第15話

突然胸元のペンダントが光輝きミネラルは驚いていた。


「何故!? あたしのせいで光を失っていたはずのペンダントが光って……」


「そうか! もしかしたら!!」


俺はペンダントを見てあることを思いついた。


「ミラネル! そのペンダントをこの蔓の方へ近づけてくれ!!」


俺は大声でミラネルに言った。


「バルトさん。もしかしてそのペンダントって」


レティーナもおそらく気づいたようで俺達の方に寄って来ていた。


「なんだ? 何が起こるっていうんだ?」


ミラネルはまだ状況が理解できていないらしい。

それでも俺の指示通りペンダントをおそるおそる蔓の方へ向ける。

すると蔓へ近づけた途端輝きがさらに増し俺達を真っ赤な光が包み込んだ。



次に目を開けると俺達はまた森にいた。

だけどさっきとは明らかに違う。

周りの木々は緑というよりも蒼く透き通ったように色素が薄い。

地面からは青白い光が薄く身体を照らし身体は何かそよ風でも当たっているかのように服や髪がふわふわと揺れていた。

だが風のようなものが吹いているわけではない。

とても不思議な空間周りは森っぽいのに、とても神秘的で油断していると周りの景色に心が持っていかれるようなそんな気分だ。


俺が突然変わった森の風景に見とれていると隣から声がした。


「バルトさん! バルトさん!!」


俺が振り向くとそこにはレティーナが心配そうに俺を見ていた。


「おう、レティーナどうかしたのか?」


俺は間抜け面で答える。

そんな俺に少し怒るような口調でレティーナは言った。


「どうかしたのか? じゃないですよ!! ミラネルさんが持っていたペンダントを蔓に近づけたら、真っ赤な光に飲み込まれて気がついたらこんな場所にいたんですよ!!」


その言葉を聞いて俺は、ようやく思い出した。

そうだミラネルのペンダントが光ったと思ったら光に飲まれてそこから意識が遠くなって……。

俺はとっさに周りを見渡すとペンダントを持っていたミラネルの姿がないことに気づいた。


「レティーナ! ミラネルはどこに!?」


俺は慌てふためいてレティーナにいった。

レティーナは不安そうな表情で俺に言った。


「実は私が気がついた時からミラネルさんはいなかったんです。そして近くにバルトさんがいたので声をかけていたんですけど、全然反応してくれなくて何度も声をかけていたんです!」


気がついてからずっと俺に語りかけていたのか、だとすると俺が思っていた以上にここへ来て時間が経っている可能性がある。


「そうだったのか。俺もさっきまでこの場所の空気に飲まれそうになっていた」


「最初は私もです。なんだかこの場所さっきの森とまったく違っていて、あと少し遠いですがかなりの量のマナを感じるんです」


さっきまで何も感じていなかったレティーナがマナを感じるってことはこの近くにマナの木があるのか?

どちらにしろ、はぐれたミラネルを探すのが先だ。

ここへ来る前に同じ場所にいたのだから、そんなに遠くにいないはずだ。


「とりあえずレティーナ二人でミラネルを探すぞ。こんな得たいの知れない場所で魔物にでも襲われたら大変だからな」


そもそもここに魔物がいるのかわからんけど。

俺の言葉にレティーナは真剣に返事をした。


「はい! 早くミラネルさんもみつけましょう!!」


俺とレティーナは不思議な森の中を歩いていく。

さきほどいた森の中よりも静かで、風の音も草の擦れる音も聞こえてこない。

聞こえるのは俺達の足音だけ。

その足音も地面を歩いてるにしては妙に反響し俺達の耳に入ってくる。

ここに来てまだまもないがこれだけはわかる。

俺達はさっきとはまた別の意空間に飛ばされてしまったのだと。

それもさっきよりもよりやばそうな感じの。


俺が歩きながらこの場所を不気味がっているとレティーナが不意に道端でしゃがみこんだ。


「どうしたんだ? レティーナ」


俺が聞くと、レティーナは驚いたように言った。


「バルトさん見てください!! この花」


「花?」


俺がレティーナの指差す方向に目をやるとそこには黄色の光を放つ不思議な植物が生えていた。

大きさは普通の花と同じくらいだけど細い茎の先にピンポン玉くらいの電球がついているのかと思うくらいの光る球が生えている。


「レティーナこれは?」


俺が聞くとレティーナは興奮しながら答えた。


「バルトさんこれは、何百年も前に絶滅したと言われてる[蛍光花]ですよ! 本でしか見たことなかったけど、実際に生えているところを見られるなんてびっくりです」


レティーナは驚きと嬉しさでその花を楽しげに見ているが俺はそれを聞いて戦慄していた。

何百年も前に絶滅していた花が、こんなよくわからない場所に咲いているのだとしたらますますこの場所は危険な気がする。

レティーナはマナの気配を感じるといったが、それがマナの木である確証はない。

もしかしたらあの結界の主に俺達のことがバレて別の場所へ飛ばされてしまったという可能性もある。

何にせよ俺達は早くミラネルを探してここがどこなのかを知らないと。


「レティーナその花が珍しいのはわかるけど、早くミラネルを探そう! こうしている間にも彼女が危険な目にあっているかも 」


俺がレティーナを興味を花から遠ざけようとしていると遠くから見覚えのある声が聞こえてきた。


「バルト!! レティーナ!! どこにいるんだ!! いたら返事をしてくれ!!」


間違いなくミラネルの声だ。

俺達を探している。

レティーナもミラネルの声に気づいたようで立ち上がると俺にいった。


「バルトさんすみませんミラネルさんを探していたのに、あの花が気になっちゃって。さっきの声ミラネルさんですよね?」


「ああ、たしかこっちの方で声がしたな」


俺達はミラネルの声がした方へ走って向かった。


しばらく走ると通路のような細い道を抜け開けた場所が現れた。

そしてその場所の中心にミラネルが立って俺達の名を叫んでいた。

俺達は近づきミラネルに声をかける。


「ミラネル! 俺達は無事だよ」


「すみません。ミラネルさん」


ミラネルは俺達に気づき振り返ると、少し怒っているけど安心しているような感じで言った。


「二人とも聞こえてるなら返事くらいしてよ。急に二人ともいないからびっくりしたじゃない!」


ミラネルが俺達に文句を言っていると、突然地面が揺れた。


「な、なんだ!?」


俺達が揺れに驚いていると、ミラネルの足元からミシミシと地面が割れるような音が聞こえた。

さっきは気づかなかったが、よく見るとミラネルが水色の大きな石の上に乗っている。

俺の頭に嫌な予感がよぎった。

それは見事に的中する。

足元の石がブルブルと震えだしミラネルもさすがに気づいたのか急いで石から降りたその瞬間。

俺達を土煙が襲い目の前が見えなくなった。

そして大きな地響きとともに地面が縦に揺れると音が消えた。

土煙が収まってきて、目の前の景色が見えてくるとそこにはさきほど地面に埋まっていた水色の石が大きな人型の形をして俺達の前に立ち塞がっていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る