


その刹那。


———ドガァァンンッ‼︎


ダンジョンが崩壊するのでは、と錯覚してしまうほどの大爆発が発生。爆心地となった塊一帯の蟻たちは一撃にして消滅してしまった。


途轍もない威力だ。


「〜ぅるさっ‼︎」


爆発音は狭いダンジョン内部を反響して、恵奈たちの耳にもダメージを与える。いつぞやのサイレンサーのくだりとそっくりな状況だった。


恵奈は至近距離での発砲音から耐性ができているが、琴音は違う。


「大軍に有効な攻撃方法だけど、これは慣れるしかないね。ごめんね琴音ちゃん煩くしちゃって・・・」

「ま、まぁそんな落ち込まないでよ。今の恵奈ちゃんみたいに琴音も慣れるからさ、ね?」


というアクシデントが発生しつつも、試射の結果は上々。


恵奈たちの耳はステータスが優秀だからか直ぐに慣れ始め、何度も爆発させて蟻たちを壊滅させた頃には痛くなくなっていた。

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